「心のなかにある音楽をどう表現するか」
――三柴さんが今注目している音楽やアーティストはいますか?
たくさんいますね。クラシックでは僕はナクソス(クラシックに特化した定額制のインターネット音楽配信サービス)というのに入っていて、そのサイトでどんどん知らない作曲家や演奏家を発掘しています。そこでいいなと思ったCDを買う。ナクソスって異常なほどのタイトル数で、聴いたことないのがいっぱいありますよ。一生かかっても聴けないくらい(笑)。
――今作ではクイーンの楽曲をピアノ1台で表現したりと、ピアノという楽器は表現の幅が広いと改めて感じました。
若い頃からクラシックの交響曲をピアノ一本に編曲するというのを趣味でやっていまして、それを知ったリットーミュージックの人に「じゃあロックの曲もピアノ一本に出来るんじゃない?」って言われて、そういう仕事をやるようになりました。その中に、クイーンの曲もありました。ドラムのフィルなんかもピアノで表現したりしてね。フレディ・マーキュリーは、オペラ歌手のモンセラート・カバリエとアルバムを作っていて、彼の音楽の中にクラシックの要素が多く入っているので、編曲作業が楽しかったですね。
ピアノは自己完結できる楽器なんですけど、僕はいろんな人とユニットを組むのも好きです。ザ蟹とかTHE金鶴とか。最近は、竜理長(Ryo-Ri-Cho)という、ボーカルベースの高橋竜(※高ははしごだか)さんと、元アルフィーの長谷川浩二さんというドラマーと、僕と3人でピアノトリオを組んでいるんです。人と一緒にプレイすると、「僕にこんな引き出しがあったんだ」と思うようなフレーズが出たりもしますし。今後もずっと続けて行きたいですね。一人で弾いているだけでは人生もったいないなと思います。
――三柴さんは今後どういった形で音楽を表現していきたいですか?
体が続く限り変わらずソロでもピアノを弾いて、竜理長は今までなかったようなスタイルのピアノトリオなので、それもやっていきたいですね。あとは筋肉少女帯や特撮などのロックバンドも。いろんな人に呼ばれて弾くのも楽しいですね。
――ところで、腱鞘炎になったりしませんか?
そんなに無理してまで弾かないので…今まで腱鞘炎にはなったことはないですね。ロックはショーの部分もあるので、筋肉少女帯でも凄いアクションで弾いているんですけど、指が鍵盤に触れるときには、スッと力を抜いている。強打しているようでいて、実はピアノの音と手を大切にしていまして。
――ピアノは鍵盤の叩き方一つとっても繊細な楽器なのですね。
そうですね。とくにグランド・ピアノをホールで弾くときとか、自分がどういう音を出しているのかというのをちゃんと聴いて弾いています。結局、僕の心のなかにある音楽をどんな風にピアノで表現するか、ですね。
(おわり)