清塚信也「人間は何かを表現しなければいけない」音楽表現に賭ける想い
INTERVIEW

清塚信也「人間は何かを表現しなければいけない」音楽表現に賭ける想い


記者:平吉賢治

撮影:

掲載:19年08月16日

読了時間:約15分

演奏者の豪華な音を最低限の楽器で

清塚信也

――収録曲「Members」についてですが、先ほど清塚さんが仰ったペライチのみで、あとは即興演奏という雰囲気が凄く出ていますね。

 ペライチで14分ですからね(笑)。YouTuberのTEAM-2BRO.さんも入って頂いて。

――TEAM-2BRO.さんは曲中で各演奏者についての解説もされていますね。

 よく聴いていると、TEAM-2BRO.が各演奏者について喋っている間は、そのパートは会話しているんです。

――ギターで「ギューン!」と、返事のような音を出したりしていますね。

 そうそう! それは即興じゃないとできないので。喋りも最低限の情報だけ渡してやってもらって、この曲こそ1テイクです。

――14分強の長尺の曲を1テイク一発録りというのは驚きです…喋る部分のバースも決まっていないのですか?

 「喋り終わったら曲に一回戻って終わろうね、僕が手を挙げるわ」って言って。みんなでTEAM-2BRO.の喋りを聴きながら即興演奏して、TEAM-2BRO.が「またな!」と言ったあとに僕がみんなに合図を出したら、なぜか“せーの”で戻るタイミングに合うんですよ。

――凄い即興の調和ですね…そういえばインストをあまり聴かない人に理由を聞くと「途中で飽きる」と言うんです。でも今作は飽きるという感覚は全くないと思いました。

 それは予定調和がないからじゃないでしょうか? 我々も何が起こるかわからないで弾いているし、どんどんアイディアが出た順に出してるから、そのぶん飽きないという自信はあります。無駄なところは削いだと思っていますし。わりとシンプルにやったつもりです。

――そこは音像やアンサンブルでも感じました。例えば、普通だったらこのギターのパートは2つ重ねて録音するだろうなとか。

 そうですね。生身の人間ができないことはやっていないので凄くシンプルだと思います。

――シンプルなぶん、個々のパートの呼吸が凄く感じられます。

 みんな音数が多いんですよ。一人が出している音数がサポートでのプレイの20倍くらいあるので。そういう意味ではバリエーション豊かです。音数を入れるということは技術が必要なので。それを弾ける人達だからということもありますね。

――バンドやオーケストラだと複数いる楽器が、今作ではギター1人、ヴァイオリンも1人という編成であれだけ豊かな音像になるのですね。

 僕自身が最近、けっこうな大所帯のコンサートがあまり好きじゃないんです。昔はそういう豪華なのが好きだったんですけど、なんと言うか「これだけ集まればそりゃできるよな」と。本当は凄いことをやっているんだけど、あまりそれが伝わってこないというか。必然性が逆に魅力を差し引いてしまうというか…そういう意味で、リズムはドラムだけ、ギターは1人、というように担当が最低限のほうがスリルがあるし、「その人が間違えたら終わりだよ」という世界がライブで観たいしシビれたいんです。だから大所帯って、はっきり言って1人間違えても大丈夫というか。人が多ければ多いほど保険が効くじゃないですか?

――確かに同じセクションの楽器が複数いると、1人がちょっと間違えても聴き手はほぼ気付かないというか。逆に、今作の各パートは全て担当が一人ですね。

 そう。全て1人で司っているから。フットサルみたいですよね。1人怠けたらとたんに負け始めるという(笑)。

――なるほど(笑)。一人ひとりの責任が重大ですね。それで本作では同楽器セクションはいないのですね。

 そうです! 全員の役割がキチっと。一人がサボったら終わりですから。これだけ腕がある人達が集まって、豪華な音を最低限の楽器で出せるのですから。

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