芸人がアイドルをやる意図
――「芸人さんから滲み出てくるものがある」と、秋元さんは仰っていたそうですが。
大地洋輔 それは嬉しいな。滲み出ちゃうのかわからないですけど、出ているのかな?
エハラマサヒロ 滲み出ているのは加齢臭くらいじゃないですか?(笑)
大地洋輔 それはプンプン出てますけど(笑)。
エハラマサヒロ でも何と言うか、一発目のシングルの哀愁感、歳を重ねて登り坂下り坂を経験しているからこその哀愁であったり、背中から見えてくるものが人の心を熱くするというか。狙いはバッチリですよね。
大地洋輔 本当にこのメンバーでないと出ないというか。
エハラマサヒロ フレッシュ感と真逆ですからね。
大地洋輔 我々がフレッシュ感を消しちゃったんですよね。
エハラマサヒロ ただ、この歳でやる初めてのことってほとんどないから、みんながちょっと緊張している所とか、おじさんが頑張っている部分があって、けっこう人の心を打つのかなと思うことはあります。
――それがMVでも滲み出ていると思います。
大地洋輔 そこは監督がどんどん出していってくれるんです。
――笑いは一切なしで?
大地洋輔 下手したらないくらいで。小出水さん(シャンプーハット)とケンカして最後仲直りをするという。ケンカの所は本当にお酒を飲んで、けっこうガチなケンカでしたよ。俺は初めて仕事をしたくらいの感じなのに、いきなりキレなきゃいけないんだと思って。でもバチーンと。
エハラマサヒロ ダンスのシーンなんかでも、普段は間違えても「お前、間違えんなよ(笑)」くらいの感じなんですけど、今回に関しては間違えたら「ゴメン…ホンマに…」という。喋っているときは和やかなんですけどダンスに関しては緊張感があるというか。
大地洋輔 あんな雰囲気は多分今までないよね。
エハラマサヒロ 基本的に、間違えても笑いになったらいいという人達ばかりだから。
大地洋輔 でもみんなの顔を見るといちいち笑顔なので。楽しかったですよこのMVの撮影は。夜中で大変でしたけど、みんなで一つの方向に向かっている感じがしましたね。
――先ほどエハラさんは、普段は個々でやっているので交わることはない、というニュアンスのことを仰っていましたが、こういった団体活動を経て得たものはありますか?
エハラマサヒロ 結局僕は足並みを揃えるということができなくてピン芸人やっているんです。僕はコンビを3回解散しているんです。僕に問題があるなと(笑)。団体芸が得意じゃないんでしょうね。だからみんなで何かをつくるということがお笑いの場合テンパッちゃうんですよ。みんなができる人ばかりだから。でもダンスと歌なので、どちらかというと自分のフィールドに近いから、お笑いよりは交わることができましたね(笑)。
――周りにアドバイスをしたりもした?
エハラマサヒロ 「こういう風にしたらいいんじゃないですか?」とか。
大地洋輔 動きのアドバイスもらったりしましたね。
――MVの最後にはみなさんの象徴的なものがありましたね。エアギターとか。
大地洋輔 あそこはみんなアピールで、というのがあったのでエアギターを一応やっておかなければなと。
――エアギターはやはり原点?
大地洋輔 ルーツですね(笑)。
――「泣かせてくれよ」という楽曲を初めて聴いたときの印象は?
大地洋輔 正直、ビビりましたね。
エハラマサヒロ みんな思ったでしょうね。
大地洋輔 想像していたのと全く違った。「関西弁?」って。最初はみんな面食らいましたね。
エハラマサヒロ このメンバーが選ばれたという理由がわかりましたね。
――秋元さんの中にイメージがあったのでしょうか。
大地洋輔 そうかもしれないですね。
エハラマサヒロ 昔、KinKi Kidsさんが<ほんまにたよりにしてまっせ>とか歌っているのを聴いたときに「え?」って思いましたけど、みんなの印象に残っているじゃないですか? こういうインパクトもアイドルにはあるんだと思って。
大地洋輔 聴いていく内に「めちゃめちゃいい曲じゃん」って思ってきて。
エハラマサヒロ 45人が全員「え?」って思ったんですけど、唯一一人だけ、水玉れっぷう隊のケンさんだけが「めちゃめちゃいい曲やな!」って(笑)。
大地洋輔 ケンさんの歌だよね。ケンさんはこの歌詞の通りの人生ですよ。
エハラマサヒロ しかもサビで<大阪>ってびっくりしましたよ。
大地洋輔 サラリーマンの方などに忘年会のシーズンに是非歌ってほしいなと思いますね。
エハラマサヒロ 例えばカラオケで、この曲を知らない人がいる所で歌ったらまさかアイドルの曲とは思わないだろうね。
大地洋輔 吉本坂46の曲とは思わないでしょうね。
エハラマサヒロ 吉田拓郎さんの曲だと思うんですよ。
大地洋輔 「めっちゃいい曲やな!」って(笑)。
――大阪万博も決まっていますし、この曲がもしかしたら…。
大地洋輔 大阪万博のテーマソング「泣かせてくれよ」ですか(笑)。
経験を積んで緩んだ涙腺
――ちなみに「泣かせてくれよ」と思ったときは?
