中国政府は23日までに、ヒップホップ文化は低俗だとして、ラップ歌手らをテレビやラジオ番組に出演させない方針を示した、と中国メディアが伝えた。この情報は海外でも報じられ、波紋を広げている。

 中国メディアによると、先日、メディアを管理する国家新聞出版ラジオ映画テレビ総局が「入れ墨のある芸能人、ヒップホップ文化、不健全な文化は番組で扱わない」よう関係機関に求めたという。

 22日には、米メディアのTIME誌が「中国政府が、ヒップホップの文化やタトゥーの俳優たちがテレビに登場するのを禁止した」と報じた。同誌よると、中国の人気ラップ歌手であるGAIが、湖南テレビの音楽系リアリティ番組『歌手』から理由なしに急遽降板。湖南テレビの公式YouTubeアカウントからGAIが映っている動画は、予告編を除いてすべて削除されているという。

 ロシアでは、ソビエト連邦時代に、冷戦のため米国、西欧諸国で人気のあったロックンロールやヘヴィメタル、ジャズなどの音楽や、ハリウッド映画などの大衆文化は「商業的で、退廃を招く幼稚なもの」として規制されていた。

 TIME誌によると中国のSNSである、Weiboには「中国のヒップポップ歌手に生存のチャンスがなくなった! 古代に戻る様なもの」など、今回の政府の対応に対する不満の書き込みが寄せられているという。

 一方で、中国の人気ラッパーのPG Oneは彼の「クリスマスイブ」という曲が薬物文化を促進し、女性を侮辱したことで批判され、今月初めに謝罪を余儀なくされたという。

 さて、日本時間29日には米ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで『第60回グラミー賞』が開催される。最多8部門でノミネートした、米ヒップホップアーティストのJAY-Zをはじめ、6部門ノミネートのケンドリック・ラマーなど、世界最高峰の音楽賞にノミネートされ注目されているのは、ヒップホップアーティスト達だ。

 「カウンターカルチャー」という言葉がある。既存する、または主流の体制的文化に対抗する文化のことだが、R&Bも、パンクも、ヒップホップもそのようにして大衆文化となってきた歴史がある。

 70年代に米国で産声を上げたヒップホップ。80年代にカウンターカルチャーとしてファッションやアートに至るまで当時の若者に影響を与え、世界中に広まった。近年は日本でも大衆文化として一般的に受け入れられてきたようにみえる。

 今回の中国政府の対応は、その最たるものとも言えるだろう。それだけに今年は、ヒップホップがこれからどのように発展していくのか、社会的な動向も含め、ヒップホップアーティストにますます注目の集まる年となるようだ。【松尾模糊】

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