360度円形ステージで10周年の幕開けを飾ったHilcrhyme(撮影・濱谷幸江)

360度円形ステージで10周年の幕開けを飾ったHilcrhyme(撮影・濱谷幸江)

 今年6月に結成10周年を迎えるラップユニットのHilcrhyme(ヒルクライム)が15日、東京・ディファ有明で『Hilcrhyme 10th Anniversary LIVE『PARALLEL WORLD』』をおこなった。10年前の6月9日に、出身地・新潟で結成した。10周年イヤーの幕開けを飾るスペシャル公演としておこなわれたこのライブは、自身初の360度回転式ステージで、シングル曲を多数を組み込み、ベストヒットライブとも言える選曲でファンを魅了した。更に、このライブの模様が秋に3D映画として劇場公開される他、その映画の主題歌で6月29日にリリースされる通算19枚目のシングル「パラレル・ワールド」も初披露した。この記念すべきライブの模様を以下にレポートする。

■10周年幕開けを飾るSPライブ

 ステージはホールの中央に設置され、BGMが流れる中、深海のようなディープブルーのライトがゆっくりと辺りを照らす。ステージを観客が円形に囲み、10周年を迎えるHilcrhymeの2人の登場を、今か今かと待ちわびる。ステージには世界に3台しかないという希少なDJブースと電子ピアノなどがセットされている。明かりが暗転し、天井に設置されているミラーボールが輝きだすと、フロアはイエローのペンライトで埋め尽くされた。そして、TOCとDJ KATSUが花道を通り、ゆっくりとした歩みで中央の円形ステージに登場。オープニングSEをBGMに、ステージで横並びにフロアを見つめるTOCとDJ KATSU。

 TOCの「いくぞ!」の掛け声と同時にオープニングナンバー「NOISE」へナチュラルに突入し、10周年イヤーライブの幕を開けた。めまぐるしく変化するライティングが高揚感を煽っていく。アグレッシブでアタック感のあるTOCの歌声がディファ有明に響き渡った。「全員で飛べ!」の掛け声から続けて「トラヴェルマシン」へ突入。DJ KATSUが作り出すリズミックなバックビートの上を、軽快にフロウするTOCの歌に、会場のテンションは上がり続けていく。

 MCではTOCが「初めての360度ステージです。今日は後ろとかないから、すべてが前だから」と語り、更に「熟練のファンから、今日初めて来た人まで楽しめるライブになっているので最後まで楽しんで行ってください」と今日のセットリストがファン歴に関係なく楽しめるものだと自信を覗かせた。

 その後「ルーズリーフ」を披露し、ステージがゆっくりと回転し、前後が逆転する。360度全ての方位を一つにしていくHilcrhyme。クールなラップとキャッチーなメロディーでファンを魅了していった。「自由に音を描く、自由に言葉を書く、自由に自由にこのルーズリーフにそして君は選ぶ。選んだペンは何色?」の問い掛けてから「パーソナルCOLOR」へ突入。サビではオーディエンスの大合唱が起き、その歌声にTOCは「感激だ!」と喜んだ。会場の室温がどんどん上昇していくのがわかった。

■『PARALLEL WORLD』が秋に3D映画化

 ここで再びMCを挟む。「今まさにおこなわれているライブが3D映画化することが決定しました」とファンに報告すると、会場から大歓声が沸き起こった。鳴り止まない歓声。そして「10年経っていろんな分岐点があった。あの時こっちの道に行っていれば、こっちの世界ではこうなっていたかもしれない。もし10年前の6月に俺とKATSUが話し合っていなければ、Hilcrhymeは出来ていなかったかもしれない。そういう“たられば”を良く考えるようになった。今ここにいる俺たちがリアルだし、そして、ここに観に来ている皆さんがリアル。俺たちだけじゃなく、みんなにとってもパラレルワールドは存在しているんじゃないかなと思います」。

 「360度で囲まれているこの瞬間を本当に幸せに思っています。そういう人生の面白さみたいなのを、この『PARALLEL WORLD』というものに投影しています。10年を迎えたからといって昔ばかり振り返るのは良くないし、俺は昔を振り返ることはあまりしない。でも今日は歴代に作った曲をずらっと並べました。ただ、昔の曲だけじゃつまらないよな?」と投げかけると新曲「パラレル・ワールド」を初披露した。新曲は美しく響くピアノとドラマティックなアレンジが印象的なナンバー。そこに中低域が魅力のTOCの歌声とメッセージ性のある歌詞が鎖のように紡がれていく。Hilcrhymeの今までの音楽性を更に昇華したかのような、10周年を飾る新曲にふさわしい楽曲であった。

