「今」やっておきたかった、電波少女 フィールド広める意欲作
INTERVIEW

「今」やっておきたかった、電波少女 フィールド広める意欲作


記者:小池直也

撮影:

掲載:16年05月05日

読了時間:約16分

MCバトルに参加したいとは1ミリも思わない

ハシシ

ハシシ

――「idler Records」というレーベルも主宰されていたんですよね? なかには、ぼくのりりっくのぼうよみなど今活躍しているアーティストの名前もあって驚きました。

ハシシ すごい軽い気持ちでそういうのをやってみたかったっていうのと、自分が知ってる後輩とかでもっと伸びてもいいのになっていう人がいたんで、そういう人を引き連れてやっていた感じですね。「idler Records」として何か大きなことをしたいというわけではなく、後輩たちがうまく使えたらいいなと思って。例えば「俺らが囲ってるからこいつは大丈夫だろ」って思う様なリスナーもいるだろうと。同じレーベルだからこの人も聴いてみよう、となればいいなって。ヤバい奴が出てくれば自分の作品にでてもらったりとかもできるし。面白い人と面白い事ができればいいなっていうくらいの感じなんですけどね。

 インターネットなんでオタクっぽい人がいたりするんですけど、基本社会と一緒で色んな人が居るんです。どうしようも無い人もいるし、ぼくりり(ぼくのりりっくのぼうよみ)みたいな真面目な子もいるし。あとは海外に住んでいたラッパーとかも。

 ネットラップに関して言えば、最初はそういうサイトが3つくらいあって。「2ちゃんねる」だったり「アンダーグラウンドシアター」というものもあったりだとか。そこにラップを上げている人がいたんですね。時代的に音源をアップできるようになって、現場で活動しつつネットに音源を上げる素人たちも出てきました。

nicecream

nicecream

 でも、その3つくらいあったサイトから、らっぷびとがメジャーに上がったりとかで人がニコニコ動画に流れてきたんですね。厳密にはまだ残っている人もいたんですけど。最近はそのニコラップも動いていない。今だに上げる場所のひとつであったりはすると思いますけどね。ほとんどYouTubeとかSound Cloudに曲を上げたりとか。現場でずっとやってきている実力のある人もここ3、4年で結構参入してきてるので(リアルとネットの)垣根がぼやけている感じもあります。ネットの人は楽しかったですけど、固執しているわけではなかったですね。たまたまニコニコ動画を使っているっていうだけでした。

――MCバトルの人気が今物凄いですが、それについてはどう思いますか?

ハシシ 良い事だと思います。それがヒップホップの盛り上がりに繋がるんだったら、そこを間口にして徐々に認知されればいいかなと。

――バトルに参加したりは?

ハシシ 1ミリも思わないですね(笑)。

――ヒップホップ以外に影響を受けた音楽を教えてください。

ハシシ 広く浅くって感じですね。19とかゆずも聴いてたし、当時ならスネイルランプも聴いてました。中3でヒップホップを聴くようになって、もう高校の時は日本とか海外のヒップホップしか聴いていませんでしたね。でも、逆に高校を卒業してからGOING STEADYにハマったり、RADWIMPSとか神聖かまってちゃんとかも聴きました。高校生が好きそうなのは一応聴きました。最近は酸欠少女さユりを良く聴いてます。

ハシシ

ハシシ

nicecream 僕も同じように19とかゆずとかも聴いていたし、モンゴル800、B-DASHとかバンドを聴いてました。高校に入ってから、ハシシと同じクラスになってヒップホップを聴くようになって。高3の時にブレイクダンスを始めたので、ブレイクビーツとかバトルでかかる曲とかも良く聴いたり。最近はWiz Khalifaを聴いてますね。

