曲の“解体新書”、進化したWEAVERサウンド どう変化したのか
INTERVIEW

曲の“解体新書”、進化したWEAVERサウンド どう変化したのか


記者:平吉賢治

撮影:

掲載:17年05月12日

読了時間:約18分

遅ければ遅いほど人間性が出る

互いの持つ「グルーヴの観念」「制作使用機材」「リバイバルの傾向」「人間性が醸す音楽性」などについて語り合った

杉本雄治 今のWEAVERのバンドのノリとしては今回の「Shake! Shake!」で出す事が出来たディスコ的なノリだったりしますね。今までのピアノだけのサウンドでは絶対これは出せなかったと思うんです。

 そこに今回のサウンド、リズムが入る事によって、これからのWEAVERのライブのノリ方だったり、そういうものが大きく変わるだろうし「変えていきたい」という思いがあったので、今は「Shake! Shake!」のグルーヴ、サウンドがすごく満足のいくものになっているんです。こういうアプローチはもっと増やしていきたいと思います。

mabanua 俺はテンポが遅いやつが昔から好きなんですよ。遅ければ遅いほど人間性が出るというか…。

杉本雄治 音の隙間に“人となり”があるんですね。

mabanua どこまでこの人は我慢出来るだろうかとかね(笑)。

杉本雄治 それは確かにありますね。

mabanua だからよく先輩のミュージシャンが後輩のミュージシャンに遅い曲をやらせたりするんですよ。「まだ君にはエロさが足りない!」とかジャズバーで言われたりするんです。それで「はい! 頑張ります!」とか言って。

杉本雄治 そうなんですか(笑)。

mabanua 若い時は速いなりの2ビートも良いんですけどね。でも、良くも悪くもノリでごまかせちゃう所もあります。遅いビートって、包み込んでくれる様な部分を感じさせる要素がたくさん出てくるので、そこで“人となり”を分かるという感じですかね。ちょっと跳ねた感じのビートも人間性が出ますね。

杉本雄治 シャッフルビートは人間性が出ますよね。(編注=跳ねたリズムの種類)

mabanua そうなんだよね。最近の音楽だと「揺らぎ」を盛り込める時がどうしても少ないんですよ。打ち込みのものが多かったり、ヨレているものを良しとしない傾向もあるじゃないですか? ピッチ(音程)やタイミングも後から何でも直せてしまうので。だから良い揺れを感じにくくなってきているのは歯がゆい部分でもありますよね。

杉本雄治 「正確なものが良い」というものではないと思うんですよね。歌であっても、CDにしていく段階でピッチを修正していきたいという事はあるんですけど、ジャストの音程に修正する事が良いという事には限らなくて、そこの判断は人間の耳、自分の耳でする事が大事だと思うんです。そこで「何が良いか」という判断はまたセンスによるかもしれないんですけどね。

mabanua 歌のピッチ修正なんかは、自分の歌を聴いているとどんどん直したくなるんですけど、人からしたら「直さなくていいよ!」と言われる事も多いんです。昔の方の曲を聴くとピッチが酷いなと思う事もあるんですけど、そこを気にして聴かなければあまり分からないんですよね。「確かにピッチは悪いね」くらいにしか。ビートルズって、実はそんなにピッチは良くなかったりするじゃないですか? でもビートルズはピッチが悪くて有名という訳ではないし。

杉本雄治 どちらかと言うと「上手い」って言われていますね。

mabanua きっとチューナーとかで正確に音程を測ったら揺れているだろうし。だからピッチが悪いと自分の歌だと気になるけど、客観的に聴くとそんなに気にしなくても良いのかなと思いますね。

杉本雄治 Mr.Childrenの桜井(和寿)さんでも、高い音程の箇所は若干上ずり気味だったりするんですよ。でもそれが高揚感になってすごく良かったりしますから。デヴィッド・ボウイの最後の作品でも、上の音程に当て切れていなかったりするんですけど、それが“デヴィッド・ボウイの歌”だと思うし、多分エンジニアさんも「これがデヴィッド・ボウイの歌なんだ」と判断して直さなかったんだと思うんです。それがその人の味なんだなと僕は思いました。

――ピッチでもビートでも、きちっとした枠から逸れても、その人の味が出たらそちらを優先するのでしょうか。

杉本雄治 そこのジャッジもまたセンスなんですよね…。

mabanua そう!「直すべきものなのか?」とね。直す時は直す。その判断は難しいですね。

杉本雄治 桜井さんやデヴィッド・ボウイさんじゃなかったら普通にヘタクソって言われるかも…。

一同 (笑)

mabanua その人だから「揺れても味が出た」という事もあるかもね!

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