3ピースピアノロックバンドのWEAVERが2月26日、兵庫・神戸国際会館こくさいホールで『WEAVER LAST LIVE「Piano Trio ~2004→2023~」』のファイナル公演を開催し、約19年の活動に幕を閉じた。同ライブは2月11日の東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)公演とWEAVERの地元である兵庫県・神戸国際会館こくさいホールの2公演を行うというもの。ライブは「66番目の汽車に乗って」やデビュー曲「白朝夢」など19年間の活動を振り返るようなセットリストで、約3時間のステージを繰り広げた。東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)公演の模様を、以下にレポートする。【取材=村上順一】

またどこかで出会えたらいいな

WEAVER(撮影=関口佳代)

 開演時刻となり河邉徹(Dr&Cho)、奥野翔太(Ba&Cho)がステージに登場。照らされたライトによって、紗幕には2人のシルエット。河邉は手を振り上げ、ライブへのテンションの高さが伝わってきた。まずは2人のみで演奏がスタートし、そこに杉本雄治(Pf&Vo)が合流。オープニングを飾ったのは、3人で初めてレコーディングしたという「66番目の汽車に乗って」。この曲がピアノバンドとしての活動が始まった思い入れの強いナンバーだ。オーディエンスもバンドの放つビートに合わせ手拍子で盛り上げていく。

 杉本が「お待たせしました! WEAVERです」と声を高らかに響かせ「トキドキセカイ」、そして、「Boys & Girls」を披露。オーディエンスは体を弾ませ一体感は増していく。3人で奏でるグルーヴは最高に心地よい空間を作り上げていく。

杉本雄治(撮影=関口佳代)

 声出し解禁ライブということで、「渋谷元気ですか?」と、投げかけた言葉に「声が返ってきた! めっちゃ嬉しい」と反応する杉本。続けて「セットリストを考えるのも難しかったんですけど、今日のこの瞬間、ひとときもみんなの心を離さないように、そんなライブにできるように作ってきたので、存分にこの時間を楽しんでいけたらと思います」と期待が高まるMCから、EDMの要素を取り入れた「Another World」へ。繊細さとダイナミックさが融合したナンバーで、会場のテンションはより高まっていく。

 東日本大震災について振り返る。非常事態のなかエンタメや音楽が必要なのか、と世間から問われていた2011年。杉本は「こんな時こそ音楽が必要なんじゃないかなと思い、1カ月後にライブをしました。この曲がきっと今も、誰かの心に光を灯してくれるんじゃないかなと思って、そういう想いで今日はこの曲を歌えたら」と語り、2011年にリリースされた「希望の灯」を届けた。杉本の力強い歌声が、まさに希望を感じさせる迫真のパフォーマンス。

 ここでMCコーナーへ。

 奥野は、「声が聞けるって嬉しいな。最高に楽しいです。みんなの声に力をもらっていたんだなと実感しています」。河邉は「どんなライブを観てもあの感動には敵わないなというくらい、いいライブにしようと僕たちは思っているので、最後までよろしくお願いします」。

奥野翔太(撮影=関口佳代)

 杉本は「沢山の人と出会うことができて、時間が経つにつれて離れていってしまった人もいます。でも、また帰ってきてくれた人もいるかもしれません。そうやって僕らは人との出会いと別れをずっと繰り返していくんじゃないかなと思って、今日ここに居ない人にも、ここに居る人にはもちろん、僕らがどこに行っても、この音楽があればずっと繋がっていられる、そんな想いを込めてこの曲を届けたい」と、披露されたのは、2021年にリリースされた曲で、ずっとホールでやりたかったという「タペストリー」。3人それぞれにスポットライトが当たる中の熱演。オーディエンスも歌と演奏に耳を傾け、3人の想いをしっかりと受け止めているようだった。

河邉徹(撮影=関口佳代)

 ここで『Memories Always With You メドレー』と題したメドレーコーナーへ。過去のライブ映像がスクリーンに映し出される中、奥野がピアノを演奏し、杉本がハンドマイクで歌い上げた「You」、「光と呼ぶもの」など、思い出のアルバムをめくっていくかのように、楽曲を紡いでいく。オーディエンスもアップチューンでは手拍子、メロウな曲では身体を揺らし、ノスタルジーに浸るような時間になっていた。杉本がピアノの上からジャンプするなど、視覚でも大いに楽しませてくれたメドレーコーナーだった。

「声出し最高やな」

WEAVER(撮影=関口佳代)