ハシシ ずっとアーティストっぽい事をしたくて、その中でも特に音楽ってかっこいいなって憧れがあった。中学の時はギターとかも弾いたりしていたんです。多分全国的に俺らの世代はそうだと思うんですけど、バンドよりもヒップホップの方がカッコいいみたいな。いけてるグループはヒップホップ聴いてる、っていう流れだったので「やべえ、ヒップホップ聴かないと」って聴きだしました。自分でも本当に好きなのかわからないですけど、好きだと思い込んで。実際にラップをやるっていう部分に関しても、そこまで敷居が高くない様に感じたのでやってみた、というところです。

ヒップホップじゃないだろ、どう聴いても

ライブのもよう

ライブのもよう

――新作「パラノイア」についてお聞かせ下さい。

ハシシ EPで曲が少ない分、濃いものが出来たのかなと。1曲目と最後はイントロとアウトロ(編注=ヒップホップのアルバムに良くあるフォーマット)扱いですが、中の5曲はどれもシングルを切っても良いかなと思うものに仕上がりました。全曲被害妄想しながら手紙を書いている様な感じです。被害妄想と言って保険をかけて好きな事を言いましたね。自分が思っている不満だったりだとか。

 あとは、先日リード曲の「笑えるように」という曲のMVを出したんですけど、ラップもしてないし音も完全にバンドサウンドなんです。なんて言うんですかね…。「売れたいからやった」というわけじゃなくて「これができたら今後の活動が広がる」ということ。「このタイミングでやっておきたかった」いうのもあって。というのも、俺は売れる気でいるので、売れた時に動きやすい様にしたいっていうのがあるんです。そのチャレンジみたいな部分を是非聴いてほしいですね。

 まあ、主軸はヒップホップというところで色んなことをやれたらいいなっていうのはあるんです。「笑えるように」もあれはあれで電波少女なんですよ、言うならば。でもコメントとかリアクションとか見るとドヤ顔で「これはヒップホップじゃないよね」って言ってる人とかがいるんですよ。「ヒップホップじゃないだろ、どう聴いても」と思ってるんですけど(笑)。

 それこそOutKast(編注=米ヒップホップグループ)とかも全然関係ない曲やったり、ロックなものをやったりする人っていますよね。だからそういう奴がいても何もおかしくない。自分の中で好きな音楽がたくさんあるんですよ。もちろん自分がやって合う、合わないもあるので出来そうなものはチャレンジしたいですね。そっちに逃げたいわけじゃなくて、俺はそういうこともやりたい。折角好きな事をやっていて我慢するくらいだったら。

nicecream

nicecream

――そういうスタンスだと結構ああだこうだ言われやすいと思うんですけど、そういう意見を聞き流す懐の広さも?

ハシシ いや、めちゃくちゃ狭いですね。結構戦います(笑)。放送の時も高校生だろうな、って思うコメントとかと本気でケンカします。僕は自分でそういう場所を設けてるので、直接批判された時のリアクションが難しいんです。例えばツイッターとか2ちゃんねるとかで書かれてても無視できるじゃないですか。「見てないよ」で終わる話なんですけど、俺の場合はあからさまにそのコメントを見てるので。そうなった時に「ふーん、こういう人もいるんだね」って言ったところで「嘘つけ、おまえ効いてるだろ」って僕がリスナーなら考えると思うんです。それに正直ピキって来るところがあるから…そこを出してます(笑)。そうした方が面白いかなとも思うし。俺もネット住民みたいな、近い存在でいたい、っていうのもあったり。強がってる部分とか、そういうのを全部とっぱらった事ができたらと本気で思ってます。「こいつ言っちゃうんだ」みたいな。

――インターネット社会が発達した、この現代が電波少女を生んだとも言えるかもしれないですね。

ハシシ そうなのかなと思います。多分、古いタイプのヒーローにはなれなかったのかな。というか、まあ成れることもないだろうなと。こういう色々な物が受け入れられる時代だからこそ、色々なヒーローがいるからこそ、電波少女みたいな存在がいてもいいのかなあと。まあ都合が良かったですね、インターネットがあったりだとかそういう表現しやすいものあって。特に自分が思う自分の魅力って伝わりづらい、ぱっとわからないところだったりするんです。でもそこを伝える手段が今の時代は沢山あるので良かったかな。

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