ファンの質問に答えるHello Sleepwalkersのメンバー

ファンの質問に答えるHello Sleepwalkersのメンバー

 男女ツインボーカル&トリプルギターのロックバンド、Hello Sleepwalkersが去る13日、東京・青山のスタジオで、フルアルバム『Planless Perfection』(3月23日発売)の先行爆音試聴会を開催。その後におこなわれたトークイベントで、シュンタロウ(Vo&Gt)は「爆音で曲の細部や制作の過程、歌詞の意味を面と向かって共有することができて幸せだった」と語り、満足そうな表情を浮かべていた。

 イベントは、Hello Sleepwalkersと音楽誌「MUSICA」との共同企画『Hello Sleepwalkers × MUSICA“Planless Perfection”先行爆音試聴会』。23日にリリースされる約2年ぶりのフルアルバム『Planless Perfection』のリリース記念して、一般リリース日よりも10日程早く、大きな音、いわゆる爆音で試聴した。会場は、Red Bull Studios Tokyo。ニューヨーク、ロンドン、コペンハーゲン、パリなど11カ所に拠点を置く、Red Bull Studios。建物内部のデザインは世界的に著名な建築家である隈研吾氏が手掛けていることでも有名。

 「爆音試聴会」はここ数年、サカナクションの新譜やLED ZEPPLINのリマスター音源などをライブハウスで試聴する、最近、おこなわれているイベントのひとつ。日本の環境ではどうしてもスピーカーよりもヘッドフォンやイヤフォンが主流になってしまう。ましてやこのような音響がしっかりとしたところで聴く機会も滅多になく、良い音を体感できる貴重な企画だ。

 午後1時40分、続々と抽選に当たったファンたちが、まだ全貌がみえないニューアルバムのサウンドを確かめようとホールに入ってきた。BGMにアンビエント系の音楽が流れる中、期待感を胸に待ちわびるファンたち。

 そして、定刻の午後2時を少々過ぎたところで、Hello Sleepwalkersのメンバーが登場。大きな拍手で迎えられた。ナルミは「なんか合コンみたいだね」と照れる。司会の有泉MUSICA編集長に「こういう機会は今までにあった?」と質問された、シュンタロウは「全然なかった。どうなるのか楽しみです。今回のアルバムはすごくかっこいいやつが出来た。リリースより前にみんなに大きな音で聴いてもらって、言葉とか細かい音だったりを楽しんでもらえたらと思ってこの企画をやらせてもらいました」と述べ、メンバーも初体験のイベントにワクワクしているようだった。

 ナルミの「爆音試聴会始まるよ」の合図でアルバムのオープニングナンバー「レトリック」でスタート。真剣に耳を傾ける人、上半身を揺らしてリズムに乗る人、歌詞を見つめながら聴く人と様々なスタンスで『Planless Perfection』の世界観を楽しんでいるようだった。サウンドは大きなスピーカーのため低音の解像度が高く、レンジの広い音が会場に流れる。レコーディングスタジオで聴いている音までとはいかなくても、限りなく近い音で聴けたのではないだろうか。

 アルバムは昨年のツアー『Quintet Laboratory』のライブでも披露したハードで、スピーディなロックナンバー「神話崩壊」や、シュンタロウの苦悩の日々を歌い上げたメロウなナンバー「夜明け」、クラフトワークから影響されて出来たダンサブルな「Jamming」、そして、作っていて一番楽しかったかもと語っていた「2XXX」など幅広い音楽性を収録した渾身の1枚。様々な音が複雑に絡み合うが、楽器のバランスが上手く配置されている為か、ごちゃごちゃして聴きづらいということもない。そういったミキシングの妙まで堪能できたようだ。

■ファンとも交流したトークイベント

 そして、試聴会が終わりニューアルバムの詳細をメンバーが語るトークセッションへ。シュンタロウは「不思議な感じ。みんなの後ろ姿を観ながら僕らも聴いていました。歌詞を観ながら黙々と聴いている姿を観て嬉しかった」と試聴会を終えての感想を述べた。

 「2XXX」は250トラックぐらい使用し、オーディオインターフェース(編注=PCに繋いで音の入出力を行うデバイス)が火を噴いたという。それについて共同プロデューサーのコリン・ブリテンから「お前らのせいだ!と言われた(笑)」などの制作裏話も話した。

 参加者からの質問に答えるコーナーでは、メンバーがニューアルバムの中で好きな楽曲や、影響受けたアーティストなどファンが普段は聴けない質問で盛り上がった。

 興味深かったのは主に曲を作っているシュンタロウは、自身の楽曲を複雑だとは思っておらず、割とシンプルだと語ったが、ファンも含め誰も賛同しなかった。本人は作曲、レコーディングと何回も聴いていると、そんなに複雑だとは思えなくなったと話していたが全然シンプルではないと誰もが思ったことだろう。

 そんな意外な事実も語られた濃い内容のトークセッションとなった。最後にシュンタロウは「爆音で曲の細部や制作の過程、歌詞の意味を面と向かって共有できてすごく幸せでした」と語り、試聴会とトークを合わせて、合計約2時間30分のイベントは盛況の中、幕を閉じた。

 自宅でこの音量は、防音設備が整った環境でなければ困難で、ステレオ感を得るためにスピーカーの左右の距離も幅広くは取ることも難しい。完成された音を良いシステムで聴けるこの企画にファンは満足した様子だった。更に、試聴後にメンバー本人たちから解説を受けられるという贅沢な空間であった。爆音試聴会のような企画がこれからもどんどん増えて行くことを期待したい。(取材・村上順一)

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