■「no one」九州熊本へ向け歌を届ける

 続いて、DJ KATSUのピアノをバックにTOCが「このライブをするにあたって、昨日起きたことも因果を感じるよ。2011年3月11日、これは絶対に忘れられない。10年を迎えるにあたって、もう一度歌い直したいと思います」と告げ「no one」を披露。歌唱中に「西に向けて歌おう、九州・熊本に」と。14日に大地震のあった熊本を中心とする九州の方角へTOCが向き、想いを歌に乗せ「no one」を憂いを帯びた歌声で届けた。ラストはTOCのアカペラからコールアンドレスポンスのようにオーディエンスも大合唱で応えた。その全員で作り上げたと言っても過言ではない空間に大きな拍手が会場を包む。そして、その拍手の余韻の中「鼓動」へ。クワイアのコーラスが会場に響き渡る。両手でしっかりとマイクを握りメッセージを届けるTOCの姿は、ステージ上から確かな存在感を放つ。歌いながらステージを去るTOC。

 TOCが去った後、DJ KATSUの奏でる「Hilcrhyme Mash Up」へ突入。先ほどとは打って変わってクラブのような空間に切り替わり会場を盛り上げていく。「Hilcrhyme Mash Up」でヒートアップしたところへ真っ赤なライティングがステージを照らし出した。そして、美しいハープのサウンドに導かれるように、TOCがステージに再び登場し「No.109」へ。MCでは「10年前、新潟のミスタードーナツで話し合った結果、Hilcrhymeが生まれたんだよ」と話すと会場から驚嘆の声が上がった。そして、“今日から新しい1日を始めましょう”と「NEW DAY,NEW WORLD」を披露。希望にも似たまばゆい光がディファ有明を照らした。この10年間を振り返るように、新しい日々に向かって力強い歌声で聴かせるTOC。続いての「New Era」では360度ステージの特性を生かし、TOCとDJ KATSUが背中合わせで曲を展開していく。後のMCで「背中合わせはトラヴェルマシンのMVを思い出した」と照れながらも昔を振り返った。

■一つの信念、それは自分を誇るということ

 “悩める時も健やかなる時もあなたといたい”TOCの言葉からヒットソング「春夏秋冬」へ。この10年間の重みと共にディファ有明に独特な時間が流れる。ファンもその歌の重みを噛み締めながら聴き入っているようだった。そして「大丈夫」ではDJ KATSUがピアノを奏で、TOCの歌とピアノだけというシンプルなアコースティック形態で届けた。「きっと大丈夫」優しさがあふれた言葉と叙情的なメロディーが会場に降り注ぐ。曲が終わると小さくガッツポーズをするTOC。「この曲はやっぱり良いです。ファンの皆さんとの絆の曲のように俺は感じています。これでライブを締めることが多かったですけど、締めちゃって...」と語ると会場から「(ライブを締めては)ダメ〜」という声が響き渡った。

 そのオーディエンスの声を聞き「じゃあ跳ねる?飛ぶ?」と聞き返すTOC。「じゃあ飛べ!」と「ポンピラ」を披露。そこから怒涛のように「Summer Up」、「RIDERS HIGH」とアッパーチューンを立て続けに披露し、Hilcrhymeの作り出すグルーヴの波に乗り、会場のボルテージは最高潮に達していた。「Summer Up」ではトレードマークのサングラスを外し、肉眼でファンの顔を確認する姿も見られた。そして、「俺らの曲には一つの信念がある。それは自分を誇るということ。それが大前提にあります」と語ると本編ラストは「エール」。“何度でもやり直せるから”とあふれ出すように伝わってくるHilcrhymeからの希望に満ちた応援ソングで本編を終了した。

 大きな歓声と拍手が流れる中、アンコールを求める手拍子にフェードインするかのように切り替わる。10周年を迎えられた感謝をファンに告げるとインディーズデビューシングル曲「もうバイバイ」、ラストはHilcrhymeがデビュー前に無料配布していたでもアルバム『熱帯夜』に収録されている「らいおんハート・Rap」を披露し、ファンと共に作り上げた、10周年の幕開け飾る記念すべき空間『PARALLEL WORLD』の幕を閉じた。

 「Hilcrhyme 10th Anniversary」は2017年の6月9日まで続く。新曲「パラレル・ワールド」の発表と3D映画『PARALLEL WORLD』の公開と、まだまだ止まることなく“自分を誇る”ことを信念に未来へ突き進んでいくHilcrhymeは、どのような企画で10周年イヤーを楽しませてくれるのか期待したい。(取材・村上順一)

■セットリスト

「Hilcrhyme 10th Anniversary LIVE『PARALLEL WORLD』」
4月15日 ディファ有明 セットリスト

01.NOISE
02.トラヴェルマシン
03.ルーズリーフ
04.パーソナルCOLOR
05.蛍
06.パラレル・ワールド
07.no one
08.鼓動
09.Hilcrhyme Mash Up
10.No.109
11.押韻見聞録
12.続・押韻見聞録
13.NEW DAY,NEW WORLD
14.New Era
15.春夏秋冬
16.大丈夫
17.ポンピラ
18.Summer Up
19.RIDERS HIGH
20.エール

ENCORE
01.もうバイバイ
02.らいおんハート・Rap

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