曲の“解体新書”、進化したWEAVERサウンド どう変化したのか
INTERVIEW

曲の“解体新書”、進化したWEAVERサウンド どう変化したのか


記者:平吉賢治

撮影:

掲載:17年05月12日

読了時間:約18分

WEAVERが求めているサウンドを具現化した楽曲「Shake! Shake!」「Stay」の制作秘話を中心に語り合ったWEAVER杉本雄治とmabanua

 神戸出身の3ピース・ピアノロックバンドのWEAVER(ウィーバー)が5月3日に、EP「S/S」をリリース。現代に提示するニューディスコサウンドが完成した。前作「S.O.S.」から更に発展するエレクトロ・ディスコサウンドを核にした音楽性の追求は、Charaやさかいゆうなどを手掛ける人気サウンドクリエーター、mabanua(マバヌア)のアレンジが施されアウトプットされた。MusicVoiceでは今回、フロントマン杉本雄治(Piano&Vocal)とmabanuaの対談を実施。今、WEAVERが求めているサウンドを具現化した楽曲「Shake! Shake!」「Stay」の制作秘話を中心に、互いの持つ「グルーヴの観念」「制作使用機材」「リバイバルの傾向」「人間性が醸す音楽性」などについて語り合ってもらった。音楽の根幹をなす“グルーヴ”は会話にもあるという。グルーヴや間を大事にする彼らがこだわり作り出したサウンドとは?

バンド感はあまり出さなくていい

WEAVER杉本雄治

――mabanuaさんはWEAVERさんの作品に初めて参加されました。一方、WEAVERさんは前作からディスコサウンドを強めていますが、今作で更にブラッシュアップされています。なぜ、mabanuaさんに参加してもらおうと思ったのか、そして、どう進化したのか、その背景を今回の対談で解いていきたいと思います。まずは、もともとお2人はお知り合いだったのでしょうか。

杉本雄治 全くお会いした事は無かったんです。今作で一緒にやらせて頂いたのが最初の出会いです。

mabanua そうなんですよ。今回の制作を通して、ですね。WEAVERの前作「S.O.S.」がすごく好きで面白いなと思っていたので、今回の制作に関わらせてもらってメチャメチャ嬉しかったんです。

杉本雄治 僕らがmabanuaさんに声を掛けさせて頂いたんですけど、僕が最近好んで聴く音楽のクレジットを見るとmabanuaさんの名前が入っている事が多かったんです。

mabanua iri(イリ)さんとか?(編注=昨年10月にデビューした神奈川県逗子市在住のシンガーソングライター)

杉本雄治 そうです。他にも色々。僕らの前作は80'sテイストの作品だったんですけど、そこに少しR&Bやディスコの要素を入れたいなと思っていました。それでmabanuaさんのサウンドはすごく合うんじゃないかなと思って。

――mabanuaさんのサウンドの核は?

mabanua 生楽器が100%のアレンジの曲もあるんですけど、けっこうシンセ100%の時もあるので、自分の音がどういうものかという事が自分でもよく分かっていなくて。でも今回の様に「mabanuaのサウンドを取り入れたい」と言ってくれると、自分でも分からないどこかしらの枠を汲み取って、不思議な気持ちで仕事を始めます。だけどそれはすごく嬉しい事です。

杉本雄治 今回の僕達の作品はシンセに振り切った感じですよね?

mabanua そうだよね。今回のアレンジで、バンドなんだけど「バンド感はあまり出さなくていいです」と言われて、それがけっこうチャレンジでした。「ギターもなし」と言っていたよね?

杉本雄治 そうですね(笑)。

mabanua 「ギターなしでディスコっぽく」と言われてどうしようと思いました。そこも自分の中でチャレンジでしたね。

杉本雄治 最初のデモの段階で、ギターにしか聴こえないカッティングをシンセで作ってくれましたよね。でもギターにしか聴こえなかったから「もうちょいシンセっぽくして下さい」と言っちゃって(笑)。

mabanua そうだったね。あと2曲目の「Stay」は、個人的にはリードトラックにしたいくらいのカッコ良さがあるんです。

杉本雄治 1曲目の「Shake! Shake!」は前作の「S.O.S.」のサウンドを継承している所があって、「Stay」はWEAVER的にも新境地に辿り着いたなと思います。

――お互いの音楽性にはどういった印象を持たれていましたか?

杉本雄治 僕が聴いてきたmabanuaさんの音楽は「音の隙間」がすごく気持ち良いなと思う作品が多くて。それはmabanuaさんがドラムを中心にやっている事がすごく大きいんじゃないかなと思います。生のバンドのサウンドにも理解があって、シンセのサウンドも作る事が出来て、というスタンスがすごく魅力的だと感じました。

 シティポップやR&Bサウンドを作る方って“ザ・トラックメイカー”という方が多いという印象です。でもそうじゃなくて「生の良さ」というのもちゃんと分かった上で、シンセや打ち込みの音を取り入れてくれるのではないかな、という期待が僕の中にあったんです。

――mabanuaさんの持つ「生の良さ」は、ドラムプレイヤーとして培われた感性からくるものでしょうか?

mabanua そうですね。ちょっとした良くない“ゆらぎ”なんかは、ボタン一つで綺麗にする事が出来ちゃうじゃないですか? でも、全部そういう手法で作られた曲を聴くと、悪くないんだけど「何かが足りない」という事があるんです。

 それは手弾きの揺れだったり、ちょっとしたドラムの揺れだったりする事がいくつか混ざるだけで、シンセ100%でも乗れるものになる現象をよく感じるんです。そういう所はもしかしたらドラマーとしての“オーガニックさ”みたいなものなのかなと思いますね。

 録音の時も、家で弾いてリズムなどを直さないそのままのテイクを書き出してMixしたりします。例えば揺らいだ演奏の断片だけを切り取って、1小節でも2小節だけでもループさせると面白いじゃないですか? まあでも聴く人には細かい部分は分からないかもしれないですけど。

杉本雄治 なるほど。最近のEDMなんかもそうなんですけど、傾向として若干生っぽいというか、あえて人間の揺らぎをあえて作っているものが増えていますよね。そういう中で雑誌なんかを読んでいるとmabanuaさんの記事を見かけたりするんです。

 DAW(デジタルオーディオワークステーション)で完全に縦に合わせてリズムを打ち込むのではなくて、少しスネアドラムをずらしたりとか、そういった事もすごく細かく解説されているんですよ。「面白いな、この人と一緒にやってみたい」というのはそういう所からもありました。

この記事の写真

記事タグ 

コメントを書く(ユーザー登録不要)

関連する記事