ロックバンドのThinking Dogsが25日に、ニューシングル「Oneway Generation」を発売する。TSUBASA(Vo)、Jun(Gt)、わちゅ~(Ba)、大輝(Dr)の4人組。新作は、映画『リンキング・ラブ』の主題歌「Oneway Generation」(本田美奈子.)をはじめ、収録曲全てが80年代のカバー。自分たちが生まれる前である80年代の音楽について、TSUBASAは「凄く前面に歌があるなというイメージ」と語り、わちゅ~は「印象的なメロディを残して、他は一から作るという様な気持ちでアレンジした」と彼ららしさを出せたと言う。Junは、80年代の曲が「こういうスタイルでやりたい」という気持ちに気づかせてくれたと振り返る。また、バブル時代について大輝は「人と人がコミュニケーションをちゃんと取れているキラキラした時代」とその印象を語る。今回は彼らに名曲たち、そして80年代という過去とどの様に向き合ったのか、そして現代との違いについて話を聞いた。【取材=小池直也/撮影=冨田味我】
名曲との対峙
――新作「Oneway Generation」はカバーになりますね。
大輝 聴く方にとっては凄く懐かしく感じたり、初めて聴いて「いいな」と思って頂いたりすると思います。年代関係なく色々な人に聴いて欲しいと思います。
Jun 前回のシングル(「Are you ready?」)は、内容もアレンジもラウドというか、モダンな感じでレコーディングにも苦労しました。それを踏まえての今回でしたので、ギターのプレイもブラッシュアップされて収録出来たのでは、と思います。
TSUBASA 過去の名曲カバーという事で、「良い曲だな」と感じて貰いたいですね。僕らのフィルターを通して、楽曲の新しい一面を見つけて欲しいとも思っています。僕にとっては挑戦的なシングルになっているのかなと。
わちゅ~ インストアイベントをやる時にも、80年代のアイドルソングをカバーしていたんです。それをこうして音源化した事は凄く嬉しいですし、選んだ3曲もTSUBASAの声が凄く映えると思っています。僕たちのカラーも各曲に含まれているので、オリジナリティにも注目して頂きたいです。
――今回こういった選曲に至った経緯というのは?
TSUBASA 元々ライブでもカバーには取り組んでいたんです。ワンマンライブを作っていく上で、観てくださっているファンの方に飽きないライブを、ということをテーマにしているんですよ。その中で色々とカバーをしていたのですが、選曲をしている中で80年代曲のメロディの強さとか、キャッチーさを知って「この時代の曲ってこんなに良い曲が沢山あるんだな」と気づきました。
「Oneway Generation」は80年代の大ヒットソング(1987年発売)ですし、「待つわ」なんかもアコースティックではよく披露していていたので、今回収録しています。
わちゅ~ 「Oneway Generation」と「DESIRE-情熱-」のアレンジに関しては、重永亮介さんにお願いしたものに、僕らなりのオリジナリティを加えたものになっています。例えば「Oneway Generation」は原曲のハネたノリ(リズム)を活かしたいというのがありました。その中で、ドラムのフィルやベースの動きを考えて、元を活かしつつ、僕らが培ってきたライブ感やバンドらしさを出せればなと思いました。
Jun 「DESIRE-情熱-」は結構ギターのトラック数(重ねている音の数)も少ないんです。少なく、格好良くというのは凄く難しいところで。ただ、オリジナルは良い意味で荒々しく弾いているので、自分も荒々しくいってみようかなと(笑)。細かい所なのですが、チョーキングの幅だったりも気を付けてもいます。
TSUBASA 元々のアレンジが原曲を踏襲している様な印象でしたね。あまり余計な事をしないで、シンプルな方が格好良いなという感じもありました。
職場体験にもなったMV
――ご自身が生まれる前の音楽に、どの様な印象を持たれていますか?
