4人組ロックバンドのBenthamが10月21日に、東京・赤坂BLITZで全国ツアー『Re:Wonder TOUR 2017』のファイナル公演を開催した。7月26日に1stフルアルバム『Re:Wonder』をリリース。このアルバムをひっさげ全国17カ所を回った。『Re:Wonder』についてメンバーは「Benthamが今後どうしていきたいか、どこにいきたいかがわかるアルバム」と語っていたが、ライブ自体も今後の可能性を示唆するストーリーが描かれた内容になっていた。最終公演の模様を以下にレポートする。【取材=桂泉晴名】

コール&レスポンスで会場と一体化

会場の様子

 オーディエンスがクラップしてメンバーの登場を待ちかねていると、ステージに現れる4人。鈴木敬(Dr、Cho)が手を上げドラムがスタートし、小関竜矢(Vo、Gt)、須田原生(Gt、Cho)、辻怜次(Ba)はフロアに背を向けドラムを囲んで演奏が始まる。それからオーディエンスの方に向き直り、「楽しんでいこうぜ!」と小関が叫ぶと<届け 走れ 届け>と感情を爆発させる1曲目の「サテライト」に突入した。続く「手の鳴る方へ」では、小関と須田が向かい合ってプレイ。小関はオーディエンスにクラップを呼びかけて煽る。

 「Re:Wonderツアーへようこそ! 17本目ツアーファイナルになります。東京ただいま!」と挨拶。小関は「曲、いっぱいやるんで、普通にやっていたら時間がなくなっちまうな。『タイムオーバー』」とさらっと次の曲を紹介し、すぐに<ダラダラとろけている ぐるぐると落ちている>と歌う。途中<ワン ツー スリー フォー ファイッ>という詞のところでは、須田がフロアに向かって指で数字の合図を送る。

 ライブ前半はアッパーなナンバーをそろえてオーディエンスとのコミュニケーションが中心となる構成にしていて、テンポよく次々に曲が繰り出される。揺れ動く感情を軽快に表現した「センチメンタル」の間奏では「皆さん、手は上がっていますか? せーの!」と呼びかける。それに対し「ハイッ!」と応えるオーディエンス。「もっと手をビシッと! 大きな声で! せーの!」「ハイッ」というやりとりを観客と繰り返す。

 そんな中、1人「ハイッ!」と返事をするタイミングをずらす須田に対し、小関から「おい!」と強烈なツッコミが入った。そして小関は「HEYー!」と叫び、「次の曲はハイ! じゃなくて『HEY!!』です。赤坂、声出せますか?!」と叫ぶ。須田は「HEY!!」の間奏でもコール&レスポンスしようと提案し、「せっかく赤坂だから、みんなには赤坂だけを言ってもらおうと思っているんです。僕が何を言っても“あかさか”って言ってほしい」と言い、メンバーも巻き込んだ「赤坂」のレスポンスは成功。さらにメンバーの名前を全員覚えていってもらおうと、「オゼ、須田、辻に敬でBentham!」と会場全体でリズミカルな掛け声を起こさせて、「ありがとう! もう名前覚えたな」と再び「HEY!!」に戻っていき、会場との一体感を作り上げながら駆け抜けていった。

圧倒的な演奏に飲み込まれていく

小関竜矢

 ライブ中盤ではBenthamとして初めて鍵盤を入れた「夜明けの歌」を披露。須田のピアノと小関のハイトーンボイスが2つの糸のように絡み合う。照明が消されて真っ暗になったステージでは須田にスポットライトが当たり、優しい日の光を思い起こさせる「Sunny」を披露。アルバムの中でも浮遊感があって、とくに異色な曲である。

 流麗な須田のピアノの音と小関のボーカルがメインとなっているが、それを支えるベース、ドラムの対比も聴きどころだろう。アルバムインタビューでこの曲について辻は「鍵盤は一つで成り立つ楽器だと思うんです。たとえば鍵盤があまり下にいきすぎても、ベースとぶつかってしまう。だからお互いの存在意義をしっかり出せるようにしたかった。ピアノがちゃんと上にいて下にベースがいて、とか。それをしっかり出るような音のチョイスはしました。あと鍵盤の音はきれいに響いてくれるので、ベースを逆にひずませてちょっとざらっとさせた音にしてみるとか。そういうのがマッチしたので、音にこだわりを持ってやれましたね」と語っていた。

