悪性のエンターテイメントで魅了したFly or Die

悪性のエンターテイメントで魅了したFly or Die

 【ライブレポート】お笑い芸人のマキタスポーツがプロデュースするロックバンド「マキタスポーツ presents Fly or Die」(フライオアダイ、略・FOD)が20日、東京・新宿ロフトでライブイベント『「Fly or Die presents 悪性のエンターテイメント」』を開催した。この日は、清 竜人率いるアイドルグループ「清 竜人25」も参加。イベントタイトルの通り、屈折のエンターテイメントで会場を熱狂させた。本稿では、音楽をユーモアに、そして知的に操る「Fly or Die」の魅力を、ライブレポートを通じてひも解いていきたい。(取材・小池直也)

フライオア? ダーイ!

盛り上げた清竜人25

盛り上げた清竜人25

 対バン相手であるの一夫多妻性アイドル「清 竜人25」が最初のステージを飾った。すっかり温まった会場を、夫人がさらにあおる。そして「フライオア? ダーイ!」という掛け声で「Fly or Die」劇場の幕が開けた。

 クールな女性の声が響き渡るなか、赤と緑の照明に照らされてメンバーが姿を現す。それと当時に大きな歓声が湧く。轟音のイントロで三拍子の「The Theme of F.O.D」が始まった。会場はオープニングにして最高潮。期待感にも似た最高潮の歓声を突破していくFOD。その後も軽妙なMCで笑いを誘ってから「華麗なる欲望」「中年」と繰り出していく。

 ヴォーカルのダークネスが「いくぞ!」と前方の柵に上ってフロアを煽ると、ローズと呼ばれるFODのファンたちは手をあげて呼応する。全員でクラップしたり、しゃがんだり跳ねたりする一体感は、微動だにしなかった初見のオーディエンスをも唸らせた。

 ここでメンバー紹介。ハープシコードの音で演奏されるバロック風三拍子のBGM。この中でダークネスがメンバーを紹介し、オーディエンスがその名前をコールする。この一連の流れを様式美(ダークネス曰く)として全員分繰り返した。

 ベース・堕、ギター背☆飲、キーボード魅蛙、ドラムス内野くんの順に面白おかしく紹介し、最後はダークネス自ら「漆黒の闇よりの使者、ダークネスだ」と自己紹介。「ダーさま」コールがフロアから響き渡る。

V系の様式美に隠れているヒップホップ方法論

Fly or Die

Fly or Die

 その後に演奏されたのは「デスドナルド」。この言葉を使うのは気が引けるのだが敢えて言おう、キラーチューンだった。某ファストフード店のポテトが揚がった時でお馴染みのアラーム音をモチーフにして始まるイントロ。Aメロはラップ、サビは有名な某店CMのジングルをモチーフに展開する。間奏も違う時代の別ジングルを鍵盤とギターが掛け合う。つまるところ、この曲は某店にまつわる様々なメロディのつぎはぎでできているのだ。

 他にも別方面からの引用が散りばめられていること含め、この曲は極めてヒップホップ的な構造であると言える。外見とバンドサウンド、それから「デスドナルド」というファストフード店のふざけたリリックが搭載されていることで、表層状は完全にV系ロックチューンのパロディとして成立している。しかし、V系の様式美に隠れているのはヒップホップの方法論だ。

 こんな恐ろしい曲でオーディエンスは頭を振り、フロアをガンガン揺らしている。そもそもバンド名のFly or Dieがファレルウィリアムス擁するN*E*R*Dのファーストアルバムのタイトルからの引用ではないか。これを敢えて考えさせないようなエンターテイメント性に脱帽である。

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