Hello Sleepwalkers、「五重奏の実験室」でみせた新世界への序章

ライブのもよう(撮影・Yosuke Torii)
男女ツインボーカル5人組ロックバンドのHello Sleepwalkersが12月1日、東京・渋谷WWWでワンマンライブ『Quintet Laboratory 2016』をおこなった。約1年振りとなった『Quintet Laboratory』は、昨年からおこなわれてきた「五重奏の実験室」という意味を持つ、まさにバンドの実験要素が詰まったライブの第3弾。今回は新曲3曲に加え、「天地創造」などをアコースティックアレンジで聴かせるなど、アンコール含め全18曲を熱演。さらにVJ rokapenisとタッグを組み、複数のプロジェクターを用いてライブハウスをアバンギャルドで幻想的な空間に彩る演出など視覚面でも楽しませた。来年2月にはニューアルバムのリリースも発表した。
音とVJで魅せた新たなステージ
「五重奏の実験室」にはバンドの未来を垣間見ることができるファンには貴重なライブの一つ。その未来の一端をこの目で確認しようと多くのオーディエンスが集まった。定刻を少々過ぎたところで暗転すると、幻想的なSEが会場に流れ、VJによってエキセントリックな模様がライブハウス一面に映し出された。そして、歓声と手拍子の中メンバーがステージに登場し、イントロダクションともいうべき、ディレイの効いたスペーシーなサウンドと映像で高揚感を煽っていった。
その演奏に引き継がれるように「レトリック」で実験室はスタート。聞きなれない言葉の響きが耳に飛び込んでくるナンバーは聴くものの聴覚を刺激していく。シュンタロウ(Vo.Gt)が「始めようぜ! 渋谷!!」と声高らかに叫び、早くもキラーチューン「猿は木から何処へ落ちる」へ。序盤でこの楽曲を持ってきたところが今夜のライブの激しさを物語る。シュンタロウとナルミ(Vo.Gt)のベクトルの違う力強い歌声が、楽曲を彩る。
ここで、新曲「Rollin‘」を披露。深紅のライティングのなか、会場には文字列の映像が縦横無尽に流れる。混沌としたHello Sleepwalkersの新しい一面を魅せてくれた。サビでのナルミのファルセットが印象的であった。タソコ(Gt)の複雑なギターによるシーケンスフレーズが飛び交うなか、宇宙の映像が世界観を作った「惑星Qのランドマーク」。
続いて、テレビの砂嵐のような映像とシンセのサウンドから「水面」へとライブは展開していく。雪の結晶やドットが会場を駆け巡る。タイトル同様“水面"のような世界観をVJで作り出していった。楽曲の持つイメージをひと回りもふた回りも大きくしてくれる。
天井に備え付けられたミラーボールが回転し、「月面歩行」へ。まさにミラーボールは月のように輝き会場を照らし出す。ナルミもサビでは「一緒に歌えますか?」と投げかけシンガロングを促す。シュンタロウも感情を叩きつけるかのごとく歌い上げていく。そして、素早く点滅するライティングがテンションをさらに上げさせてくれた「Ray of Sunlight」。激しい光のダンスに目を奪われる。音と光のハーモニーを堪能させた。
ユウキ(Dr)のストーリー性のあるダイナミックなドラムソロから、変態的アグレッシブナンバーの「2XXX」へ。以前よりもドライブ感に磨きがかかったサウンドで聴かせる。オーディエンスの熱量に比例していくように会場の温度は上昇していった。
ここからガラッと雰囲気を変えアコースティックコーナーへ。温かいライティングがしばしの安らぎを与える。叙情的で壮大なスケール感を魅せた「天地創造」。MCではナルミが『Quintet Laboratory 2016』は「目も耳も心も体も楽しめるような実験的なライブにしてみました」と主旨を説明。そして、シュンタロウが「東京で初めてライブをやったライブハウスなんです」と渋谷WWWでおこなったCD購入者イベントの思い出を語る場面も。「上の段が全員関係者だった。怖かった」と当時の状況を話した。
