<記者コラム:オトゴト>
 基本的に音楽全般を愛してやまないのはもちろんとして、筆者が一番好きなのは『お洒落な音楽』です。ですが、音楽における<お洒落>とは一体何なのか? と考えるのは、とても難しい問題です。それは普遍的な概念ではないからです。服に色やシルエットの流行があるように、同じ音楽も時代によってクールだったり、ダサかったりします。

 ですので、この<お洒落>について断言する事は避けて、極めて個人的な意見をしたためたいと思います。筆者の主観では、今一番お洒落なのはヒップホップな気がします。

 それはなぜか? 確かに最近の海外チャートはヒップホップ/R&Bが凄い勢いです。それに、実際、少し前からラッパーがモード系のブランドでモデルを務める等、ヒップホップとモードの親和性が強まっているという事もあります。

 しかし、ヒップホップが今の日本で新鮮に聴こえる一番の理由は『BPMの遅さ』だと思います。BPMとは<B=Beats・P=Per・M=Minutes>の略。読んで字の如く『1分間当たりに鳴るビートの数』という意味で、テンポの速度を表します。

 例えば、これがBPM=60となると「1分間に60回ビートが鳴る」わけですから、速度は時計の秒針と同じになります。つまり私達の時間はBPM=60の速さで進んでいるという事になります。(ちなみに秒針のスピードを上手く使った演出をライブでしているのが、東京事変の「能動的3分間」)。

 ヒップホップは基本的にビートがかなり遅いです。日本では速度の速い音楽を聴く機会が多い事もあり、筆者にはこれが新しくて、クールで、お洒落なのです。最近は日本語MCバトルの流行で少しずつヒップホップが影響力を持ち始めましたが、海外に比べるとまだまだです。

 そして私はヒップホップの遅いビートが流行る事で、もっと日本人の生活にゆとりが出てくるのではないかとも思っています。ラッパーの様に遅いビートの上で、早く手を動かす様な働き方ができれば、プレミアムフライデーももっと定着するのではないでしょうか。【小池直也】

 ◆小池直也 記者としてイベント取材やインタビューをおこなう一方、サックス奏者としてライブにも出演。

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