 実際の演奏を目の当たりにすると、その計算が絶妙な効果を発揮していることがわかる。さらに細かく入るドラムが、曲をよりドラマティックに仕上げているのがわかった。

 「Sunny」のアウトロを引き継いで、鈴木のドラムソロへと突入。途中で辻のベースが入り呼応する。最後は須田と小関のギターも加わって3人がドラム取り囲み、激しい演奏を繰り広げてフィニッシュ。ぶつかりあいながらも高みを目指す演奏が聴けるのは、Benthamのライブの醍醐味だろう。

 「みんなのギターの大好きな『White』という曲を」と紹介されたのは、アニメ『潔癖男子!青山くん』のオープニングテーマ曲の「White」。鈴木が原作漫画で共感した「仲間」というポイントと、バンドに対する自分自身の気持ちをリンクさせながら歌詞を書いたというナンバーだ。須田のギターのイントロが始まると、自然に気持ちが高まる。後半は演奏で展開するというライブならではの演出を見せてくれて、その圧倒的なパフォーマンスにオーディエンスも飲み込まれていく。

 「BLITZまだまだいけるか! かかってこい!」とフロアを煽り、「クレイジーガール」や「Chicago」と疾走感のある曲をプレイ。そして本編は彼らの代表曲であり「何かを振り向かせたいと強く思う」ナンバー「パブリック」で締めた。

「どんなふうに前に進んでいくか、見ていてほしい」

須田原生

 アンコールの声に応えてメンバーが再びステージに登場。小関はメジャーデビューアルバムについて「これから俺らがどうしていきたいか。どこにいきたいかというのが、明確にわかる1枚になった」と振り返る。「次は2018。俺らがどういうふうに前に進んでいくかってこと、どういうふうな気持ちを伝えていくかっていうのを、しっかりと見ていてほしいな、と思います」。メジャーデビュー曲の「激しい雨」を演奏する前に、小関がメンバー紹介をおこなう。

 「ベース、辻怜次! いつもいろいろ声がでかくてちょっとうるさいところあるけど、コイツがいないと静かでダメ。コイツのベースがないと、静かでダメ。コイツのベースじゃないとダメ」。「ドラム、鈴木敬! 敬と出会う前に、初めてスタジオで会ったときに、『今までお前、何して来たんだよ』って本気で言われた。そこから俺もうまくなりたいな、と思ったんだよ」。「ギター須田原生! もうずっとずっと一緒にいるけれど、まだまだまだずっとおもしろい。コイツといると、飽きないから。だから嫌なことも、全部忘れられるんだよ」とほとばしる思いのまま、メンバーの魅力を語った。「この4人がBenthamです。本当に今日はありがとう!」。

 最後にアルバムラスト曲の王道のラブソング「クラクション・ラヴ」。辻と鈴木は楽器を置いてコーラスで加わり、須田のみギターを演奏する。小関は頭をかきむしり思いを絞り出しながら歌い、その姿にオーディエンスもじっとステージを見つめていた。にぎやかに締めくくるのではなく、静まり返った会場で何も飾らず、自分たちをさらけ出すようなパフォーマンスで潔くピリオドを打ってみせたBentham。ライブにおける表現を幅広く模索し、それを実現化している彼らは、今後さらに大きく飛躍していくだろう。

セットリスト

1.サテライト
2.手の鳴る方へ
3.Heartbreaker
4.タイムオーバー
5.センチメンタル
6.HEY!!
7.ファンファーレ
8.戸惑いは週末の朝に
9.夜明けの歌
10.Sunny
11.透明シミュレーション
12.White
13.クレイジーガール
14.Chicago
15.パブリック

ENCORE

EN1. 僕から君へ
EN2. 激しい雨
EN3.クラクション・ラヴ

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