三谷幸喜「時間の制約がない」初の動画配信作で感じたTVとの違い
『誰かが、見ている』制作秘話
演出・三谷幸喜×主演・香取慎吾のAmazon Originalドラマシリーズ『誰かが、見ている』(配信中)。三谷はこれまで舞台や映画、ドラマ、ラジオなどのあらゆる作品を生み出してきたが、ついに動画配信作に初挑戦。作り手目線での配信作のメリットを三谷は“時間の制約がないこと”だと明かし、本作に懸ける思いを語った。
三谷にとって本作は初めての動画配信作となり、世界240以上の国と地域で配信されることが決まっている挑戦作。これまで数々の舞台やテレビドラマ、映画を手掛けてきたが、動画配信作ならではのメリットについてこう語る。
「従来のドラマと同じように、とにかく『面白いものを作る』ことしか考えていなかった。ただ、唯一今までと違っていたのが、地上波の場合、例えば30分という枠なら正味約25分で納めなければならないのですが、今回はそれがなかった。一応目安として30分という決まりはあるのですが、それより多少長い回があってもいいし、短くてもいい。これにはびっくりしたし、有り難かったです」
そうした時間の制約がないことで、通常のテレビドラマではカットされてしまうような“一人芝居の長回しシーン”を取り入れることができたそうで、5~6分ほど台詞がなく、香取演じる舎人が恋人のそと子(演・宮澤エマ)に指輪をプレゼントするため、寝ている彼女の指のサイズを測るというユニークなシーンが生まれた。
三谷は「(5分以上の一人芝居は)普通のテレビドラマではありえない。だってその間、台詞がひとつもないんですから。恋人は寝ているだけだし、まさに香取さんの一人芝居。そんなドラマ、今までなかったと思う。時間を自由に使えるからこそ出来たシーンでした」と、世界に共通する“笑い”を生み出し、香取の喜劇俳優としての才能も存分に発揮されているようだ。
さらに通常のテレビドラマとは違い、本作では舞台のセットの前に観客を入れて、1話約30分を一発の長回しで撮影するという過酷な撮影を慣行。それにより、舞台を生で観ているかのようなライブ感がある、全く新しい新感覚エンターテイメントが誕生した。
三谷は「この『誰かが、見ている』という作品は、今までのどんなドラマとも違うし、もちろん舞台とも違う、まったく新しいジャンルの作品になっていると思います。沢山笑って頂いて、最後は気持ちがホッとなる。そんな作品になりました。ぜひ全8話通して観ていただきたいと思います」と語り、作品の出来栄えに自信をのぞかせている。