 ここから後半戦。杉本が「僕らの音楽人生を大きく変えた曲」だと語り、披露された「僕らの永遠~何度生まれ変わっても、手を繋ぎたいだけの愛だから~」。最後のセクションはオーディエンスが合唱で、エモーショナルな空間を作り上げ、ライブならではの一体感が生まれていた。複雑ながらもそれを感じさせないリズム隊の一体感も心地よい「くちづけDiamond」では、改めてWEAVERの演奏スキルの高さを突きつけられた。河邉のアグレッシブなドラムフィルから、杉本のパワフルな鍵盤、奥野のベースがグイグイとドライブする「管制塔」で、ギアをさらにあげていく。

 「最高すぎるよ東京! みんなもっと歌ってくれますか?」と投げかけ、シンガロングから始まり、シンガロングで締め括られた「Free will」は、まさに何かから解放されたかのような自由な意志を感じさせてくれた。そして、昨年リリースされたラストアルバム『WEAVER』から「Don’t look back」を投下。間奏での奥野による歪んだベースソロがスパイスとなり、会場を盛り上げ、疾走感のあるビートから踊り出したくなる「Shall we dance」へと突入。隙のないセトリで、ポップでアグレッシブなWEAVERを堪能。杉本はブレイク部分で「気持ちええわ。ありがとうな東京」とぽつり。

 曲が終わり杉本は、「声出し最高やな。いい時間を過ごさせてもらいました」と伝えると客席から大きな拍手がステージに送られた。「みんなのおかげで、今日までやることができたなと思っています。本当にありがとう。僕らはあまり言葉にしなかったけど、それぞれの道を進んでいきます。でも、僕らの音楽はみんなの心にずっとずっと残ってくれるんじゃないか、そばに寄り添ってくれるんじゃないかと信じています。またどこかで出会えたらいいなと思います」と、本編ラストは「On Your Side」を届けた。<どんな道も必ず終わりがあるから>というフレーズがグッと胸に響く。最後のフレーズ<その答えがあなただから>と、3人の強い想いをメロディに乗せ、WEAVERを支えてくれた人たち、一人ひとりに伝えるようだった。

みんなは人生の光でした

WEAVER(撮影=関口佳代)

 アンコールに応え、再びステージに杉本が登場。今までで最高のライブになるように、そして、これまで作ってきた楽曲を1曲でも多く届けたい、という思いから、Encore Specialメドレーを披露。メドレー1曲目となる「僕のすべて」は、杉本1人でアコギで歌唱し、「Tonight」で奥野と河邉がピアノ連弾を披露するなど、3人のフレキシブルな部分が色濃く出ていた。そして、定位置にもどり、「泣きたいくらい幸せになれるよ」、「春色グラフィティー」など、10曲をメドレーで届けた。

 ここで一人ずつ、今の心境を語った。

 河邉「時間が過ぎるのは早いなと思っています。今日演奏した音楽は形に残らないから、感じたことを皆さんの心の小さな部屋でいいので、僕らの音楽を住まわせてくれたら嬉しい。懐かしいことをふと思い出して、僕ら神戸の高校で出会って、高校1年で同じクラスで休み時間も放課後もずっと一緒にいたら、ある先生がそういう友達がいるって貴重やなと。当時の僕はあまりその言葉の意味がわかっていなかった。今の年齢になって本当に貴重だったなと思います。音楽を奏であって、未来を語り合って、世界を変えたような気持ちになった青春時代を過ごせました。これは誰にでもあることではないから、僕にとって奇跡的な経験だったんじゃないかなと思います。そんな僕らがデビューして、みんなと出会っていろんな景色を見たよね。色んな思い出を共有して、今日もこんな素敵なステージで、みんな観に来てくれて、素晴らしいスタッフに囲まれて東京での最後のライブを迎えられるということを本当に感謝しています」。

 奥野「僕らがいいかなと思って投げかけてきた音楽を、受け取ってくれるみんながいるから、言葉にできない思いを抱えてステージに立っても、僕らが作ってきたものをみんなが肯定してくれるなと、今日改めて感じました。バンドを結成してから19年、メジャーデビューして13年、僕はこの先の人生のほうが長いと思うのですが、こんなに長く続けられて大切な時間を過ごすことは絶対できないだろうと、この1年間感じながらやってきたんですけど、僕にとってもみんなにとっても大切な時間を一緒に過ごすことができて、人生が報われるなと感じています。(みんなと)一緒に過ごした時間は、僕にとってもかけがえのない勇気になってると思うし、みんなにとってもそういうものになってほしいなと思います」。

