ロックバンドHello Sleepwalkersが12月8日、アルバム『夢遊ノ果テヨリ』をリリースした。Hello Sleepwalkersはシュンタロウ(Vo&Gt) 、ナルミ (Gt&Vo) 、タソコ (Gt) 、マコト (Ba) 、ユウキ (Dr) の男女ツインボーカル、トリプルギターという類を見ない編成の5人組。2008年に結成され、2012年1月に『マジルヨル:ネムラナイワクセイ』でメジャーデビュー。2018年より活動を休止していた彼らが、デビュー10周年となる今秋に再始動。アルバムに先駆け2021年10月に「SCAPEGOAT」、11月に「20世紀少年」を先行配信し、話題となった。シュンタロウは、THE ORAL CIGARETTESの「MACHINEGUN」をプロデュースし、さらに未だ全貌が明らかにはなっていないYamato(.S) に参加するなど精力的に活動している。アルバム「夢遊ノ果テヨリ」は、テクニカルでHello Sleepwalkersらしさが詰まった、Yamato(.S) のセルフカバー曲「Fire」を含む全7曲を収録した。インタビューではシュンタロウに活動休止中の心境から、再始動への想いまで多岐に亘り、話を聞いた。【取材=村上順一】
現実逃避していた活動休止期間
――デビュー10周年おめでとうございます。活動休止からの約3年間は長かったですか。
2018年に活動を休止したんですけど、今日まであっという間でした。
――ところで、なぜ活動を休止されたんですか。
音楽活動に対して、僕の心が折れてしまいました。沼にハマっていくような感覚があったので、音楽から離れてみました。作ることもやめて、聴くこともしていなかった。現実逃避するみたいに部屋でずっとゲームをするという感じで。
――どんなゲームをやっていたんですか。
『フォートナイト』というTPSゲームです。
――だんだん音楽への熱も復活してきて?
沖縄から一緒に上京してきた友達がいるんですけど、その友人から音楽制作を頼まれたことがきっかけになりました。それが、リハビリにもなって。自分が歌う曲を書こうとすると足が止まる感じだったんですけど、人の曲を書くというのが、自分の曲を書くことよりもスラスラ書けて。そこでまたレーベルから一緒にやりませんか? と声を掛けてもらいました。
――それで、「MACHINEGUN」という曲でTHE ORAL CIGARETTESのプロデュースやYamato(.S) にも参加したり。
そうです。オーラルのプロデュースもすごく楽しかったですし、Yamato(.S) では当初歌う予定ではなかったんですけど、流れの中で歌う事になって。
――「MACHINEGUN」のリフを聴いた時に、Hello Sleepwalkersっぽいなとすごく思って。
それ、みんなに言われました(笑)。最初はオーラルっぽい感じだったんですけど、アレンジを詰めていけばいくほどHello Sleepwalkersっぽい感じになっていって。そう言ってもらえて、ちゃんと僕らしさが出せていたんだなと思えました。
――ところで、音楽活動に対してモヤモヤしていた気持ちを話せる人は当時はいたんですか。メンバーとか。
メンバーには近すぎてなかなかこの気持ちを話すのは正直難しかったです。僕が巻き込んだことに付き合ってもらっていたような感じだったので...。その中でたまたまニートの人とボイスチャットで知り合ったんですけど、その人には僕の素性は明かさないまでも、この気持ちを聞いてもらったりはしていました。顔が見えないので話しやすかったんですよ。特に答えが出るというわけではなくて、喋っているだけでしたけど、それが救いだったなと。
――お話を聞いていると解散していてもおかしくなかったのでは、と思ってしまいました。
解散を選ばなかったのは、どこかでまたやるだろうと思っていたんだと思います。僕は基本、保留人間なんですよ。僕にとってこの3年間は同じ日々の繰り返しでしたね。
――それでアルバムのタイトルも『夢遊ノ果テヨリ』で。
そうです(笑)。あとは僕らのバンド名もHello Sleepwalkersだったので、両方の意味があります。
――再始動することをファンの皆さんに伝えた時の反響はどうでした?
世の流れは一瞬だと思うので、忘れ去られているんじゃないかなと思っていた部分もあったのですが、「おかえり」と言ってくれる人、待っていてくれた人がこんなに沢山いるんだと思いました。嬉しくもあり、怖くもありという複雑な心境でもあるんですけど。
――少なからずプレッシャーもあるんですよね。「過去の色素」はそういった想いも綴られていたり?
今回収録した曲は、ほとんどがそういった気持ちが反映されていると思います。落ち込んでいた時期の曲もあるんですけど、今の気持ちに歌詞を変えたりして。
過去の自分に問い詰めたい
――久しぶりのメンバーとの音出しはどうでした?
