INTERVIEW

ムロツヨシ

「自分の野心を叶えてあげたい」役者・ムロツヨシの本心、主演ドラマ「雨に消えた向日葵」では笑顔を封印


記者:村上順一

写真:冨田味我

掲載:22年07月26日

読了時間:約8分

 ムロツヨシが、WOWOW「連続ドラマW 雨に消えた向日葵」(全5話、7月24日放送開始)で主演を務める。吉川英梨氏による小説が原作。ひとりの刑事が執念の捜査で真相に迫っていくヒューマンミステリー。ムロは妹をある事件から守れなかった後悔を抱えながら少女失踪事件を懸命に捜査する刑事・奈良健市を演じる。周囲を明るくさせるムード―メーカーのムロとは対照的な役柄。どのように向き合ったのか。活動の原動力は「野心」と語るムロの想いとは。【取材=村上順一/撮影=冨田味我】

共演者とあえて距離をとっていた

冨田味我

ムロツヨシ

――コメディー作品への出演の印象が強いですが、陰のある人物を演じられていかがでしたか。

 パブリックイメージとは少し違う役のお話がきたのはビックリしました。僕は喜劇を多く20代からやっていますが、実はその喜劇の中にもまた違ったお芝居をする瞬間があります。僕ら役者は、皆さんが思っているイメージというのは一面であって、そういった部分を皆さんにじっくり見てもらういい機会だなと思いました。力を入れすぎず、自分を信じて演じました。

――原作や脚本を読まれた時はいかがでしたか。

 今回、失礼ながら原作は読んでいないんです。それは脚本が出来上がっていたので、それをまず読んで欲しいとのことでした。実はお話をいただいた時、奈良健市役でというオファーではなかったんです。役の前に「この脚本に興味がありますか?」ということでした。今回はどの役を演じるかということが決まっていなかったので、脚本をフラットに読めてストーリーにしっかり入り込むことができました。

――いつもとは違ったのですね。

 役を気にせずに読める素敵な役者さんもいると思うのですが、僕の場合は「この役です」と聞いてしまうと、その人物のセリフだけを追って考えて読んでしまう傾向があります。今回それがなかったので、「この先どうなってしまうんだろう?」といった感じでミステリー作品として興味深く読ませていただきました。自分がどの役に置かれるかよりも、そのストーリーの深さに引き込まれたので、「ぜひ役者として参加させていただきたい!」とお返事をさせていただきました。

――演じる上で難しいと感じたところは?

 奈良健市は、僕らが普通に生きていく上でほとんど経験しないバックボーンを持っています。妹、家族に対する思い、そして、なぜ奈良が刑事という仕事に就いたのか、その理由を忘れてはいけないと思いました。それは僕の経験にはないものだったので、それをあまり重く捉えるべきではないのか、しっかり重く捉えるべきなのか、使命感からくる正義感なのか、正義感からの使命感なのかなど、演じる上でそこのバランスは考えました。

――共演者の方々とのエピソードはありますか。

 刑事役の皆さんと一緒にいる時間が多かったです。キャストを見ていただくと分かる通り、堀部(圭亮)さんをはじめ、今野(浩喜)さん、阪田(マサノブ)さん、小松(利昌)さんは喜劇という畑に根を張った方たちです。そういう面々が集まったので、この捜査会議のシーンは説得力がでるのか?と思ったり(笑)。でも、さまざまな経験値を積んだ方たちで、本番になるとドンピシャに雰囲気を合わせてくるんです。

 でも、先輩方は話すことがすごく好きなんだということが伝わってきました。みんなで会うと先輩方が昼食も夕食も楽しそうにしていて、待ち部屋が一緒の時はいろんな話をしていました。ただ、僕は色々背負ってしまっている役柄ということもあり、その輪に入ってしまうと楽しい雰囲気に染まってしまうので、ちょっと距離を置かせていただいたのですが、先輩方の話に聞き耳を立てながらリラックスしていました。

――相棒となる今野さんとはどのようなやりとりを?

 過去に僕が司会をやっていたコントライブで同じ舞台に立ったことがありました。性質上お互いどうしても面白いことをやりたくなってしまうところはあったのですが、そこはお互い抑えました。会話のやりとりも先輩と後輩という関係でありながらも、どこか意志が繋がっている正義感、向かっていく先は一緒であるというところは大事にしていました。

 ただ今野さんは監督から「熱いけどもどこか抜けてる、抜けてそうだけどちゃんとできる刑事」といった難しいリクエストを受けていていました。僕はそれを知りながら今野さんにプレッシャーをかけつつ、テストではやらなかったことを本番だけやったりもして(笑)。書類で叩いたり、あえて打ち合わせをしないでやったのが楽しかったです。

現場に入るところからスイッチを入れた

冨田味我

ムロツヨシ

――失踪した少女・葵の父である石岡征則役を演じた佐藤隆太さんとの共演はいかがでした?