続いて、3年前に沖縄から上京してきた時に思ったこと、積もった歌詞を形にしたという「23」を情感たっぷりに届けた。そして、アコースティックで披露するのは初となった「アキレスと亀」と代表曲の趣を変え演奏。むき出しのメロディと言葉たちが、今までのバンドサウンドとは違った新たなリアリティを醸し出していた。
新曲「新世界」を披露
後半戦はマコト作詞・作曲の「ハーメルンはどのようにして笛を吹くのか」。夜の街並みが、万華鏡のようにも見えるファンタジックな世界観へオーディエンスをトリップさせた。そして、イントロのピアノのフレーズが印象的な新曲の「日食」を披露。星が降り注ぐ映像に、月が太陽の前を横切る日食を表現。楽曲の進行とともに徐々に太陽が欠けていく。バンドが紡ぎ出す儚くも熱いサウンドと、エモーショナルなシュンタロウの歌が心に響きわたってくるようだった。
そして、シュンタロウとナルミの美しいハーモニーとドラマチックな展開で聴かせる「Perfect Planner」、<チクタク 針はチクタクと♪>という歌詞が耳に残るハードチューン「午夜の待ち合わせ」、今のHello Sleepwalkersに欠かすことは出来ない「神話崩壊」とこれでもかというほど密度の濃いナンバーによって、オーディエンスのボルテージもマックスに。
普段ならこれで終了といったところだが、ここは『Quintet Laboratory 』。ラストは9月にSoundCloud(音声ファイル共有サービス)にデモがアップされた新曲「新世界」を披露してくれた。張り裂けそうなテンション感と疾走感のあるサウンドは、新たなアンセムとなるポテンシャルを感じさせ、本編を終了した。
アンコールを求めるオーディエンスの声は、メンバーの名前を叫び続ける。「タソコ」、「マコト」、「ユウキ」、「ナルミ」と名前を順々にコール。シュンタロウは文字数が長すぎるため、「タロウ」と略される羽目に…。そんな一風変わった雰囲気の中、再びステージに登場したメンバー達。「アンコールありがとうございます! タロウ…うちの姉がそう呼ぶんだよね。今度からタロウって呼んでいいぜ!」とオーディエンスに改めて呼び名の許可を出すシュンタロウ。
ここで来年2月にニューアルバムをリリースし、ツアーをおこなうことも発表した。「メッチャカッコイイので楽しみにしていてください」と自信を覗かせた。そして、「元気余ってるか! かかってこいよ!!」とシュンタロウが煽り「円盤飛来」を演奏。ラストの<終わりか♪>の連続シャウトは鬼気迫るものを感じ、持てる力をすべてぶつけるような演奏と歌で「五重奏の実験室」を締めくくった。
新曲も3曲を投入しアコースティックコーナーと盛り沢山のライブであった。いつも以上に荒々しくワイルドな演奏は、ロックスピリッツ溢れ、それを後押しするかのように共存した映像は新たなライブの在り方を提示してくれた。全ては未来、まさに「新世界」に向かって動き出したHello Sleepwalkers。ニューアルバムに期待が高まった。(取材・村上順一)
セットリスト
『Quintet Laboratory 2016』 12月1日 東京・渋谷WWW 01.レトリック |
- ナルミ(撮影・Yosuke Torii)
- シュンタロウ(撮影・Yosuke Torii)
- ユウキ(撮影・Yosuke Torii)
- マコト(撮影・Yosuke Torii)
- タソコ(撮影・Yosuke Torii)
- ライブのもよう(撮影・Yosuke Torii)
- 記念撮影(撮影・Yosuke Torii)
- ライブのもよう(撮影・Yosuke Torii)
- ライブのもよう(撮影・Yosuke Torii)
- ライブのもよう(撮影・Yosuke Torii)
- ライブのもよう(撮影・Yosuke Torii)
- ライブのもよう(撮影・Yosuke Torii)