アルカラ「あなた自身の中になりたい」共有する強い想いが生み出す新たな音
INTERVIEW

アルカラ「あなた自身の中になりたい」共有する強い想いが生み出す新たな音


記者:平吉賢治

撮影:

掲載:19年12月11日

読了時間:約14分

 ロックバンドのアルカラが11日、10thアルバム『NEW NEW NEW』をリリース。稲村太佑(Vo,Gt)、下上貴弘(Ba)、疋田武史(Dr)の3人組バンド。2002年から活動し今年で17年となる。10枚目のアルバムとなる今作は、様々な意味が含められた“自信”が表現されている。現在のアルカラの音楽についてメンバーは「いまだからこそ挑戦する姿勢」「僕の人生のなかに同化してる感じになってもらいたい」と話す。その詳細について、そして「いままでとはちょっと違うアルバム制作」という本作についてと、様々な角度から3人に話を聞いた。【取材=平吉賢治】

「オーディエンスが信じてくれているという自信」

『NEW NEW NEW』ジャケ写

――今作で10枚目のアルバム、稲村さんは30代最後の作品ということで感慨深いところはありますか?

稲村太佑 発売日が誕生日というね。20代、30代と変わっていると思うんですけど、あまり僕は変わらず引き続き同じテンションというか。あまり実感もないけど、なんかある?

下上貴弘 俺とか武史は腰痛いとかフィジカル的なとこです。稲村はずっと元気なんですよ。

稲村太佑 「姿勢が良くなる本」というのが機材車に置いてあるんですけど、1ページも見ないまま1年ほど経ったのでもう撤去しましたけど(笑)。

下上貴弘 あまり40歳になるという感じがないよな。

稲村太佑 ないかもね。ライブを年間100本近くやっててルーティーンに入っているので、音楽に触れていることはご飯食べるのと同じくらいというか。

下上貴弘 心は元気だから日頃気をつけていればライブの時は大丈夫ですね。まだ僕は気合でなんとかなります。

――本作でアルバム10枚目ですが、「ここがピークだった」というようなことは感じず、ずっと右肩上がりという印象があります。

稲村太佑 グラフで言ったら反比例しているような。急にグイッといったら逆に「危ないな」と思いますから(笑)。特に「10枚目だな」という感じは全くないですね。今回は自分らがもう一歩「やりますか?」と、問いかけられたような気がして。「最後のチャンスやな」と思うくらいの気持ちです。実はこれは毎回思っているですけど。今回は特に40代になりますし、こうやってやれるチャンスを神様がくれたんじゃないかなと思って。

――レコ発直前ワンマンの渋谷公演のMCで「今回の新曲、自信しかないんです」とおっしゃっていましたが、その言葉通りでしょうか?

稲村太佑 その時はそう思っていましたね。ライブと音源ではまた違って、曲が成長しだすので。新曲は渋谷でやった時が初めてでした。

――冒頭から5曲立て続けでしたね。

稲村太佑 そう。ほぼ初顔合わせで「どうやねん」という気持ちで。やっていくと「もっとこうすべきやな」と、僕らも曲も育っていく部分があるので、自信はあるけどこれからより磨きをかけていきたいなというツアーでした。

――ライブでの新曲披露はかなり反響が良かったですね。

疋田武史 初披露で僕はけっこう必死で。お客さんを感じる余裕がなくて、渋谷では特に曲をしっかり伝えようという思いがありました。大阪、名古屋とやっていく上で少しずつ視野が外に向いていきましたけど。自分のなかではやっていて手応えはあったんですけど、曲に入り込むことに一番力を注いでいたかもしれません。

下上貴弘 ライブで伝わっているかどうかはあまりわからないというか。僕自身は、他の人のライブを観ているときにグッときている時は棒立ち状態が一番響いている状態なので。曲の世界観を表現することしか考えていなかったです。

――けっこう冷静にやっていた?

疋田武史 冷静ではないです(笑)。

稲村太佑 余裕がなかったんです(笑)。

――客席からはそうは見えませんでした…。

稲村太佑 このツアーは自分達が本気で新しい音楽、『NEW NEW NEW』という看板を背負って、新しいことをやるぞと言っているのに過去曲に助けられてライブをするのは良くないなと思ってたので。だから最初に5曲、最後のほうに1曲と新曲を入れて、真ん中は過程になるのでいままでの曲を入れてというのが一番趣があっていいなと。

――粋なセットリストでした。

稲村太佑 新曲で本当に勝負したいからアルバムタイトルと同じツアー名にしたんです。1本のライブって凄く大事なので「台無しにしたくない」と思うと安全策をとろうとすることがあると思うんです。それが悪いことだとは思いませんが、いまだからこそ挑戦する姿勢を見せていかないと、『NEW NEW NEW』というタイトルの意味が変わってくるし。だから本当に反応を見ている余裕はなかったですね。

――客観的に、凄く盛り上がっていました。

稲村太佑 お客さんのおかげやと思います! アルカラの音楽と共に育ててくれたんだなと思って。曲もそうですし、オーディエンスがアルカラを信じてくれているという自信もありました。良い曲に対しては良い反応を、うっかりした部分は笑い合って、そうやって育ててきた世界があると確信できました。新曲を並べて「過去曲をちょっと入れます」と言った瞬間にみんな「来たぁ!」みたいな絵が見えたのが「いや、そうじゃないやろ!」と。いままでこんなに聴く感じだったので急にというか。気持ちがそこで発散したのかな?

下上貴弘 緊張してたのかもしれないね。「こいつらホンマに新曲ずっとやるのか?」って。

稲村太佑 全部知らん曲やられたら初めましてのバンド観てるみたいになるからな(笑)。そういうところで色んな初めてという『NEW NEW NEW』を表現できたのは面白かったのかなと。これが自分達の血となり肉となり、また次の作品に繋がっていくという自信になりました。

――色んな意味での“自信”があったのですね。

稲村太佑 自分への信頼が自分をもっと高ぶらせてくれるし。そういう関係というのはいいなと。それはメンバー、スタッフ同士でも。17年間ありがたいことにそういう環境に恵まれてきたなと思う1日でした。それが“自信”という2文字かもしれません。

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