ポップスシーンにおいてのピアノのあり方
――三柴さんは、ポップスやロックシーンにおいてピアノはどういった立ち位置だと感じますか?
ロックやポップスではピアノはスパイスというか、装飾的になっていることが多いですね。僕自身がピアノを入れるのだったら、もっとおもしろい弾き方もあるんじゃないかと考えながら、いろんなバンドでピアノを弾いてきました。ロックは18歳くらいから聴き始めたんですね。その頃、筋肉少女帯の人達と出会って、プログレッシブ・ロックやフランク・ザッパなどを聴かされて。「面白いよ!三柴君みたいに弾く人もいるよ」とか言われて。
――現代音楽などを聴かれていたあとにプログレを聴くと、わりとスッと入ってきますか?
そうですね。「変なの」とは思いませんでしたね(笑)。
――三柴さんの音楽のルーツとして最も濃い音楽は?
クラシックですね。小さい頃からずっと聴いているので。そのせいか、普通のロックやポップスに入っているようなピアノがちょっと苦手というか。例えばジョン・レノンの「イマジン」のようなピアノとか。
――むしろ技術的にそこまで難しくはない和音伴奏のような感じが?
そうそう。ビリー・ジョエルのような感じとか。「簡単に弾けちゃうんでしょ?」って言われるんですけど僕にとってはニュアンスが難しくて。自分でも意外で。「これにロックンロールの普通のピアノを弾いてくれる?」という仕事を依頼されることもなかったし。
――三柴さんにしか弾けないプレイを求められているんですね。
デビューが筋肉少女帯であのアルバムを出しちゃったので、「ちょっと特異なピアノの人」というのもあったんでしょうけど。
――筋肉少女帯デビューから30年、音楽シーンにどういった変化があったと感じますか?
僕はバンドブームのときにデビューしたんですけど、そのときはまだ人が演奏する音楽が多かったんです。それがどんどん変わって、ちょっと寂しいなとは思います。昔はバンドのみんなで長時間、スタジオにこもってのレコーディングが多かったですね。個人的には、僕がスタジオでピアノを録音するとき、事前に家で練習してから臨むので、今作の新録音も4曲を3時間くらいで録音しました。
――凄いスピードですね。やはり練習量も非常に多いのかと思われますが。
練習は好きでたくさんしますね。筋肉少女帯を脱退した理由も、半年も家に帰れないほどのツアーが入ってきて「これはなかなか自宅でピアノの練習ができないな」と。小さい頃から刷り込まれているので、練習をしないということに罪悪感があるんです。「今日も練習できなかった…」と落ち込んでしまって、みんなには申し訳ないけど一回脱退するね、と。
――何よりもピアノを大事になさっているんですね。
ピアノを弾くことが僕の自信になっているんです。あまり他に趣味もないので…。
――結局、音楽の方にいってしまうんですね。
いつも音楽のことを考えているんじゃないかな。