KIRINJI堀込高樹、新曲「Rainy Runway」に迫る
INTERVIEW

KIRINJI

新曲「Rainy Runway」に迫る


記者:村上順一

撮影:村上順一

掲載:22年07月14日

読了時間:約7分

 KIRINJIが6月22日に、デジタルシングル「Rainy Runway」をリリースした。2020年末をもって約8年間のバンド体制を卒業し、2021年より堀込高樹のソロ・プロジェクトとなったKIRINJI。新体制初となるアルバム『crepuscular』を昨年12月にリリースし新たなKIRINJIの音楽を提示。2022年一発目に届けられた「Rainy Runway」は生楽器をフィーチャーしたナンバーで、温もりのあるダンサブルな一曲に仕上がった。インタビューでは「Rainy Runway」の制作背景に迫りながら、ボーカリストとしての意識など堀込高樹に話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】

オシャレして気分よく歩けば気持ちも上向きになる

「Rainy Runway」ジャケ写

――「Rainy Runway」はどのようなイメージが制作されたのでしょうか。

 具体的なリファレンスがあったわけではないのですが、作りながら考えていたのはメロディがキャロル・キングのようなセンチメンタルな感じがあって、アル・グリーンのようなハイ・レコードのサウンドもいいなと思いました。それに加えてシュギー・オーティスもイメージにはあって、古いソウルミュージックなんだけど、オルタナティブな要素もあり、こんな風にならないかなと思いながらレコーディングしていました。

――「Rainy Runway」はアルバム『crepuscular』制作の時からあった曲ですか。

 いえ、今年に入ってから書いた1曲です。曲はすんなりとできましたが細かいところを手直ししているうちに、2カ月くらい経ってしまって。その間にブルーノート東京でのライブやフェスがあったりして、完成までに時間がかかってしまいました。

――雨がテーマとなっていますが、6月リリースというのを意識されて?

 そうですね。あと、雨にちなんだ曲を最近書いてないなと思って。

――ファンの方から質問を募ったのですが、質問の中に雨の日を気持ちよく過ごせるコツはありますか、とあったのですが、堀込さん雨はいかがですか。

 気持ちの問題ですからね。活動的な人は雨が降ると行動が遮られるような感じで嫌だと思うのですが、家の中から雨を見ている分には全然嫌じゃないですから。なので、苦手な人は雨具に凝ってみるといいんじゃないかな? 例えば気に入った傘とかあれば使いたくなるじゃないですか。

――「堀込さんがお気に入りの傘の色は?」という質問も来てました。

 今日持ってきた傘は黒ですね。子供の時から大人が持っているこうもり傘が格好いいなと思っていました。それもあって今でも黒の傘を買ってしまいます。

――さて、「Rainy Runway」というタイトルにはどのような思いを込めていますか。「Rainy」と「Runway」の組み合わせは珍しいと思いました。

 タイトルは最後につけました。この曲は雨が降っているからといって、いつまでも出かけないのはダメだよね、ステップアウトしようよという曲です。鬱々と歩いていると、どんどん落ち込んでしまうじゃないですか。なので、オシャレして気分よく歩けば気持ちも上向きになる。ただ歩くだけではなくて、自分が物事の中心にいるんだという気持ちで歩くと、周りからも注目を集めるんじゃないかなと思って。イメージに俳優のフレッド・アステアなどミュージカル的な感じもあるかもしれないです。

――「Singin' in the Rain」みたいな感じもありますね。

 雨の日に傘やレインコートを着て歩く華やかさみたいなものをイメージしながら作りましたから。

――アルバム『crepuscular』はコロナ禍での気持ちが反映された作品でしたが、「Rainy Runway」は裏テーマとしてそういった面もあったのでしょうか。雨をコロナ禍と比喩しているといった感じもあるのでは? と思いました。

 なるほど。今回、そういったことは考えていませんでしたが、結果としてそういうムードは出ていますね。『crepuscular』の時の姿勢をまだ少し引きずっているのかもしれないです。

歌詞を反映したサウンドにしたかった

堀込高樹

――レコーディングでの新しい試みはありましたか?