TSUBASA 凄く前面に歌があるなというイメージです。どの曲も良い意味でサウンドがおまけで、歌がメインディッシュという感じ。僕はデュラン・デュラン(英バンド)とかジャパン(英バンド)とかも聴いていまして。サウンドとかも時代が1周している感じがします。
大輝 確かに楽器が主張しないので、歌を邪魔しないフレーズを考えてるのかなと思いました。スネアなどは、80年代ならではの音がやっぱりありますね。バンドなので、僕はガンガン叩いています。ちょっとフレーズ的にハードロック寄りになってしまいましたけど(笑)。ジョン・ボーナム(レッド・ツェッペリンのドラマー)っぽいアクセントをやってみたり。それはそれでThinking Dogsらしさが出たんじゃないかなと。
あと、僕は本田美奈子.さんの原曲を聴いた事がなくて。映像で見させてもらったんですけど、めちゃくちゃ可愛いです(笑)。今近くを歩いていても「めちゃくちゃ可愛い人がいる」と絶対なりますよ。
わちゅ~ 可愛さもそうですけど、やっぱり歌が凄く上手い。音源を聴いても勿論ですけど、昔の歌番組の映像を観ても、ほぼブレない。松田聖子さんや、他の80年代のアイドルさんは表現力も流石だなと思います。
Jun それにうまく演奏が寄り添っているのを聴くと、勉強になるなと感じます。
――ライブでは、他にどの様な80年代曲をカバーされていますか?
わちゅ~ 「待つわ」は前からやっていたんですけど、あとは松田聖子さんの「渚のバルコニー」(1982年)とか、杏里さんの「CAT'S EYE」(1983年)もバンドでカバーしました。あとはレベッカ さんの「フレンズ」(1985年)も。好きな曲というのもありますし、TSUBASAの声に合う曲とか、僕らの表現しやすい曲というのを皆で相談して選曲しています。
大輝 アレンジはわちゅ~が中心に考えてくれました。最初はアコースティックでインストアライブなどでやっていたんです。そこから「バンドでもやろう」という話になった感じですね。
わちゅ~ 2016年の10月にインストアライブで初披露したんです。原曲は知っていたんですけど、リアルタイムではないので正直、過去のヒット曲としてテレビで観る位の印象でした。今回は印象的なメロディを残して、他は一から作るという様な気持ちでアレンジしています。なので、僕ららしさが結構出ているのではないかと思います。
大輝 「待つわ」はインストアライブでやっても評判良いですね。通りすがりの方も、曲を知っていれば立ち止まってくれたりもしますし。
TSUBASA この曲はレコ―ディングに向けて、アレンジが変わったんですけど、その段階で結構歌うのが難しかったです。元のメロディーだったり、譜割り(節回しのリズム)がテンポを上げた事によって「こんなに難しくなっちゃった。どうしよう」みたいな(笑)。大輝もライブではハモリを担当しているのですが、それも相当難しくて。それが印象に残っています。
Jun ギターに関しては、収録されている曲の中で一番自分を出せている曲だと思うので、一番聴いて貰いたい曲かもしれません。自分の「こういうスタイルでやりたい」という気持ちに気づかせてくれた曲でもあります。
――「Oneway Generation」のMVは面白い仕上がりになっていますね。
TSUBASA 曲に沿って4人がそれぞれ職業を演じています。その中で僕はサラリーマンで、大輝が居酒屋の店員さん、わちゅ~が警備員、Junがヒモ男(笑)。僕らが演技している部分と、演奏しているシーンのギャップを見て欲しいという気持ちが強いです。あと、ヒモ男が全部で4回ビンタされるんですけど、実際は1回でOKが出なかったりして、皆で笑ってしまいましたね。それが印象に残っています。最初から印象に残るだろうとは思っていたんですけどね。「これJunに持っていかれるだろ!」と皆で話していて(笑)。
Jun 実際叩かれた事はないんですけど、叩かれたら駄目男に入り込んでしまうんですよね。痛過ぎて泣きそうでした(笑)。僕は今までそういう事をしてきてはいませんでしたが、等身大の駄目バンドマンが映像の中にあるんじゃないですかね。それを通して「バンドとは?」というものも味わって頂ければと。
TSUBASA 少しずつ叩かれていく中で、明らかにダメージが蓄積しているなと思いましたけど(笑)。ビンタの叩き方も段々強くなっていた様な…。最初の内は叩かれている様子を見て、クスクス笑っていましたけど、最後辺りで僕はハグしましたね(笑)。
大輝 僕は、大学時代は音楽をやりながら学校に通っていたんですけど、まさに居酒屋でバイトをしていました。なので、自分が体験した事を再現するという感じ。撮影もとあるお店で録らせて頂いたのですが、凄く懐かしい気がしました。サロンまいて、黒いTシャツを着てみたいな事なども。
わちゅ~ 僕は警備員の仕事をやった事がなかったのですが、あの衣裳を着た瞬間に凄く馴染んでいる感があって。鏡を見て「あ、こういう警備員いる!」と思いました(笑)。実際、工事現場のセットの中に立ってみると、車の誘導なども本当に人の命が懸かった仕事なので、演じながらも凄くプレッシャーがありましたね。音楽以外にも勉強になる撮影になりました。職場体験みたいな。
それぞれが考えるバブル時代
――衣裳と言えば、皆さんが今着ているチェックのライダースもお似合いですね。チェッカーズを意識している?
