突き進む上で見えない努力を結集、Bentham 大海原で目指す音楽
INTERVIEW

突き進む上で見えない努力を結集、Bentham 大海原で目指す音楽


記者:長澤智典

撮影:

掲載:18年04月04日

読了時間:約9分

 4人組ロックバンドのBenthamが4月4日に、メジャー1st EP『Bulbous Bow(バルバス・バウ)』を発売する。EPには連続ドラマ『こんなところに運命の人』(CBCテレビ)の主題歌「FATEMOTION」も収録。タイトルの「Bulbous Bow」は、「船の造波抵抗を打ち消すために、喫水線下の船首に設けた球状の突起」のことを指す。船をしっかり推進していく上では大切となるその部位の名を冠したのは、今作が「バンドが突き進む上での見えない努力」を結集した次へと繋がる作品となったからだと話す。「Benthamとはこういうバンドだ」というのがとてもわかりやすく伝わるという、今作について、そしてこれからバンドが突き進む大海原で彼らが目指すものについて語ってもらった。【取材=長澤智典/撮影=冨田味我】

「やっぱりわかって欲しい」と思っている

――まずは、作品を作るに当たっての狙いから教えてください。

小関竜矢

小関竜矢 今回はEPというボリューム数だったので、僕らの得意な球を投げつつも、その中にどれくらい曲げたり落したりと球に変化を与えられるか、そこを考えて収録曲を選びました。全体的には、どれもがリード曲でありキラーチューンとなる、Benthamの得意球(曲)を投げて勝負を挑んだ作品になります。

須田原生 これまでも、そうでしたが、特に1stアルバム『Re:Wonder』では、いろんな振り幅を持った球を投げましたが、今回の作品に関しては、あえて振り幅を抑えた形で作りました。

――それは、曲数の面であまりにも枠を広げすぎると収集がつかなくという理由から?

須田原生 それはありました。今回は5曲収録という形で、どれもストライクゾーンを狙おうと。リード曲の「FATEMOTION」は、これまでのBenthamらしさにプラスアルファな魅力を感じられる楽曲になったと思います。

――仰られるように、どれもリード曲に相応しい、胸のストライクゾーンを射抜く楽曲ばかりが並んでいます。歌詞に関しては、一瞬ふと考え込んでしまう内容もあるように思います。そこは意外と変化球で攻めていませんか?

小関竜矢 今回の歌詞に関しては、青くなり過ぎず、でも、どこか青臭かったり、聴いた瞬間に昔の自分に戻れる感じだったりなど、そういう面を心がけて書きました。これはBenthamの持ち味や魅力でもあることですが、僕は「伝わりやすい言葉と、わかる人にはわかる表現」を織りまぜながら作ることを好んでいます。

 だから、言われたこともわかるんです。その上で今回は、誰が聞いても「これは、恋愛の歌だ」「これはバンドのことを歌ってる」と伝わる歌詞の表現をより心がけて、今まで以上に伝わりやすい歌詞にしていきました。

――確かに、全部の歌詞を理解するよりは、その中から強烈に響いてくる一節や言葉にぐっと引き寄せられます。

小関竜矢 それがBenthamの魅力ではありますが、「何を言いたいのかわからない」という言葉を受け止めることも少なからずあるんですよ。以前の自分たちは「わかんなきゃわかんないでいいよ」と思っていたけど、バンドを取り巻く環境が大きく変わるにつれ、自分たち自身の意識もより広い視野を見据え出して。

 その頃からなんです、「僕が思い感じていることや伝えたい気持ちをもう少しわかりやすく伝えたほうがいいのかな」と思い始めたのは。それを形として提示し始めたのが、この『Bulbous Bow』という作品になります。

――あえてわかりにくいという表現を使ってきて、そのわかりにくさを示してでも、バンドを支持する人たちは数多くいると思います。そのまま突き進んでも構わないという選択肢も選べたわけですよね。

小関竜矢 今のシーンの状況をBenthamなりに捉えたときに感じていたのが、「シーンの早い流れの中でついていけずに消えてしまう人たちも実際にいる。もしかしたら僕らもそうなってしまうかも知れない。いやいやいや、Benthamに限ってそんなことはない」、そういう前向きな視点を持った上での気持ちの揺れでした。

 その感情を、わかる人にだけではなく、もっといろんな人たちに伝えたいと思って。だから、いつもよりも少しだけ表現の仕方を変えたというのが、今回の作品の歌詞面においてのことなんです。

――どの楽曲にも、現状を乗り越えていく強い意志を示しているというのもその気持ちの現れ?

小関竜矢 そう。その意志を「わからないなら、わからないでいい」じゃなく、「こんな恰好いい曲を演ってるんだから、やっぱりわかって欲しい」と思っている自分たちがいて。Benthamは今、有り難いことにライブハウスをパンパンに出来るライブバンドという評価を頂いているし、いろんなフェスでも大きな支持を得ていると思います。

 だから、もっともっとその支持を広げるためにも、初めて触れた人にもしっかり伝わってゆく歌詞が大切だと思った。それで、今回の手法を取ったわけだし。今の自分たちの意志がしっかり伝わったら、そこは嬉しく思います。

この記事の写真

記事タグ 

コメントを書く(ユーザー登録不要)

関連する記事