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市原隼人が、現在テレビ神奈川、TOKYO MX、BS12トゥエルビほかで放送中のドラマ『おいしい給食 season2』で主人公の給食マニアの教師、甘利田幸男を好演中だ。シーズン1、劇場版からの続投。給食に目がない甘利田を表現するため振り切った芝居は当時も大反響を呼んだが、本作では更にパワーアップしている。「これまでいろんな感情表現をしてきましたが一番ハードな現場でした」と語る市原は多くの反響を受け「役者や作品を作る醍醐味を改めて感じました」と振り返る。甘利田はどのようにして生まれ、そしてどういうメッセージを込めたのか。その舞台裏を聞いた。動画インタビューと共に届ける。【取材・撮影=木村武雄】
市原隼人演じる給食マニアの教師・甘利田幸男と、給食マニアの生徒・神野ゴウによる、どちらが給食を「おいしく食べるか」という闘いを描く学園グルメコメディ。舞台は甘利田の転勤先、黍名子中学校に移し、新たな“給食バトル”を繰り広げる。
――シーズン2の制作が決まった当時の心境は?
シーズン2ができるのは、ひとえにこの作品を好いて下さった皆様のお気持ちの賜物です。その感謝の気持ちを届けたいという思いだけで現場に立っていました。小さいお子さん達が作品を見ながら、給食前に踊る甘利田に合わせて一生懸命一緒に踊って下さる姿や、90歳を超える方からも「観ているよ」とお声をいただいたり、多くの反響をいただきました。役者や作品を作る醍醐味はやっぱりここにある、お客様に喜んでいただくためにあると改めて実感じました。
――シーズン2では、映画化されたシーズン1の2年後を描いています。
観て下さる方々も、もちろんそうなのですが、我々作り手も作品が2年経過すると自然と新たな変化や感情が芽生えてきます。セリフにもありますが「神野ゴウがでかくなっていやがる」とか…。今回はコロナ禍という情勢下で、人と人がふれあう事や、顔を合わせて給食を食べる事など、誰かと一緒に食事をする機会がすごく少なくなっているなかでのこの作品ですので、より強い思いが入っています。秩序をわきまえる事を前提に、何か物事を一生懸命楽しもうとしたり、人に寄り添う気持ちにブレーキがかかるのは間違っていると思うんです。ぜひこの作品を見ていただき、滑稽ながらも一生懸命に生きる甘利田先生の姿を通して、お客様が何か一つでも人生を楽しみたいと思えるきっかけにしていただけたら嬉しいです。
――甘利田先生は給食になるとブレーキがかからない。
この役にはブレーキはないですね(笑)。原作がなくゼロから始まった作品ですから。常に台本にないものをいかに生み出せるかを色々考えながらやっていました。シーズン1では最初、そこまではっちゃけていなかったんですが、だんだん楽しくなってきてしまいまして、監督と話し合いながら「もっとやりましょう!」と構築して、あの世界ができてきました。シーズン2は、シーズン1と映画を経て、その更に上からのポテンシャルで始まっていますから、僕らもエンジンかかりまくっています。
給食シーンも「ご飯を食べる」としか台本には書いていないですから。目の前にあるもので、どう楽しもうかと考えていて、箸を収めるシーンも甘利田にとっては“箸”が大切なものだと思い、「納刀」という動作(刀の鞘のように箸を収める)で表現しました。餃子を食べるシーンでも外がパリと中がジュワッとしているのをどう表現しようかと思い、顔が大きく揺さぶられるという動作が生まれました。そんな動作も台本には書いていないんです。機会があれば、ぜひお客様には撮影している過程の現場を見に来てほしいです。
シーズン1の始まりでも、衣装合わせは何回も重ねました。Yシャツからランニングシャツが透けて見えるのがいいんじゃないかとか、眼鏡もいろんなタイプのものをかけて、たまたまスタッフさんがかけている形の物がいいですねと同じものを買いに行って。時計もいいのがなくて探していたら助監督が付けているものがいいねとなって。その時計は、助監督のおじいちゃんの形見で、それを貸していただいたり。ネクタイも「僕も持ってきました」と(衣裳部とは別の)スタッフさんが時代に合う年代物を40本ぐらい持ってきてくださったり。皆で手探りで作ってきた感じに『おいしい給食』ならではの作品愛があり、それをすごく感じています。
――では『おいしい給食』の撮影現場は楽しい空間でもある?
撮影は楽しいですよ。でもすごく苦しいですけど。これまでいろんな感情芝居、アクション芝居をやってきましたが、すべてを差し置いて一番ハードな現場でした。アドレナリンが出過ぎて寝られないんですよ。自分が甘利田幸男につぶされそうになって(笑)。生徒達には作品を楽しんでほしいですから、現場で子供達にそんな姿は見せられませんが、終わって家に帰った瞬間倒れこんでました(笑)。
――面白みのある甘利田先生ですが、その背に寂しさも感じます。
甘利田幸雄という男は孤独です。自分が信じたものを突き通す信念を持っている男。それが周りには滑稽に見えるでしょうね。笑われ者として映ると思うんですけども、これほどまでに人生を楽しんでいる人間はいないと思います。僕は本当に素晴らしい男だと思います。
――給食を愛するがゆえに周囲、生徒にも敵対心を向けています。
給食が(人生の)メインですから周りが見えていません。僕もたまに数学の教師だったことを忘れています(笑)。給食のために学校に通っていると言っても過言ではない男ですが、そんな甘利田の物語をみていくうちに、作品から道徳心を得ていきます。人の生き方はこうあるべきだと共感させられるセリフも沢山あります。表面的なコメディの部分と目に見えない精神的な本質を届けることが出来ている、よくまとまっている作品だと思います。
――神野ゴウを演じた佐藤大志さんとは?
すごく自然体で現場にいてくれるんです。寝ちゃうくらい(笑)。僕も13歳ぐらいで映画デビュー(主演作『リリイ・シュシュのすべて』)して、大志と同じような感覚でした。僕の頃は、監督は父、プロデューサーは母のような存在で、プロデューサーの家に泊まりに行ったり、ご飯を食べさせてもらったり、撮影も泊まり込みで皆と一緒にご飯を食べながら撮影して。当たり前のように日常の中に撮影現場がありました。大志にとってもあたり前のように日常のなかに自然と『おいしい給食』という撮影現場があるんだなという空気感が垣間見えてすごく嬉しかったです、親心のように。大志もシーズン1よりも自分から何かをキャッチしようとしている気持ちが強くなっています。プラス芝居で遊びだして、やられたなと(笑)。その様(さま)を見て大志とできて良かったな、この子もこの作品を好きになってくれているんだなと感じられて、僕は幸せです。
(おわり)
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