意味あるものを出したい、cinema staff×アルカラ 奇跡のコラボ
INTERVIEW

意味あるものを出したい、cinema staff×アルカラ 奇跡のコラボ


記者:長澤智典

撮影:

掲載:18年06月28日

読了時間:約14分

掛け算で行き着いたコラボナンバー

cinema staff×アルカラ (撮影=冨田味我)

――エンターテイナーという面では、最後に収録したコラボナンバー「A.S.O.B.i」で、お互い思いきり楽しんでいますよね。

飯田瑞規 そうですね(笑)。「A.S.O.B.i」の歌詞にもいろいろ盛り込まれてると言いますか。コラボするときに、「太佑さんベーシックをお願いします」と俺らからお願いをして任せたんですけど。すごい面白い曲を作ってくれて。

稲村太佑 コラボするとなったときに、お互いが普段やっている感じの曲をやっても足し算しか出来ないんで。でも、今回のバンド名を観てください「cinema staff×アルカラ」と掛け算になってるじゃないですか。だから、足し算の曲は作られへんなと思って。掛け算ってすごく変化するじゃないですか。お互いのファンが想像出来ないことをしたいなと思ったときに、一緒に昔ツアーをやったときに旅先で買ったオモチャの音源から着想を得たものを楽曲の中へ組み込んでみたり。そんなことをやってたら、だんだんピースフルな曲になってきたなみたいな。結果、行き着いたのが「A.S.O.B.i」の形でした。

 歌詞にも、一緒に過ごしてきた中での思い出を記そうと思って。僕らがずっとゲラゲラ笑ってたことって何やったっけなぁと振り返ったときに思い出したのが、台湾へ一緒にライブで行ったときのこと。

 あのとき、台湾で流行ってると聞き、夜中にみんなでえび釣りに行ったんですよ。そこは、日本人も観光で来るらしく、日本語での注意書きも書いてあるんですけど。それが間違いだらけで謎の日本語が多いんですよ。中でもみんなで爆笑したのが、肝心な「えび料理」と書くつもりが「そび料理」になってた表記。

飯田瑞規 歌詞に「そび釣りをしていた」と書いてあったときには、「こうきたかぁ」となりましたからね。今回、エモい曲なのか、そうじゃないのか、どう振り切ってくるのか想像出来なかったんですけど、もう完全にエンターテイナーで来たなとなりましたからね。むしろ、俺らはこういう遊び心のある音源を作ったことがなかったから、ここに入れんのかなと最初は思いましたね。結果的にすごくハマッたし、しかも2回聴けばメロディも完璧に覚えられる楽曲になりました。

稲村太佑 僕が、cinema staffのプロデューサーとなった場合、どうしたらいいかなと思ったときに浮かんだのが、普段の人間くさいところというか、品の良い悪ふざけが出来る彼らの面をいかに出そうかなということ。普段のライブの感じではなく、打ち上げでふざけてる感じを楽曲にも引き出せたらいいなというのが、僕の中での裏テーマとしてあったことなんですよ。

――「A.S.O.B.i」からはメンバーみんなの笑い声も飛び交っていたように、あのわちゃわちゃとした感じはとても新鮮でした。

飯田瑞規 俺らのお客さんからしたら、「おー、こんなことしてきた」という感じでしょうね。前から音源でも遊び心があったほうがいいとは言われて、自分らとしては力を抜いた曲を作ったつもりでも、結果的に良くも悪くもまとまっていたんだと思います。正直、ここまで振り切ることは、俺たちだけでは無理ですね。だからこそ、この曲を何時かはアルカラと一緒にライブで演りたくて今はしょうがないです。

稲村太佑 「A.S.O.B.i」はこの時代の中、フェードアウトして曲が終わっていく。最後音量がゼロになる手前で急にギターソロが始まれば、ドラムもうるさくなってくみたいな。それをやりたくて。

――ちなみに,「A.S.O.B.i」の言葉にも意味があるのでしょうか?

稲村太佑 アルカラのAやろ、cinema staffのS。

飯田瑞規 そこ、俺ら小文字のcでしょ (笑)。

稲村太佑 Oは互いの想い出がいっぱいの沖縄、Bはビール、iは魔法のiらんど(携帯電話向けの無料ホームページ作成サイトサービス)。もしくは、愛を込めて。で、なんで愛だけちっさいんやろ(笑)。

飯田瑞規 小文字のiが、海老みたいで可愛いからです(笑)。

――『undivided E.P.』の冒頭には、それぞれに新曲も収録しています。そこにも、互いの関連性を詰め込んでいるのでしょうか?

飯田瑞規 『first song(at the terminal)』も、アルカラのことをすごく思って作りました。歌詞にも2002年とアルカラの結成の頃のことを触れてたり、アルカラへの想いはいろいろ入ってます。

 アルカラの作った新曲の『サースティサースティサースティガール』と聞き比べても、互いの音の違いがめちゃくちゃ面白いですよね。けっこう同じような音や曲調だと思ってたんですけど、同じ作品に一緒に並べたことでぜんぜん違うのはもちろん、それぞれの表情がホント際立って見えてきましたからね。

稲村太佑 だから、聴いててメッチャ楽しい。しかも、互いの楽曲が交互に流れてくる構成も面白い。ホンマ、掛け算になっている通りやな。

――お互いに本当に想いをぶつけあっている作品になっていますよね。

飯田瑞規 スプリットEPである以上、そうじゃないと駄目ですよね。意味があるものを出したかったし、結果、こんな風に奇跡のコラボレーションが出来ましたからね。しかも、お互いの関係性も、ここからさらに深まっていくでしょうし。

稲村太佑 こういうことって面白いねんなということを、ぜひ『undivided E.P.』をきっかけに知って欲しい。ほんまメッチャ面白いし、昔は当たり前にあったことなんですけど。大人になってから滑り台で遊んだら、もっと違う楽しみ方を知ったみたいなことを伝えたい。これからのメジャーシーンも、こういう作品が増えてきて、俺らがきっかけだというのをいっぱい書いていただくときが、これから来ると思います。

飯田瑞規 この1枚を、いっぱい擦って欲しいですね(笑)。

(おわり)

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