選択は正しかった Hilcrhyme、結成10年で向き合ったもう1つの世界
INTERVIEW

選択は正しかった Hilcrhyme、結成10年で向き合ったもう1つの世界


記者:村上順一

撮影:

掲載:16年06月29日

読了時間:約17分

「パラレル・ワールド」で問うたあゆみ

TOC

TOC

――この「パラレル・ワールド」、平行世界というテーマはやはり結成10周年ということから派生したテーマなのでしょうか。

TOC これまで19枚のシングル、6枚のオリジナルアルバムを出してきて、そこにはいろんなシーンがあって、忘れられないことがたくさんありました。そこからまた人生は続くし、その前にも人生はあるし、2人で話していなかったらHilcrhymeはなかったし、もしHilcrhymeがなかったら自分は何をしていたんだろうとか結構考えるんですよ。“たられば”とかではなくてこういうのを考えるのが好きなんでしょうね。

――もしHilcrhymeをやっていなかったら、何をしていたかという答えは出ましたか。

TOC 全くわかんないですね。だけど、今の選択が一番正しいと思って生きています。もし、こうしていたらの“もし”は全部悪い方向にしかいっていなかっただろうなと思っていますね。

――「パラレル・ワールド」は宇宙っぽいなと感じたのですが、宇宙とかに興味はありますか。

TOC 宇宙…!?

一同 (笑)。

TOC 確かに字面だけ見たら宇宙っぽいかもしれないけど、どちらかというと人間の内面に迫るものを書くのが好きなんです。人の活力になるような。15年前から、万人に共感を得たいというのが、自分の中にあるテーマなんですよ。それはもう絶対なので「パラレル・ワールド」も誰もが考えることだと思うんですよね。10代、20代の時は今が楽しいから考えないかもしれないけど、こういうことを考え始めたのは、ある程度、歳を重ねたからなのかな。

「パラレル・ワールド」Music Video

――30歳を超えたあたりからですか。

TOC 今、僕は34歳なんですけど、34歳って自分の中ではターニングポイントですね。色々折り返し地点かなと。肌とか(笑)。確か人間の肉体的ピークが34歳とかそのあたりなんですよ。

DJ KATSU 自分は18歳が肉体のピークでしたね。

――ピークが早いですね(笑)。

DJ KATSU 僕はスノーボードが好きなんですけど、やっぱり18歳の時の無限の体力が、今はもうないんだなと実感してますね。

ASHURAだったら「春夏秋冬」はなかったかも

「パラレル・ワールド」通常盤

「パラレル・ワールド」通常盤

――お2人ともスノーボードがお好きだという情報を耳にしたのですが、Hilcrhymeというユニット名はそこからですか。

DJ KATSU Hilcrhymeという名前には色んな意味があるのですが、某ドーナツ屋で話し合ってからTOCと一緒に住み始めたんですよ。その場所が新潟市の海沿いなんですけど、丘に登った所にあるんですよ。そこからHilcrhymeという意味もあります。

TOC あの丘はキツかったね。自転車で登るのが大変だった。

DJ KATSU 1回登るとコンビニに行く気もしない(笑)。

TOC 丘の上にはコンビニがないからね(笑)。

――Hilcrhymeの他にユニット名の候補はあったのでしょうか。

TOC 言うのは恥ずかしいな(笑)。ASHURAとか。

一同 (笑)。

DJ KATSU 僕らがゲーム好きだったというのと、神様の名前にしようというのはあったね。

TOC 確かネットで検索したら、ASHURAというバンドが既にいたのでやめたんですよ。Hilcrhymeという言葉がよく2人の話の中で出ていて、Rhymeとリンクするし、丘を登るというのはポジティブだし、丘の上に住んでるわけだから、全て当てはまるというところからですね。

――もしASHURAだったら音楽性は変わってましたよね。「春夏秋冬」も生まれていなかった可能性もありますよね。

TOC 確かにASHURAで「春夏秋冬」はないかも(笑)。自分はけっこう中二病っぽい感じだったんですよ。まさに中学2年の時、怪我もしてないのに包帯を巻いて学校に行ったり(笑)。

――それは中二病ですね(笑)。KATSUさんはそういうのないですよね?

DJ KATSU そういうのはないですね(笑)。でも、めっちゃ下向いて歩いてたりしてましたね。基本、ネガティブでいるとちょっとしたことがラッキーに感じるとか、そんなくだらない理由だったと思うんですけど。でも、大人になって働くようになってからネガティブなことに良いことはないなと思うようになったんですよね。若い頃はけっこう性格は暗かったと思いますよ(笑)。

――TOCさんがKATSUさんと知り合った時は、ネガティブな感じではなかった?

TOC 全然ネガティブではなかったですよ。むしろ元祖パーティーピーポーみたいな(笑)。

――TOCさんはもとからポジティブ派?

TOC いや僕ももともとはネガティブ派でしたね。今は全然ポジティブですけど。結局僕ら2人とも根本は「パラレル・ワールド」の登場人物と同じような幼少期だったかもしれないですね。

とにかくスピードが命

DJ KATSU

DJ KATSU

――カップリングの「ソウサ」の歌詞は時事ネタ的な感じですよね。

TOC そうですね。これは旬があるので「早く出そう」という曲でしたね。本当は出来た瞬間にYouTubeにアップするというスピード感でも良かったんじゃないかなと思ったんですけど、せっかく作ったんだからCDにした方が良いかなと思ってこの形での発表になりましたね。

――最初はスピード感を重視していたのはどうしてですか。

TOC アメリカの一つの遊びとして、時事ネタを一番早くラップにしてYouTubeにアップするかというのがあるんですよ。時事ネタというよりも、リミックスムーブメントだったりアンサーソングというのがあるんです。この手のものはとにかくスピードが命なんですよね。6月にリリースだから遅くなってしまったんですけど。

――曲自体はかなり早い段階から出来ていたんですか。

TOC まさにこのニュースが流れている時に作ってましたからね。

――こういう内容の歌詞はすぐに書けてしまうものですか。

TOC これは早かったですね。あったことをそのまま書けばいいので。あとはラップとしての遊びの部分ですね。例えば「21時のドラマよりロングランワイドショー」とか、こういうのを入れるのはラップで一番楽しい部分ですね。

――この「ソウサ」も例に漏れずトラックが先ですよね?

DJ KATSU そうですね。日本的な曲の構成とかを活かそうというテーマで作っていったんですけど、こういうループ物もあったほうが面白いだろうと思って制作していきましたね。そうしたら、ジャスティンが面白がってくれたんですよ。大体音は打ち込み直したり、差し替えたりするんですけど、この曲はデモの時のブラスやホーンの音をそのまま使ったりしてますね。

――先ほど、ゲームが好きだということを仰ってましたが、「ソウサ」のオケを聴いた時、ファミコンソフトの「悪魔城ドラキュラ」みたいな雰囲気を感じたんですよ。やはりルーツにゲームミュージックの影響もあるのでしょうか。

DJ KATSU それはあるかもしれないですね。

TOC 確かにそうだよ! そんな雰囲気ある(笑)。

DJ KATSU コード感とか近しいものがありますね。半音で動いていくと不安を煽る感じになるんですよね。クラシックでもよく使う手法なんですけど、Hilcrhymeではあまりやってこなかったんですよね。「ソウサ」ではこの手法を使ってます。ゲーム音楽でも敵が出てくるシーンとかだとこういうサウンドが鳴ってるから、まさにそれですね(笑)。

TOC そのサウンドに思いっきり、USのヒップホップビートが乗ってるから面白いんだと思いますね。

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