Bentham「大事な1年になる」過去最高の自信作 踊らせる音楽へのこだわり
INTERVIEW

Bentham「大事な1年になる」過去最高の自信作 踊らせる音楽へのこだわり


記者:桂泉晴名

撮影:

掲載:19年02月25日

読了時間:約15分

 4人組ロックバンドBenthamが2月27日、メジャー2ndアルバム『MYNE』をリリース。メンバー全員がターニングポイントとなった自信作と語る。2010年結成。2014年春のKEYTALKツアーのゲストアクトに抜擢され注目を集め、同年10月に「Public EP」でデビュー。以降インディーズで3枚のEPリリースを経て、2017年4月「激しい雨/ファンファーレ」でメジャーデビュー。今作のリード曲「cymbidium」は、激しいイメージが強かったBenthamが持つもう一面、じんわりと伝わる温かさを浮かび上がらせるナンバー。もちろん、アルバムの中には疾走感あふれる曲も健在。メンバーも口を揃えて「今までを超えて、一番の作品」と話す今作にについて、今年の目標について話を聞いた。【取材=桂泉晴名/撮影=村上順一】

「cymbidium」は今、Benthamに一番必要な曲

――ニューアルバムを制作するにあたって、まずどんな作品にしたいと考えられましたか?

小関竜矢 フルアルバムなので、楽曲の幅を広げるところは意識しました。今まではBenthamのことだったり作品のコンセプトに対して、わりと気を遣ってというか、“こういう曲があった方がいいんだろうな”みたいな感じで作ることが多かったんです。でも今回は本当に自分たちがやりたいことだけで作らせてもらいました。

小関竜矢

須田原生 各自、わいてきたアイデアを「とりあえず、出そう」みたいな感じでしたね。たとえば曲出しする前に解説を入れるとき、「これ、ちょっとやり過ぎているかもしれないんですけど、聴いてみてください」と保険かけるくらいで(笑)。曲数も結構ありましたし、「これは選ぶのが困るね」というくらい、曲数も曲の振り幅も出たので。やっぱり選ぶのはすごく大変でした。

小関竜矢 リード曲をどうするかということを、一番話し合いました。それを軸に広げていった感じです。今までアッパーな曲をメインでやっていて、ライブのイメージもそういった感じが強かった。僕らが“こう聴かせたい、こう見せたい”という想いがあっても、パブリックイメージはこう、といったものがあった気がするんです。それが今作で解けたらいいな、と。解く手段として「cymbidium」が今、Benthamに一番必要な曲だという結論に達して。Benthamファンの人たちが他の人に“Benthamってこういうバンドだよ”ということを伝える時に、今までだったら「パブリック」という曲を教えることが多かったと思うんですけど、「cymbidium」をきっかけに「こういういい曲を作るバンドがいるよ」といった形でも広がるな、とイメージして「cymbidium」をリードにしました。

 その他にも、今まで通りかっこいい曲もあるよということで、めちゃめちゃBenthamっぽい曲も入れていますし。曲の選曲プラス、ターニングポイントになる一枚だろうなと思います。

――なぜシンビジウムという花を選ばれたのですか?

小関竜矢 僕、実家がお花屋さんで。

――え、そうなんですか。

他メンバー え!

小関竜矢 冗談です(笑)。

須田原生 今、歴史をさかのぼって、そんなときあったかなと思ったんですけど(笑)。

小関竜矢 ツッコんでくれるかなあと思って(笑)。僕は気合の入っている曲に、花とか植物の仮タイトルをつけることが多いんです。メンバーも“植物の名前が入っているから、気合が入っているだろうな”と感じてくれて。その中で「cymbidium」に込めた思いを説明した時に、メンバーもスタッフも「『cymbidium』、いいじゃん」みたいな感じになったんです。仮タイトルがそのままタイトルになった曲ですね。冬の曲なので冬の花を調べたんですけれど、つづり感がすごくきれいというか、不思議な感じで。読みづらさも含めていいなと思いました。「cymbidium」の花言葉は“誠実な愛”とか、種類が多くて。諸説あって、色によっても変わるそうなんです。

――温かさを感じる曲ですね。

鈴木敬 ちょっと大人しめな曲なので、力加減はすごく気を遣いながらやっていました。今までのBenthamだとドッカーン! というような曲が多くて。10曲目の「夜な夜な」はスローだけれど、どちらかというとわりと今までのノリに近いとか、エモーショナルにやるとこはやる。でも「cymbidium」はもうちょっとクッと堪えている感じで。“質感を大事にする”というのは、今までなかったトライかもしれないです。

――リード曲で1曲目だから引き込まなくてはいけないけれど、おさえた表現にする必要もあったのですね。

鈴木敬 ライブとかでも結構その辺がおもしろいというか。小関くん一人になる時はちゃんと歌が聴こえるようにしながら、行く時はみんなの背中を押せるようにしています。

辻怜次 大人っぽくしつつも、サビとかは今まで通りというか、Benthamの強みでもあった4つ打ちのビートとか、ちょっとダンサブルな部分とか入っているので。そこをいかにやりながら、というアレンジでした。レコーディングは今までむしろ出せてなかった自分たちをやっと解放できている感じもあります。ライブでもやり始めているんですけど、すごく体に馴染みやすかったというか。自分たちがある程度自然体でいられる感じにアレンジできているんじゃないかなと思います。

