<話題のバンド>ロコビッチ「第二のモンパチ」目指し、沖縄から情熱音楽届ける
INTERVIEW

<話題のバンド>ロコビッチ「第二のモンパチ」目指し、沖縄から情熱音楽届ける


記者:編集部

撮影:ロコビッチ「第二のモンパチ」目指す沖縄出身バンド

掲載:14年06月24日

読了時間:約5分

ロコビッチ「第二のモンパチ」目指す沖縄出身バンド

沖縄から東京に活動拠点を移したロコビッチ。憧れはモンパチというロコゆいの沖縄なまりも魅力

<話題のバンド>
 将来、沖縄のロックシーンを担いたい―。こう夢を抱いて沖縄から上京してきたバンドがある。男女混成バンドのロコビッチだ。“ビッチ”。直訳すれば「嫌な女」など。濃いめの化粧、舌にも入れたピアス、そして中指を立てるその仕草はそのネームを印象付けさせる。だが、実際に会って話した印象は沖縄なまりが残る純粋無垢なロッカーだ。兎角、バンドの名前だけを聞いただけではその良さは分からない。バイオグラフィを読んだだけでは彼女らの気持ちは伝わってこない。「まずは1曲どうぞ」とお勧めしたくなるバンド、それがロコビッチだ。

 ロコビッチは沖縄県出身の男女混成スリーピースバンド。女性ボーカリストのマリリンモン・ロコゆい、男性ベージストのHAPPYベス男、同じく男性ドラマーの納“Andy”たつきち。皆同じ23歳。昨年まで沖縄がホームタウンだった。生活費だけでもやっとというアマチュア時代から高い飛行機代を払って東京へ行きライブを行ってきた。「事務所が付いていない沖縄バンドはみんなそうですよ」(ゆい)と謙遜するが、そのエピソードから高い本気度がうかがえる。そんな彼女らはもっと飛躍するために昨年、東京へと拠点を移した。

 バンドのカラーは青春パンク。作詞・作曲はゆいが行い、起した原曲をべス男とたつきちが肉付けして楽曲へと仕上げる。ゆいのハスキーにも似た声に、心の内に秘めた感情を爆発させながら表現し尽くすそのパワー。そしてそれを支えるHAPPYベス男、喜納“Andy”たつきちが繰り出すサウンドは洒落ている。彼らの楽曲、そしてライブは憎いほどかっこいい。中途半端な表現は受け手側に恥ずかしさを与え、強烈な表現は相手を虜にする。売れるためには振り切るかがポイントだとかつて大物ミュージシャンが某番組で言っていた。彼女らは良い意味で振り切れている。

 幼少期、青春期を沖縄で過ごしてきた。南国に流れるのどかな空気を受け、沖縄独特の琉球民謡や琉球音階を体に染み込ませてきた。宮古島出身のゆいは「小学生や中学生の時、授業で三線を学んでました。資格も持っています。ギターよりも得意かも」。沖縄本島出身のべス男は「三線の琉球音階が好きです」。沖縄の風土はしっかり血となって流れている。

 沖縄には琉球音階というものがあるという。「レ」と「ラ」の音階を省いた独特の音調のようで、民謡はこれら音階をベースに三線、平太鼓、三板などを用いて作り出されるそうだ。民謡は生活や文化に根付いており、泡盛と三線があれば踊り歌が始まるとまで言われている。特に離島においては収穫祭や豊年祭などにも用いられ、島民に密接にかかわってきた。沖縄はその伝統民謡を土台に、ポピュラー音楽、そして米国文化の影響を受けたロック音楽が加わっている。

 ただ、ロコビッチ本人たちは「あんまり沖縄っぽくないかも」(ゆい)と沖縄音楽を意識していない。あくまでも自分たちが感じたものを自分たちが表現できる手段で音にする。それがパンク系になったということだ。

 そして、このバンドのもう一つの特長はゆいの歌詞。メロディこそ激しいが1つ1つの言葉は繊細で、ゆいの心を投影しているようにもみえる。音楽に懸ける情熱がこのバンドの鍵とも言える。「ライブに来てまたは、沖縄で応援してくれる人たち。ライブに来れない人にもそばにある音楽になれば。目の前に居なくてもいつも近く居れる音楽でありたい。アンパンマンのような勇気とか希望とか伝えたい」(ゆい)。それが歌詞にも音にも反映されている。

 そしてまた、メンバー3人が口を揃えて強調するのは「ライブにも来てほしい」。CDでは上品に奏でる音楽もライブでは激しく叩き付け、オーディエンスの心を高揚させる。その一方で沖縄なまりが残るゆいのMCは親しみがあり、いつも笑いが起きている。そのギャップは中毒にもなりそうだ。CDが良くてもライブは頂けない、ライブが良くてもCDは頂けないといったアーティストはなかにはいる。彼女らの場合はCDはCDとしての魅力を放ち、ライブはライブとしての魅力を放つ。いわば二面性の良さを持っている。

 目標とするところは「第二のモンパチ」。青春期はMONGOL800やオレンジレンジ、HYの影響を受けた。「3人の好きなジャンルは違うけど、モンパチなどの音楽はどっぷりハマっていました。今でも憧れています。次は自分たちがその位置に立ちたい。沖縄ロックシーンを担いたい、という強い気持ちはあります」(ゆい)。

 そんな彼女らは25日に初の全国盤CDを発売する。沖縄での暮らし、そして東京に移ってからの生活の様子。ゆいが見たありのままの世界感がこのCDに埋め込まれている。「目に移ったものを歌にしてこれが今の自分達です、みたいな」(ゆい)、「また一つ階段を上がったような音源は出来たと思うので、それを聴いてもらいたい」(べス男)、「自信をもって出せるアルバムなので1人でも多く聞いてほしい」(たつきち)。

 今回のCDには英語詞とその和訳詞の2曲を加えた。「自分の夢が海外進出なので。私の想いを日本人だけではなく、海外の人にも伝われるように今後は取り入れていきたい」(ゆい)。

 東京に出てきて1年。ようやく全国流通が叶う彼女ら。バンドの信条たるものが今回のCDには詰まっている。「第二のモンパチになるさー」(ゆい)。今後の活躍が期待されるバンドと言える。なお、CDに懸けるメンバーばーの想いをここに紹介する。

 ゆい「東京に来て気持ち的に埋もれてしまうことがあって。自分のその時の気持ちしか曲にしていない。それは自分の悪いところでもあり、良いところでもあると思っていて。初めての全国リリースなので、良いも悪いも自分の特長じゃないですか。そこを全面に出していこうと思いました。何かを伝えたいというよりかは、目に移ったものを歌にして、これが今の自分たちですみたいな」。

 べス男「これまでも音源を作ってきたなかで、ロコビッチとして新しいことにも挑戦しています。今回の作品ではまた一つ階段を上がったような音源は出来たと思います。それを聴いて頂きたい。伝えたいことは音源にも詰めましたが、それでも伝いきれないところもある。ライブを遊びに来て欲しい。僕たちは上京してきたり、音源を作ってきたりした過程で成長しているとも思うので、そこも見て欲しい。伝えられるものを伝えていきたい」。

 たつきち「初めての全国流通になるので、手に取って聴いてくれるお客さんが全国各地に広がる喜びもあります。今までは手売りしか届けてられなかったけど、CDを聴いて試聴してこれがロコビッチなんだ、って感じてもらえたら嬉しい。自信をもって出せるアルバムなので、1人でも多くの人に聞いてほしい」。

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