わちゅ~ それもあると思いますけど、タータンチェックが今の流行なので。それを取り入れて頂いて、あとスカートは僕らの衣裳のコンセプトでもあります。スタイリストの方と相談しながら決めて頂きました。
――「Oneway Generation」は映画『リンキング・ラブ』の主題歌にもなっていますね。
わちゅ~ 映画のストーリーは80年代にタイムスリップして、バブルの頃が舞台になるんですけど。その世界観と楽曲がマッチしているので、是非映画館に足を運んで頂きたいです。
――バブル時代はどんな時代だったと思いますか?
大輝 景気が良かったとか。
TSUBASA アッシー君とか。そう考えると、昔も女性の方が強いんじゃないかなと思っちゃいますね。タクシーチケットでタクシーを止めても駄目で、現金をひらひらさせないと止まらないという話も聞きました。信じられないですよ。
大輝 あとは、キラキラした感じがあります。タイムスリップしてみたいですね。今は連絡も携帯で取って、何だかんだで人対人という事が少なくなってしまっていると思うんですよ。バブルに限らず、昔は活気があるイメージがあります。そういう時代は凄く良いなと。人と人がコミュニケーションをちゃんと取れている時代というか。
TSUBASA 僕は別にいいかな。昔に行くなら、未来に行きたいと思います。
わちゅ~ 「聖子ちゃんカット」が流行ったら皆がそれを真似をしたり、その時代時代の流行を見ていると凄く面白いなと感じます。僕は元々、80年代の音楽が好きなんですけど、あの時代は明るいアイドルの音楽があったり、ちょっと暗いフォーク系の曲があったりするんです。その色がはっきり分かれているのが面白い。歌詞の世界観も今の音楽にはないものがあるので、そういうところも勉強になりますね。
大輝 当時のファッションなどは斬新だなという点もありますが、やっぱり「古いな」というイメージもありました。
TSUBASA 「見栄張ってなんぼ」という印象もありますね。ファッションとか、自分の見に付けるものにお金をかけた方が偉いというイメージ。今は、例えば「安いアイテムだけど、こんなにお洒落にできます」という方が偉かったりします。今見ると「ハイブランドでバンバン」というのが、少しダサく見えてしまう点もあって、やはり80年代と今は違うんだなと感じます。
――この新作を引っ提げたライブもおこなわれます。
大輝 リリースが10月25日で、その1日前の24日にリリース前夜祭としてワンマンライブ『DOG'S PARTY vol.11~わんわん秋のリリース前夜祭~』をおこないます。そこで収録した3曲も披露する予定です。この衣裳でも初ライブとなるので、楽しんで頂けるんじゃないないかなと思います。演奏は勿論なんですけど、10月ならハロウィンとか、そういう企画も考えています。初めての人も、ファンの方も楽しめる様なライブにしたいです。
――最後に読者にメッセージをお願いします。
Jun 今までも「メロディが耳に残る」という事に重心を置いてやってきました。今回は、80年代のカバーという事で、お母さん達には懐かしい、子どもたちは新しいという2ウェイで楽しめると思います。是非二世代で聴いてください。
TSUBASA 僕らを通して過去の名曲3曲が沢山の人に届けば嬉しいです。是非聴いて頂きたいと思います。