――2曲目の「Cry Cry Cry」からはアクセル全開といった流れになります。

小関竜矢 そうですね。曲順を決めるときも、1曲目に「cymbidium」というのが決まった段階で“2曲目はこれかな”という空気感があったので。『MYNE』という1枚のストーリーを作るときに、2曲目はこの曲だな、という感じでしたね。

――アルバム全体を見てみると、それぞれのメンバーが作った楽曲がバラけるのではなく、連続しているのも面白いなと思いました。

須田原生 これはまったく偶然ですよ(笑)。でも別に変える理由もないので。

須田原生

小関竜矢 たぶんおのおのが作る曲のキャラ感が出ているんですよね。だからアルバムにしたとき「僕はここ担当」みたいな色が強く出てるんだと思います。

――須田さんは4曲目から6曲目までの「トワイライト」「five」「ASOBI」の3曲を書かれています。楽曲を出すにあたってどんなことを大切にしましたか?

須田原生 自分から出てくるものをそのまま出したというのは変わらないんですけど、曲によっては聴いてくれる人のイメージを考えながら作っていて。例えば4曲目の「トワイライト」はどちらかというと、少し若い人たちにぐっとくるような感じの曲にしたいなと思ったんです。暗い部分もありつつ、第一印象は明るい曲、みたいな感じでイメージして作って。冒頭に<さぁ泣いて笑って越えて行け 目の前が眩しくて>という歌詞で始まりますが、眩しいというのは、見たくない眩しさと、その眩しさを追いかけるという、どっちの面もあるなと思って。そういうことが伝わったらいいな、と思って作りましたね。

――作詞は小関さんとの共作ですね。

須田原生 初めてこの方法をとりました。今までも歌いやすいように仮歌詞だけは書いて、作詞を小関にお願いするというのが基本なんですけど、“今回、二人で書いてみないか”となって。

――どうでしたか?

小関竜矢 やりづらかったです(笑)。

一同 爆笑

須田原生 まあそうだよね(笑)。

小関竜矢 面白いですけどね。すごくストレートな言葉をポンポンと並べていっているので、それにつながるようなストーリーを考えて。この曲が持っている力を最大限に出すために、わりと須田くんの世界観を壊さないで邪魔しないように作りました。一緒に書いてるから負けないようにとかではなく、補助的というか、須田の書いている歌詞と曲に対して、もっと良くなるように、というのは心がけました。

須田原生 これは3曲の中で最初に作った曲なんですよ。とにかく聴こえた時に、歌でつかみたかったというか。そういうことをしたかったんですよね。

――その一方「ASOBI」は同世代に対して頑張れというエールにもとらえられて、若い人に向けてという「トワイライト」と対照的に聴こえました。

須田原生 これはタイトル通りなんですけれど、音遊びというか、とことん変なことをしようと考えて。遊びって真剣な遊びほど面白いじゃないですか。今言っていただいたように、同じ年代で、普通に大学卒業して就職している人とかもいるし、そういう人たちの遊びになっているのは僕らみたいな職業で。今はそういうことに誇りを持っているし、その人たちがとことん遊んだらどうなるか、という感覚で作りはじめましたね。この曲は音楽的にも難しいことをしているんですけど。

――具体的にはどのあたりが?

須田原生 8分の7拍子から4分の4拍子に拍子が変わるんですけど、それが不思議だけど癖になる、という感じをすごくやりたくて。はじめは最初から最後まで遊びっぱなしで行こうかと思ったんですけど、やっぱりサビとかでフックが欲しいというか、また違う世界が欲しいなと思ってやったら、より変な方向へいって(笑)。

―-拍子が変わると、リズム隊も大変だったのでは?

須田原生 大変でした?

辻怜次 いやあ、案外。

鈴木敬 そうだね。最初聴いたときは、“やばい難しそう”と思ったんですけど、たぶんメロディがしっかりしているから。メロディを歌っていくと、案外いける。

辻怜次 確かにこれでメロディがないと、結構しんどかったかも。ここで区切りが来るんだな、区切りがくるんだな、みたいな考え方に頭を切り替えていくと、全然苦じゃないかったです。

須田原生 よかったです(笑)。

――「five」は伸びやかな気持ちのいいナンバーですね。

須田原生 洋楽っぽく、というイメージで録ったんですけど。

辻 怜次 スケールが広い感じね。

須田原生 これくらいのテンポ感の曲が僕は一番好きで。今まで聴いてきたテンポ感なので、すごく体に馴染みがいいというのもあって。でもちょっと冒険したくなってきちゃったんです。僕のリフとか歌で入るんじゃなくて、リズムのグルーヴ感というか、それをオゼ(小関)がライブとかでいきなり始めて、それが意外とエフェクティブで、「お! なんだ、これ?」と思わせる曲があったら面白いんじゃないかなと。「five」というタイトルについては、バンド活動をしてきた中で、4人だけではなく、もう1人がいて成り立つことがいっぱいあって。助けられたり、その人を助けたりしたことがあるよね、という意味も込めてつけたんです。そして5曲目でもありますし。一応そんな風にイメージして書いたことをオゼに伝えて、作詞してもらいました。

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