 小さな劇場でやっていた僕が、佐藤さんと共演できるところまできました。僕がまだ役者としての仕事がない時に見ていた佐藤さんの熱い部分が垣間見えたところもありました。今回佐藤さんと僕の関係性が友達でもなく、知り合いでもないという特殊な関係なので、一緒に座って話す時の距離感などを監督と佐藤さんと話し合いました。佐藤さんとの共演は本当にやりがいがありました。

――ムロさんと奈良の共通点みたいなものはありましたか。

 このような大きい使命感、正義感を持てることができるのだろうか、というのが奈良に対する印象でした。ただ、妹の身に起こってしまった悲惨な出来事に対して、兄としてそれを背負って生きる覚悟、それほどの使命感が自分の中に生まれるかどうか、奈良ほど背負ってまっすぐやり切れるのかどうかというのは考えました。その奈良という役を自分の体を重ねてやるという覚悟を少しずつ積み重ねて現場には臨んだのですが、やればやるほどきつくて…。

 目の前で起こる事件だったり、事件が解決に進まない苦しみだったり、家に帰って妹の顔を見るつらさだったり、奈良は心休まるところがないんですよね。最終回の最後の顔というのは自分が今まで背負ってきたものからの解放なのか。もしくは、またひとつ覚悟が増えた顔なのかという表情が映っていますので、その答えが少しわかるのではと思います。

――奈良という人物を通してムロさんはどんなことを感じましたか。

 刑事でいることで救われている部分もあると思います。奈良の時間の過ごし方というのは自分と向き合えなかったり、妹に対しての思いをどこにもぶつけられないまま、ずっと自分の中にしまってしまう人間だからなんじゃないかなと。刑事という仕事に就いたのも、その思いをしっかりぶつけられる仕事だったからだと思います。奈良という役をやりきって思ったことは、少し休むことだったり、楽に過ごす時間を作ってほしいと思いました。奈良は心が空っぽな状態になる時間、力を抜くところがないんですよね。

――今までとは違う役柄でしたが、スイッチの入れ方というのはどうされていました?

 喜劇を多くやっていた自分のスイッチの入り方だと今回は通用しないなと思ったので、朝現場に入るところからスイッチを入れてました。奈良のように口数があまり多くないところから始めざるを得なかったんですよね。本当は現場入りしたらメイクさんと雑談したり、本番でバッチリ決めて、スタッフさんから「すごいよね」と“良い陰口”を叩かれたい自分なのですが、今回はそれは無理だなとその欲を捨てざるを得ないと思いました。

――奈良という役を通して新しいムロさんが見えたのではと思っています。この先やってみたい役はありますか。

 今回の面もそうなんですけど、今までみんなが見てきたパブリックイメージだったり、ドラマとか映画などで皆さんが見ていただいている面は3〜4面かぐらいなんです。面というのは円ではなく球体で、その球体の真逆の面が今回の奈良だとしたら、まだ真横、真上、真下の部分などいろんな面があります。例えばシリアスだけではなく、もっと人間味あふれた酷い人間とか、役者ムロツヨシの中のいろいろな面を見せていければと思っています。

ムロツヨシの原動力は野心

冨田味我

ムロツヨシ

――ムロさんの活動の原動力は?

 原動力の言葉として出てくるのは野心だと思います。自分がやりたいことを役者と決めるまでものすごく考えました。なので、自分の中にある野心を叶えてあげたいという欲があります。

――どんな野心なのでしょうか。

 人に知ってもらいたい、感動してもらいたいというものです。感動してもらいたいというのはちょっと気持ち悪いかもしれませんが、どこかにその欲は存在しますし、みんなを笑わせたいという欲もあるんです。ただ、周りからすごいと思われたいという欲だけは、いつも消すようにしています。

――すごいと思われたくはないんですか。

 僕は全然すごくなくていいんです。自分が出演する作品にテレビのチャンネルを合わせてしまう、劇場に足を運んでしまうような役者になりたいと思っています。それは、滑稽でも哀れでもいいんです。

――その気持ちが強くなったのはいつ頃だったのでしょうか。

 強くなったのは25歳頃でした。19歳から役者を目指して6〜7年間まだ何もないという状態でした。「役者・ムロツヨシ」を誰も知らない、知っているのは学生時代の友人とバイト仲間くらいという現実はとてもつらかったです。数年役者をやってきて他人が僕を知らないという現状は、とてつもなく自分の野心を一気に爆発させました。

――私は、野心や夢を持つことが今の時代とても大切だなと感じています。

 夢を持つことよりも、挫折への恐怖の方が強い時代だと思います。でも、それはどの時代も夢が叶うというのは、確率にすると職業関係なくみんな一緒だと思っていて、それが良いという定義を自分の中で見つけなければいけないと僕は思います。ただ、僕は目的や目標があって、そこに向かって走っていく方が性分に合っているんですけど、それがあると息苦しいと感じる人もいると思うんです。

――そこはご自身で考えなければいけないところですね。

 休み休み自分のペースで与えられた仕事をこなすことが、自分にとってのやりがいであり、幸せなんだと自己分析できていれば、絶対その方がいいわけです。どこかで考えなければいけないのは努力というよりも、自分が何をやりたくて何が好きなのか、と考えることだけはやらざるを得ないと思います。その上でやりたいことが「夢」「目標」と置き換えられるのであれば、夢は持った方がいいと思います。あと、ゆっくり過ごしたいというのも今の時代では素敵な目標だと思います。自分の中で考えて、どうしたいのか答えが出ていれば、どの人生も楽しいですから。

(おわり)

番組情報

■「連続ドラマW 雨に消えた向日葵」
■放送・配信日時:2022年7月24日(日)午後10:00放送・配信スタート(全5話)
【放送】毎週日曜 午後10:00[第一話無料放送]
【WOWOWプライム】【WOWOW 4K】
【配信】各月の初回放送終了後、同月放送分を一挙配信[無料トライアル実施中]【WOWOWオンデマンド】
■番組特設サイト https://www.wowow.co.jp/drama/original/himawari/

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