 杉本「35歳で19年、(人生の)半分以上を一緒に過ごしてきて、どこを切り取ってもWEAVERのことしか考えてこなかった人生だった、と思った1年だった。自分にとっての生きがいそのものだったと思っています。それを終わらせるのは自分自身に対しても凄く悔しい思いもあったし、それは皆さんにとってもそう。僕のものではなくてみんなで一緒に作ってきたものと思っていたから。でも、今日全力の笑顔でみんなに届けようと思ってやって、それをみんなが返してくれて、やりきったなと思いがこみ上げてきました。1年半前に解散することをチームのみんなと話し合って決めて、そこからみんなに伝えるまでの時間というのも正直僕の中で『これでよかったのかな』と思う時間もありました。なぜか、発表してからの時間というのは不思議と僕の中で後悔という言葉は全然なくて、デビューして13年という中、がむしゃらにずっとWEAVERに人生を捧げてきた、やり尽くしてきた、今の3人でできることは全部やったんだなと、この1年感じながら前に進んでました」。

 続けて、「僕たちのわがままというのはわかっているんですけど、みんなにはこの気持ちわかってほしいなと思っています。たった一度の人生、後悔しないために決めた答えをみんなにも受け止めてもらえたら嬉しいなと思います。今日まで一緒に過ごしてきた時間というのは、一番の宝物として残っているし、あなたを思う気持ちというのは、ずっと変わらないから、僕たちの音楽だけはずっとずっと忘れないで心の中にしまっていてくれたら嬉しいなと思います。僕の中でもみんなは人生の光でした、WEAVERの音楽が未来を照らしてくれるような音楽として、ずっと残ってもらえたら嬉しいなと思います。そんな思いを込めて」と、「HIKARI」を披露した。WEAVERからファンへの手紙のような意味合いを持つ「HIKARI」に込められたメッセージは、この場所にいる一人ひとりの記憶にしっかりと刻み込まれたはずだ。

 そして、ミラーボールの光が会場全体に照らすなか、「Shine」を届けた。シンガロングで、さらなる一体感を生み出し、多幸感あふれる空間を作り上げ、終演を迎えたかと思いきや、「この曲をやらないと終われないよな」と、もう1曲、2009年に配信限定リリースされたメジャーデビュー曲「白朝夢」をパフォーマンス。<きっと続いていく朝があるから>というフレーズが、どこか寂しげに響く。WEAVERの音楽を余すことなく伝え、盛大な拍手が降り注ぐ中、東京公演の幕は閉じた。

WEAVER(撮影=関口佳代)

 筆者は昨年、ラストアルバム『WEAVER』のインタビュー取材を行った。その時の彼らは、解散というものに対し、ただ悲観的というわけではなく、前向きに捉えているような雰囲気が印象的だった。きっと今回のライブもポジティブなエネルギーを我々に与えてくれるだろうと予想していた通り、最高のパフォーマンスを届けてくれた。その中で改めて感じた楽曲のクオリティ、そして、演奏スキル、音楽と真摯に向き合うその姿勢は凄まじかった。スリーピースという少数精鋭のスタイル、その可能性は常に無限大だったんだなと、ライブを通して感じさせ、活動は終了してもWEAVERの音楽はいつまでも、我々の心に残り続けることを確信したステージだった。

セットリスト

『WEAVER LAST LIVE「Piano Trio ~2004→2023~」』
2月11日@東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)

01.66番目の汽車に乗って
02.トキドキセカイ
03.Boys & Girls
04.Another World
05.夢じゃないこの世界
06.レイス
07.希望の灯
08.タペストリー
09.こっちを向いてよ
10.Memories Always With Youメドレー
on the rail(seeing the scenery)
You
偽善者の声
アーティスト
透明少女
キミノトモダチ
光と呼ぶもの
KOKO
Time Will Find A Way
Loop the night
キューブライト
on the rail(arriving at the terminal)

11.僕らの永遠~何度生まれ変わっても、手を繋ぎたいだけの愛だから~
12.くちづけDiamond
13.管制塔
14.Free will
15.Don't look back
16.Shall we dance
17.On Your Side

EN.1Encore Specialメドレー

僕のすべて
Tonight
Hope~果てしない旅路へ~
泣きたいくらい幸せになれるよ
AMI
つよがりバンビ
最終バス
春に
春色グラフィティー
Life

EN.2 HIKARI
EN.3 Shine

WEN 白朝夢

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