楽しい事を続けていけたら――広瀬アリス、新たな引き出しを開けた「ソラノカナタ」
INTERVIEW

楽しい事を続けていけたら――広瀬アリス、新たな引き出しを開けた「ソラノカナタ」


記者:木村武雄

撮影:

掲載:18年10月11日

読了時間:約8分

新たな魅力、存在感のある歌声

 そのアリスは今回、劇中歌にも挑戦している。ソラが歌う劇中歌は、カナタの幼き頃の思い出を呼び起こす重要な鍵を握る。当の本人は「歌うことに必死で録音する日は音楽に染まろうと…」というが、ウィスパーボイスのその歌声は繊細さがあり圧倒的な存在感を放っている。レッスンからレコーディングまでを1日でおこなうタイトなスケジュールで、使われたのはOKが出た後のテイクだったという。

 「音源と歌詞を頂いて練習をしてからレコーディングに臨みました。頑張って歌うのですが、何回かリテイクを重ねて。OKが出た後に“鼻声に近く囁くような感じで歌ってほしい”と言われまして。そうして歌ったものが使われたんですよ(笑)それまでの歌い方よりも更にフワフワとした感覚。『ふ~』と気の抜けたような感じです。普通に会話しているぐらいの声量でほとんど息ぐらい。それまでは気合いを入れ過ぎていたから、リラックスして臨めたのが良かったのかもしれません。音程を合わせているつもりなのに、『半音落ちています』と言われて『半音って何?』って思って(笑)。歌詞もそうですが、とても優しい繊細な歌だと思いましたので大事に歌いました」

 心を引き寄せる、あるいは空気感を変える歌声はそう滅多にあるものではないが、彼女の歌声にはそれを感じさせるものがある。歌手活動を期待してしまうが本人は「絶対に嫌です!」ときっぱり。そもそも人前で歌うのは苦手で「人にあまり聴かれたくないですし、カラオケも一人で行きますし…(笑)」だという。そんな彼女は過去にミュージックビデオへの出演経験がある上に、兄の影響でAcid Black Cherryを聴いていた時期もあったと過去のインタビューで答えているなど、音楽の接点はある。現在は何を聴いているのだろうか。

 「実はなんでも聴くんですよ。いろんな曲を毎日聴いているので、本当に幅広いです。そのなかでも凛として時雨さんとかは好きですね。世界観がすごく素敵ですし、幻想を見ているような感じになるといいますか。歌と歌詞とミュージックビデオと。すごく好きですね」

いろんな役を演じて経験できたらいい

 活発な性格から自身を「男勝り」とも語っていた彼女。しかし、劇中歌で披露された歌声には女性らしい優しさも滲み出ている。当の本人は「私に女性っぽさはあるんですかね…(笑)」と照れを隠すように笑みを浮かべた。それでも「不思議なことに自分と凄く離れている役でも、お芝居や作品に携わることによって、気づいたら演じられていることがあります。自分のここを引き出そうというより、作品によって、役によってどう演じるべきかを思っています」という。それは本作にもあったようだ。

 「アニメのキャラクターになると特に幅が広がるので、それはあったと思います。通常の撮影でも、クランクインの何日か前におこなうリハーサルの時は私、私服ですっぴんで、ボロボロなんです(笑)なかなか感情が入らなくて…。だけど、クランクインして、撮影の日になってメイクして衣装を着るとなぜか自分がその役に染まっていて、セリフもどんどん出てくるし、感情もガンガンと溢れてくる。それが不思議だなとは思います」

 そんな彼女は来年芸能活動10年を迎える。女優としての評価もうなぎのぼり。思い描く女優像は…「ないです(笑)」とバッサリ。その理由は自身の性格にあるという。

 「ないですが、楽しい事をずっと続けていけたら良いなと思います。私の場合は、こういう風になりたいと思ってしまうと、自分の少しのミスも許せなくなるんです。例えば、昨日は食べ過ぎたから今日は何も食べないという日を作ったとして、最初はお茶ばかり飲んで頑張っているけど、なんか欲しくなってちょっと食べちゃったりすると、自分にとって大きなミスと感じてしまうんです。そこからは“もういい”“やらない”となって。そういうことにならないようにしたくて。それと、自分の引き出しといいますか、いろんな役を演じて経験できたらいいなと思っています。そうした意味で今回もすごく経験として大きなものになりました」

 ところで、劇中でソラは携帯ラジオを大切なものとして持っているが。アリスにとって大切なものとは何か。

 「ワンちゃんです! これは自分の命に代えてでも絶対に守る、と思うぐらい。私もたくさん助けてもらって。ソラにとってラジオはすごく助けになっているように、私もワンコたちがその存在です。2匹いるんですけど、癒しにもなっているので。実は私、今日ずっとソファで寝ちゃったんですけど、2匹が一晩中私のおなかの上で喧嘩していて…。『ゴアガオギャオ!』『やめて!』って(笑)。本当にかわいいんです!」

 ◇

 女優としてだけでなく、人柄も魅力的なアリス。先も記したように窪田が「歩くパワーストーン」と例えるのが、インタビューでもひしひしと伝わってきた。とにかく笑顔が絶えず、場が明るくなる。そんな彼女にもう一度聞きたくなった。

(記者)もう一度聞いていいですか? 今後歌手活動は?

「ないです(笑)」

(おわり)

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