レコーディング前にスタジオに入って、昔の曲を合わせてみたんですけど、こんなにも揃わないんだと思いました。ライブでも一番やっていた「猿は木から何処へ落ちる」もイントロで止まってしまったり。スタジオに入る前に個人で復習したんですけど、こんな難しいことしながら歌っていたんだ、と改めて感じて。なんでこんなに難しい曲を作ったんだと過去の自分に問い詰めたいですよ(笑)。しかも今回のアルバムはそういった意味でも一番ヤバいかも知れなくて。
――過去作を超える難しさで。
今、練習しているんですけど、本当にそう思いました。部屋で制作していると音を重ねていきがちで、歌もパート毎に作っていくので、通して歌うとなると無理が生じてきて。レコーディングも大変でした。
――まあ、厳しいところはナルミさんに歌ってもらうというアレンジにもできますけど、1曲目の「SCAPEGOAT」はシュンタロウさんほぼ1人で歌う部分が多くて。
もう、イントロから無茶したなと思っています(笑)。この曲はバンド活動中の落ち込んでいる時に書いた曲なんですけど、自分じゃなくても良いんじゃないか、とか感じたことを書いていて。今までの曲は最後に救いのある言葉を書いていましたが、この曲は問いかけて終わっているという。
――めちゃくちゃ重い曲で再始動しましたね...。
でも、この曲を出すこと自体がポジティブなことだと思っています。落ち込んでいた時の自分と正面衝突する、そんな感覚もあって。すごく自分自身を表現した曲になったと思います。
――だから、ほぼ1人で歌う感じになっていて。
それはちょっと違って、ナルミがその場にいなかっただけです。いつもだったら家に呼んで歌う箇所を決めていくんですけど、この曲を作っている時はそんな精神状態でもなくて...。
――そうだったんですね。でも、「20世紀少年」はツインボーカルがフィーチャーされていて。
この曲は活動休止前からライブでもやっていた曲で、デモもSoundCloudに上げていました。その時からそんなに大きくは変わっていないです。歌詞は一番最後の<孤独に慣れたらGO
>の<慣れたら>を<成れたら>に変えています。そういう気持ちにならないと今回のアルバムは歌えない曲ばかりだったなと思っていて。敢えて、“成った”と開き直りの気持ちを込めました。
――苦労した楽曲は?
「虚言症」はサビがなかなか出来なくて、何十個も考えて出来た曲です。先にサビからできた方が楽なんですけど、パーツ毎に作っていたので、本当に苦労しました。セクションが多くなればなるほどサビがどこだかわからなくなってくるし、インパクトを求められるので。
――「SCAPEGOAT」もそんな感じありますよ。サビだと思ったらその後にもっとインパクトのあるメロディが来たり。
確かにそうですね。これはどちらもサビくらいのイメージで作ってました。
――ところで「虚言症」の男性パートは全部シュンタロウさん?
そうです。
――歌い方に新しい雰囲気がありました。もしかしたらメンバーの誰かが歌っているのかなと思ったり。
本当ですか!? 特に意識はしていなかったんですけど、優しく歌ってみようと思いました。雰囲気が違って聞こえていたなら嬉しいです。
「これがHello Sleepwalkersだ」というのを感じてもらいたい
――ところで今回のアルバムはシュンタロウさんの葛藤や心情が刻まれた作品だと思うんですけど、リスナーやファンの方にどんな風に受け止めてもらえたら嬉しいですか。
確かに僕の心情を吐き出した作品になってはいるんですけど、理解してもらいたいという気持ちもある反面、全部わかって欲しいというわけでもなくて。それぞれが感じてもらったように聴いていただければ良いのかなと思います。僕は自分のことを書くことによって、今自分が考えていることがわかって、それが新たな視点になったり救いになったところもありましたから。
――ライブ『Hello Sleepwalkers Album Release Tour「夢遊ノ果テヨリ」』も来年の3月に行われますが、リハはどうですか。
今回のアルバムの中だと「SCAPEGOAT」が一番簡単で、「恋煩い」が実はすごく難しいことに気が付きました。これはけっこう僕の中でも意外で。あとは、久しぶりのライブなので、歌がちゃんと歌えるのかというのも、けっこう不安なところでもあって。当時の自分がすごく遠いところにいるような感じがまだありますから。
――シュンタロウさんは、過去のライブはどんな風に感じていたんですか。
僕らはライブをやるたびに違う感じになっていて、すごくムラがあったんです。まあそれもライブというところでは良いところでもあるんですけど、プロとしてはどうなのかな、と思ったりすることもありました。
――再始動後、初ライブへの意気込みは?
僕らもハラハラしていますけど、みんなで音を出す感覚を取り戻せるのは楽しみです。お客さんに対しては僕らのライブを観たのが3年前になるので、ライブの印象が薄れてきていると思うんです。なので、もう一つ次の段階に引っ張り込めるようなライブにしたいですね。初めて観る方には「これがHello Sleepwalkersだ!」というのを感じてもらいたいです。
――最後にどんな展望、未来を描いていますか。
言葉にするのが難しいんですけど、もっと僕らの音楽が開けているイメージがあります。今作はこれまでのHello Sleepwalkersを引き継ぎつつ、新しい一面を見せることが出来たかなと。全く新しいものを作りたいというのは毎回あって、その部分がより強くなっています。あとは、考え過ぎてしまうところがあるので、個人としては気楽にやることを覚えたいです(笑)。
(おわり)
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