AI、IT、流行…変わる音楽、堀込高樹が語るKIRINJIの適応力
INTERVIEW

堀込高樹

AI、IT、流行…変わる音楽、堀込高樹が語るKIRINJIの適応力


記者:小池直也

撮影:

掲載:18年06月17日

読了時間:約12分

クラウド化するバンド

堀込高樹(撮影=冨田味我)

――KIRINJIがユニットからバンド体制になったのに対し、世の中はソロアーティストの台頭が目立ちます。バンドの持ち味が活きた新作を踏まえ、これについてはどう思いますか?

 バンドになったのが5年前です。その時はまだそこまで考えていなかったですね。ただ単に固定メンバーでライブを何本かやって、こなれた演奏になってから録音したいという気持ちでした。でも今はそういう気持ちとは随分違ってきています。実際ライブをやって、曲を練って、それをレコーディングに持ち込むのはなかなか物理的に難しい。時間とお金がかかるじゃないですか。だから皆やらなくなるのも、当然ですよね。今の業界の状況だと現実的ではない。

 でも考え方次第ですよね。皆でスタジオに入って、一緒に演奏して、レコーディングする事はバンドらしいとも言えますけど、今のバンドの在り方はそうでもない様な気がするんですよ。昔ながらのバンドの在り方に捕われると、もしかしたら今回のKIRINJIみたいな方法も「それはバンドじゃない」と言われるかもしれません。でも『一つの音楽に対して、複数の意思が持ち込まれる』という事がグループである事の意味だと僕は感じています。

――それが現代におけるバンドらしさなのかもしれません。

 そうですね。全ての音に僕の目が行き届いているかといえば、そうではない。メンバーの裁量に任せている部分も多いです。ドラムはスタジオで録りましたけど、ベースとかペダルスティールはそれぞれ彼らの家で、こちらからディレクションもせず録っているんです。それを送ってもらって、曲に合うかどうか僕がジャッジをしました。今では逆に一緒にスタジオに入って「こういう風にしたいんです」という僕の意見を反映してもらいながら演奏すると、むしろバンドらしくなくなる様な気がします。

 一緒にいないんだけど、色々な人の意思が介在している。自分が思っていたものと違う感じにはなりますが、「これはこれで面白いな」というものができあがるスタイルですね。それはKIRINJIだけじゃなくて、今割と「バンド」と呼ばれる人たちはそうなんじゃないでしょうか。「全員が参加しないと駄目なんだ」というバンド感とは違うバンドの在り方が一般的になっている様な気がします。

――まさにバンドのクラウド化、という様なお話です。

 会わずに制作したりするバンドもいるらしいですから。データの交換だけで曲を作る事もできますし。あとはミュージシャンがそれぞれ自律的であることが求められますね。自分で「こういう風に音楽に対してアプローチするんだ」とプランできる人。その能力がないと難しいかもしれません。

 KIRINJIは結果的にそうなりましたけど、別にそういう人をメンバーとして集めたわけではないんです。女性が2人いて、男性4人なら良いかなと並びで決めましたから(笑)。だから割と安易な選択でしたね。

(おわり)

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