INTERVIEW

土村芳

『おいしい給食』で学年主任の宗方早苗役「笑いを堪えるのが必死」


記者:木村武雄

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掲載:22年05月18日

読了時間:約4分

 女優・土村芳が、ドラマ『おいしい給食 season2』、そして『劇場版 おいしい給食 卒業』で学年主任の宗方早苗役を演じている。演じる宗方は真面目なキャラクターだが、現場では笑いが絶えずこらえるのが必死だったという。土村はどのように向き合ったのか。そして活動の原動力になっていることとは。本稿は昨年11月に実施したインタビューをもとに作成。【取材・撮影=木村武雄】

 「一つ一つの作品が私にとってとても大切です。何かを得るということも、作品がなければ成り立ちませんし、役者の皆さんやスタッフさん、そして視聴者の皆さんとも出会うことができません。なので、作品は私にとって何かのきっかけを与えてくれる大切なものです。好きだからこそ役者を続けていて、その積み重ねが原動力になっています」

 一つ一つのピースが合わさり絵を作るように、作品は土村にとって今の「女優・土村芳」を形成する大切なものだ。とりわけ、2016年下半期放送のNHK 連続テレビ小説『べっぴんさん』での主人公・坂東すみれ(芳根京子)の同級生、田坂君枝役は大きなピースだ。

 「作品と出会うきっかけを頂けている、そしてたくさんの人に知ってもらうきっかけになったのが、朝ドラの『べっぴんさん』でした。まだ役者として何かを掴めたとはまではいきませんが、何かを得るというのも作品と出会わない限りそういう機会も訪れないと思っていて、そういう意味では『べっぴんさん』は今の自分に繋がっています」

 そんな彼女を形成するものとして、今回新たに加わったピースが『おいしい給食 season2』だ。

土村芳

 宗方は若くして学年主任を任されていることもあって生真面目な人物。対して現場では笑いが絶えなかった。「私の笑いが皆さんにご迷惑をかける要因だったと思います。私の笑いでNGになったことも多くあって…」と笑いながら照れる。この取材でも彼女の笑いが絶えない。「笑い上戸と言えばそうかもしれないですね」と再び笑う。その笑いで周囲は一気に明るくなる。

 だが、出演が決まった当初は不安もあった。

 「すでに出来上がっている空気に溶け込めるか、転校初日のような緊張感がありました。でもシーズン1を観て楽しそうな雰囲気もありましたし、DVDに付いているメイキング映像も観て素敵な現場という印象もありましたので、緊張半分、楽しさ半分でした」

 その緊張が解けたのも瞬間は「笑い」だった。

 「甘利田先生とのファーストコンタクトで大笑いできたこと、思いっきり笑えたことで緊張が解れました。監督や現場の皆さんがすごく気持ちよく作品の世界に誘導して、宗方早苗として引き込ませてくれました」

 甘利田幸男を演じる市原隼人のアドリブは予想していたが、はるかに超えるものだった。

 「もちろん台本も面白く、それを演じることで更に面白くなっていますが、台本に書かれていないところ、予想外の変化球が来た時に対処のしようがなくて笑ってしまって。もう止められなかったです。笑ったつもりがなくても監督に『笑っている』と言われ、制御できなくなっているなと。それぐらい感覚がマヒしていたかも…」

 だが、劇中の宗方早苗はビシッとした生真面目なキャラクターだ。

 「若くして3年の学年主任になった教師としても仕事ができる方。仕事ができることは自分のやるべきことを理解している方とも言えます。生徒に対しても、学年主任として先生たちのリーダーとしての役割など重圧があるなかで仕事をしている方。でも真面目ゆえの危うさもあり、自分が想像できない、全く理解できない存在に対してどう対処していいか分からない。その相手が甘利田先生です。圧倒的に立ちはだかる存在に対して早苗先生自身は当初は否定的に入っていきますが、そこからどう変化が起きるのか。甘利田先生との化学反応でどう変わっていくのかも楽しみにしてほしいです」

 「ちょっと頑張り過ぎちゃう性格かも」という宗方早苗との共通点を聞けば「余裕がない意味では私と少し似ているかも」と笑うが、「私もよくいっぱいいっぱいになることがありますが、そういう時に自然と周りの皆さんが助けて下さって。今回も市原さんやスタッフの皆さんが、自分のなかで『ヤバい』と思っている時に顔に出してしているつもりはないけど、引き上げて下さいました」

 笑顔と同じように、元来持っているピュアさが人を惹きつけ、助けてくれるのだろう。「そうだと嬉しいですね。ウフフ」

 「やっぱり役者が好きだから続けられています。今もなぜ続けているかという根本を考えたら好きだから。それがシンプルな答えです。作品の出会いや共演者の出会いが全て好きから派生していて、そこに何一つの無駄はない気がします」

 好きだから楽しい、辛くても頑張れる。笑顔はそうした「好き」で作られているのかもしれない。

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