大地洋輔 この歳になって涙腺がバカになっているんで何かといったら泣いてますね。芝居のお稽古をしているんですけど、お稽古中でも泣いてますね。若い子が頑張っているのを見たりとかすると。
エハラマサヒロ 人を動かすのは人の熱意だったりするんですよね。結局は。
大地洋輔 それこそ水玉れっぷう隊のケンさんと、ダンスレッスン終わって中華料理屋に行ったんですよ。そこで乾杯しながら「芸人仲間に『何やってんのあいつら?』って言われるかもしれないけど、俺達はガッチリやりましょうね!」って話をしていて2人で「スーッ…」って泣きましたね。これ、いよいよだな俺達って思いましたね(笑)。
エハラマサヒロ 若い頃はおじさんが泣いてるのを見て「何で泣くんだろうな?」って思ってましたけどマジで勝手に泣きますよね。
大地洋輔 何の話をしたとかじゃないんですよ? 「いやー頑張りましょうね!」「そやな!」って話を聞いてる内にケンさんの目頭が熱くなっていくのを見たら俺もだんだん涙が止まらなくなって。俺が泣いているのを見たらケンさんが止まらなくなって(笑)。
――それだけ辛い思いをされてきたのでしょうね。
大地洋輔 人生色々、酸いも甘いも経験してきた人が歌う歌なので響くものがあると思います。
エハラマサヒロ でも僕このメンバーの中ではフレッシュグループなんですけどね。平均年齢39歳で僕は36歳なので。
大地洋輔 でもこっち側にエハラが居てほしいんですよ。選抜メンバーで言ったら正直みんなパーフェクトな人間じゃないじゃないですか? どこか足りない人が相手を補っての形、歌詞に出てくる人もパーフェクトな人じゃないから。エハラもパーフェクトに見えてコンビをすぐ解散するから、そういう所も、この中に入ると誰かがエハラを補えるとか。他のチームはちょっとパーフェクトな集合体だったりするじゃないですか?
エハラマサヒロ 確かにそうですね。
大地洋輔 俺らは何かしら足りない人なので。
エハラマサヒロ どこかが突出し過ぎてどこかが足りなくなると。僕は生まれつき鼻につくという力を持ち合わせていまして。
一同 (笑)
エハラマサヒロ 結果、人が離れていくという。ただ、みなさん歳をとってくると丸くなってきて「お前もこっちこいよ!」って言ってくれる人が増えましたけど、若い頃はみんなファイティングポーズをとっているからどんどん孤独になっていって。結果ミュージシャンとしかつるまないという。
大地洋輔 それがまた「違う」と(笑)。
エハラマサヒロ 「あいつと喋っても有名人との自慢ばっかりしてきやがる」とかね。大地さんはその辺バランス良いですよね。色んな人と仲良いし。
大地洋輔 アイドル好きの人、ピエール中野君に「泣かせてくれよ」を聴かせて感想を聴いたら「いい歌」って言ってましたよ。言わせた部分もあるんだけど。あの人が推せばけっこう広がるかもって。
エハラマサヒロ 初めて聴いた人は全然「いいんじゃないの?」って感じですよね。
大地洋輔 俺らが勝手に「アイドルソングはこれだ」ってなり過ぎてたのかもしれないね。
エハラマサヒロ ショージ師匠が歌う曲が、もともと作ってたけどいい曲過ぎたから、山本彩さんに行ったみたいなエピソードがあって。めっちゃいい曲だからさや姉の所行ったらしいねみたいな話をしてみんな笑ってたんですけど、ショージ師匠に作った曲がさや姉に行くって何がどうなってそうなるの? みたいな。逆だとしてもショージ師匠に何を歌わそうとしていたんだろうと思うし。「どういうこと?」って思っていたんですけど。そういうのがあるんだなと。それだけ違う人でもはまるようになるんだなと。
――すごいエピソードですね。でも、こう考えると、同世代のためのアイドルグループのような気がしますね。それぞれの世代の。特に僕らには染みるという。
大地洋輔 そうだと思います。
エハラマサヒロ ぜひ、カラオケで歌ってほしいです。
(おわり)