 今回は割とオーソドックスなことしかやっていません。最近はベーシックを生ドラム、生ベースで録って、シンセが前面に出るようなアレンジだったのですが、今回シンセは背景的な感じにしていて、アコースティックな響きが伝わるような演奏とアレンジにしました。アル・グリーンみたいな感じでやりたいなと考えていたら昔のキリンジみたいなバランスになってしまって。

――どのようなところに気をつけてアレンジされましたか。

 演奏そのものが劇的に変わったわけではないですが、聴かせ方がより生々しい感じになっていると思います。メロウな曲ではあるけれども、グルーヴがしっかり伝わる、聴いている人の気持ちをやんわり上げたい、そして、前向きになれる歌詞なのでそれを反映したサウンドにしたかったんです。聴き終わって「ダンサブルな曲だったな」というのが、聴いた方たちに残るようにしたいなと思っていました。

――音もすごく温かくて心地良かったのですが、もしかしてアナログでレコーディングを?

 いえ、Pro Tools(デジタルオーディオワークステーション)を使ってレコーディングしています。そう感じてもらえたのはエンジニアの柏井(日向)くんの力ですね。ハイ(高音域)の成分はしっかりありつつ、パリパリさせないようにしているのですが、キックドラムの印象も大きいかもしれないです。生ドラムの柔らかい感じもあるけど、ダンサブルに響いている。音像としてスピーカーでは聴こえない帯域もしっかりケアしてくれているんだと思います。

――今作で参加されたミュージシャンの方にはどんなリクエストをされたのでしょうか。

 「Rainy Runway」は特別変わった曲ではないので、みんなソウル的なグルーヴを演奏に落とし込んでくれていると思います。そんなにリクエストは出さなかったですが、ドラムとベースのリズム隊には「あまりまったりはしないでね」とは伝えました。あと、sugarbeans君がホーンのアレンジに入ってくれて、レコーディングの人選までやってくれました。

 sugarbeans君がアルトサックスの武嶋(聡)さんにお願いして、その武嶋さんがホーンのメンバーを選んでくれました。サウンドは景気の良いパリパリしたホーンではなく、柔らかめの音でフワッとした感じで録りたいと思っていたので、その塩梅は試行錯誤しましたね。あまり弱い音だとキレイに響かないので、キレイに響く強さを維持しながら「できる限り柔らかい感じで吹いて欲しい」というリクエストをさせてもらいました。

理想のシンガー像とは?

――歌に関してはどのような意識で臨まれたのでしょうか。

 一番キーが高くなるのがサビなので、そこを気持ちよく響かせる、変に力んだり硬くならない帯域をピークに持ってきたいと考えていました。それによってヴァース(サビ以外の部分)はいつも自分が歌っているレンジよりはやや低いものになったのですが、その方が表現、ニュアンスがつけやすいなと感じたので、これからはもう少しレンジを下げてもいいのかなと思いました。どの帯域で歌えば上手く表現できるのか、というのはこの曲で見えたのかなと思っています。

――ファンの方から「ご自身のボーカルをどう捉えていますか?」という質問があったのですが、それについてはいかがですか。

 徐々に良くなっている感じはしています。いつもどうやったら説得力のある歌が録れるのかと考えながら歌っているのですが、僕の歌が事の中心にあるわけではないので、自分の歌はこうあるべきだとか、こういう歌い方はしたくない、というようなことは全くなくて曲に歌を合わせています。

 場合によってはそれが自分ではなく弓木(英梨乃)さん、Maika Loubte(※最後のeはアキュートアクセント付)さん、コトリンゴさんなど、自分が必ず歌わなくても良いというのは、KIRINJIという名前で活動する利点でもあると思っています。その中で「Rainy Runway」は自分で歌うのがいいだろうなと思いました。

――堀込さんが思う理想のシンガー像はどんな方ですか。

 ブラジルのシンガー、カエターノ・ヴェローゾが好きですね。ああいう風に歌えたらいいなと思う時があります。

――最後に堀込さんの原動力は?

 楽しいということかな? 締め切りがあって大変だなと思うことはあっても、これまで曲を作るのが辛いと思ったことはほとんどなくて楽しくやれています。なので、なんだかんだで「楽しい」と思える精神が原動力に繋がっていると思います。

(おわり)

デジタルシングル「Rainy Runway」配信リンク
https://KIRINJI.lnk.to/Rainy_Runway

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村上順一
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