KIRINJIが7月25日と26日、渋谷CLUB QUATTROで『KIRINJI TOUR 2018』をおこなった。このライブは6月にリリースされた新作アルバム『愛をあるだけ、すべて」を引っさげておこなうというもので、福岡、大阪、愛知、そして東京(2日間)の4カ所を巡った。この日は最終公演だけあって、超満員のフロアとバンドの演奏が拮抗する見応えのあるものだった。MCは少な目ながらも暑い夏に涼しげなグルーヴで観客を踊らせた、ツアーファイナルとなった26日の模様をレポートする。【取材=小池直也】

楽しい曲を中心に持ってきました

ライブのもよう(撮影=立脇 卓)

 開演前から既にフロアは沢山の人が溢れていた。そしてSEの「ペーパープレーン」が流れると会場のワクワク感が一気に高まる。ミラーボールが回り、赤と緑の照明が交互にステージの垂れ幕を照らす。そして「明日こそは/It's not over yet」のファンキーなイントロに続き、垂れ幕にはメンバーのシルエットが。それを観たオーディエンスから大きな歓声が上がったのも束の間、歌が始まると同時に幕が落ちてKIRINJIの姿が現れた。スタートからさすがの安定感を感じる演奏だ。

 2曲目はメロウなグルーヴの「非ゼロ和ゲーム」。間奏ではクラップが起こる。普段用とAuto-Tune用の2つのマイクを使って歌う堀込高樹が新鮮。対比を見せるかの様に弓木英梨乃がボーカルをとった「Mr. BOOGIEMAN」。弓木はサビの前でオーディエンスを指差すなどキュートなパフォーマンス、そして歌声を聴かせる。しかし、それを裏切る形のアグレッシブなギターソロが真に観客の心を鷲づかみにしていた。

 そして「今回は『愛をあるだけ、すべて』発売記念ツアーということで、楽しい曲を中心に持ってきました」と堀込がMC。久しぶりの出演となる渋谷CLUB QUATTROの30周年についても賛辞を贈り、自身とこの会場の思い出を語った。

 続いては「Diamonds」。RHYMESTERに提供した曲のセルフカバーだ。ずしっとした低音に、ドリーミーなメロディ。オリジナルとは違うアレンジで聴かせる。千ヶ崎学のポエトリーリーディングも。テンポ早めの「LEMONADE」ではサビでのとろける様なハーモニー。その裏でうねるベースに心踊る。その後もKIRINJIは「fake it」、「雲呑ガール」、「悪夢を見るチーズ」、「この部屋に住む人へ」と繋げた。色とりどりのサウンドやリズムで観客を楽しませ、踊らせる。

 ここでメンバー紹介。メンバーの軽妙なやりとりに観客が大喜びだった。なお今回のツアーファイナルは、ギター&ボーカルの堀込、ドラムスの楠均、ベースの千ヶ崎学、ペダルスティール&スティールパンの田村玄一、ギター&ボーカルの弓木英梨乃のメンバー5名に加え、パーカッションの矢野博康と、キーボードのKan Sanoを入れた7人編成での演奏となっている。初めてのサポート参加となったKan Sanoは「わずか5本の短いツアーでしたが、めっちゃ幸せでした」と感慨深い様子だ。弓木は「私は特にもう言う事はありません。あんまり長くなると…(笑)」と控えめだったが、最終的に堀込が「今日はみんな無駄話が多すぎる(笑)」とメンバーにツッコミを入れて観客を笑わせた。

ライブのもよう(撮影=立脇 卓)

 そして「ちょっと古い曲をやりますね」と前置きして「タンデム・ラナウェイ」。シンセとエレピの音が涼しげに響く。メリハリのある堀込の歌。再び新作から演奏された「新緑の巨人」は緑の照明にぼんやり照らされた堀込が朗々と歌い始める。サビからバンドが合流してギアがあがり、アウトロは堀込のギターソロ。青と緑の照明に吸い込まれる様にエンディング。

 照明がカラフルに変わる。印象的なイントロから「時間がない」。ライブでは生バンド感が強調されて音源とは違ったニュアンスになって面白い。そして3拍子系の「僕の心のありったけ」を挟んで「嫉妬」に接続。弓木と堀込のギターが絡み合うイントロから。徐々に楽器が抜けてからのブレイクもクールだった。最後は楽器陣だけでテンションを上げてフィニッシュ。

 「The Great Journey」では、オリジナルでRHYMESTERがラップしていたバースを田村が担当するサプライズ。さらになんと弓木とマイクリレーしていく展開にウキウキ。パワフルなバンプの部分ではフロアが波打った。さらに少しテンポを上げた4つ打ちの「AIの逃避行」へ。弓木のラップ、堀込のAuto-Tuneが炸裂。後半、1度エンディングしたかの様にみせたフェイントから演奏再開して、シンセソロで畳み掛けた。

 そして「次で最後の曲です」と告げ「After the Party」で締め。堀込のレイドバックしたギターによるメロウなイントロに導かれ、ギターを置いた弓木がハンドマイクで歌う。演奏する堀込を座り込んだ弓木が上目づかいで見る、色っぽい場面もあった。演奏終了後、大きな拍手に見送られながらメンバーが退場する。

 アンコールは「まぶしがりや」からスタート。堀込が持ち替えたガットギター、スティールパンやキーボード、全ての音色がクールでエアコンの様に涼しく響いていた。そのままの流れで「silver girl」。堀込がAuto-Tune側のマイクで歌う。コーラスとの掛け合いが気持ちいい。ゆらゆら漂う様なサウンドにメロディが溶けていく。だんだんと熱量を上げていき、最後は冷静にゴール。

 最後に堀込が改めてメンバー紹介をしてから「これからも宜しくお願いします」と観客に伝え、メンバーはステージを後にした。MC少な目の構成で涼し気なグルーヴに身を委ねた幸せな夜はこうして幕を閉じた。

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