稲垣吾郎、舞台挨拶で見せた大人の振る舞い 闇隠して場を和ます
稲垣吾郎とともに、初日舞台挨拶に出席した主演の本田翼と山本美月
SMAPの稲垣吾郎(42)が去る8日に、自身が出演する映画『少女』(公開中)の初日舞台挨拶に出席した。SMAPの年内解散が発表されて以降、ファンの前に姿を見せるのは、メンバーのなかでも初めてだったということもあり、注目が集まっていた。この取材を終えて感じたのは、解散という暗いイメージを感じさせなかった稲垣吾郎の振る舞いと、映画のテーマにも重なる「光と闇」であった。
この作品は、湊かなえ女史の同名小説が原作で、女子高生の心の闇を扱った長編ミステリーである。しかし、それとは裏腹に舞台あいさつはとても朗らかな雰囲気で進行していたのが印象的だった。だが稲垣が「SMAP解散」という闇を抱えているのは明らかな事実。彼はそれを匂わせる様子を微塵も見せずに、その場を楽しく演出するということに努めているようだった。
それが垣間見えたひとつに、主演を務めた本田翼が稲垣への畏怖の念を口に出した時にあった。稲垣は「喋りにくいですよね、僕のオーラって。よく言われるんですけど」と自虐にまわって彼女の緊張をほぐした。後輩への配慮が感じられる場面だった。
極めつけは「最近見た、あるいは感じた闇は何か」という質問。多くの記者が「解散」を重ね、稲垣の返答に注目していた事だろう。その稲垣が口にしたのはまず、「闇ですか? 基本が闇なんですよ」という言葉だった。ドキっとさせられる。
しかし、それも束の間、続けたのは「自分の部屋の照明が暗い」という話題。そのまま、笑いのベクトルに持って行ってしまった。記者からすれば肩透かしをくらった気持ちだが、そこは彼の人柄、たちまちその話題で場が和む。
稲垣は去り際に、報道陣からの質問に「頑張ります」とだけ答えた。この撮影がおこなわれたのは昨年10月。まさか、この様な境遇に自分がいると考えられなかったであろう。公開に当たって作品と稲垣に同一性が生まれているというこの事実は興味深いものがある。
どんなに快活な人物でもある程度生きていれば心に闇が潜むものである。それを押し殺して、明るく振る舞うのが真の大人、もしくは人間なのだなということを、稲垣吾郎の振る舞いをみて改めて感じたのであった。(取材・小池直也)