アメリカレコード協会(RIAA)が昨年発表した、2017年上半期の米音楽市場の売上によれば、前年同期と比べ17%増加したそうです。下半期も売上増が予想されています。

 「CDが売れない」と言われ、2015年まで低迷を続けていた米市場に再び活気を見せ始めたと言っても良いでしょう。その起爆剤となったのは、CDではなく、サブスクリプションサービスと言えます。既に全体売上の60パーセントを占めているそうです。これによりCDの販売枚数ではなく、楽曲の再生数がビジネス的な鍵になる時代になったと言っても過言ではありません。

 では2018年、日本でもこの様な状況が生まれるのでしょうか。サブスク元年と言われた2015年から3年。日本市場には次々とサービスが生まれ活気づいています。CDとは異なり、世界で聴かれる機会もあるサブスク。日本国内だけでなく世界で再生されれば、また新たな可能性が見えるでしょう。もちろん音楽は売るためだけに作られる物ではありませんし、創作が自由であるべきなのは当然のことです。ただ、市場が活気づけば、新たな才能や音楽の発掘、レベルの底上げにも繋がります。

 では仮に、日本の音楽がユニークさを失わず世界で聴かれるためにはどうしたら良いでしょう? それを考えるひとつの手掛かりとして、昨年、アメリカでヒップホップ/R&B楽曲の売上が、ロック楽曲の売上を過去20年で初めて上回った事は見逃せません。それもそのはずで、昨今のビルボードチャートの顔ぶれはヒップホップ/R&Bばかりでした。

 参考:若者音楽の行方、ロックやエレキギターの時代は終わったのか?

 となるとJポップもヒップホップ的な要素を意識するというのが、世界で再生されるコンテンツを生み出す1つの手段として挙げられるかもしれません。たったそれだけでも、音楽的な可能性に満ちているとするのは考え過ぎでしょうか。

 例えばMCバトルブームによって市民権を得た、日本語ラップには直接的なヒントがありそうです。また宇多田ヒカルさんの作詞作曲ににヒップホップへの意識が見られる事や、iriさんの様なブラックミュージック経由の若手日本人シンガーソングライターの出現、またはゲスの極み乙女。などライブに2、3人コーラスメンバーを加えたR&Bやゴスペルに見られる演奏編成をとるバンドが増えてきている事も、その文脈と無関係ではないかもしれません。

 この2018年、日本の音楽が世界で聴かれて市場拡大に繋がれば、それに伴って新しい音楽の地平も開かれるのではないでしょうか。期待して動向を追いかけたいと思います。【小池直也】

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