ロックバンドのアルカラが10月16日、東京・渋谷CLUB QUATTROで『ア・ル・カ・ラ レコ発直前ワンマンツアー“new new new”』をおこなった。本ツアーは、東京・大阪・名古屋のCLUB QUATTROで開催。東京公演は12月発売の10枚目『NEW NEW NEW』収録予定の新曲を中心にセットリストが組まれていくというワンマンライブ。ソールドアウトとなったこの日、“ロック界の奇行師”ことアルカラの世界観はありとあらゆるテイストとディープなアンサンブルで拡散され、渋谷CLUB QUATTROを激しく揺らした。【取材=平吉賢治】

リリース前新曲5連発スタートという驚愕の“奇行”

アルカラ(撮影=中山優瞳)

  “ロック界の奇行師”ことアルカラのこの日のライブは10thアルバム『NEW NEW NEW』収録曲が演奏される。リリース前の新曲披露に対しての期待感が会場に広がるなか、ライブ開始合図の暗転。オーディエンスから割れんばかりの歓声が沸いた。

 首にタンバリンを装着した稲村太佑(Vo/Gt)は1曲目から身振りを大きく交えての歌唱にギタープレイ、印象的なベースラインを何色も魅せる下上貴弘(Ba)、パワフルかつトリッキーなビートを叩き鳴らす疋田武史(Dr)、あらゆるテイストのプレイを魅せるサポートギターの竹内亮太郎と、アルカラは初曲から新曲を披露し、出だしからドライブ感溢れる音でオーディエンスを圧倒した。

 「新曲ばっかりやります」と言う稲村の言葉通り、「瞬間 瞬間 瞬間」「猫にヴァイオリン」と、立て続けにニューアルバム収録予定の新曲を連発。まだリスナーに深く行き渡っていない楽曲にも関わらずシンガロングが巻き起こり、ミステリアスな音階と4つ打ちのビートな鳴り響くなか、オーディエンスはエネルギッシュな一斉挙手で熱烈に応えた。

 新曲連発は更に続き、稲村はバイオリン演奏も披露。弓を掲げながら華麗にパフォーマンスをし、アウトロでは竹内のギターと稲村のバイオリンの美しいハーモニーを聴かせてくれた。4曲終えたところでアルカラは若干のインターバルをとるが、オーディエンスからの拍手はなかなか鳴り止まない。新曲の手応え十分なフィーリングのなか、稲村は「次も新曲やります。今回の新曲、自信しかないんです」と、発売前のアルバム『NEW NEW NEW』と、この日のライブへの期待感を煽った。

 ライブ開始から新曲を怒涛の5連発という“ロック界の奇行師”らしい展開に、オーディエンスの熱気は高まりを隠せない様子。新曲セクションが終わった後も、激しいアタックで刻まれる疋田のビート、縦横無尽に低音域をうねらせる下上のベース、そして独自の世界観を真っ直ぐに歌いソリッドに弦をかき鳴らす稲村。燃えたぎるようなアルカラのプレイを受け、「アブノーマルが足りない」ではオーディエンスはジャンプ&クラップ。攻めの姿勢の激しいバンドパフォーマンス、刃物が舞うような“キメ”の連打はストロボフラッシュの瞬きがピシャリとハマり、ビジュアル的にもアルカラのディープな世界観を鋭く示していた。中盤、「チクショー」の熱演で激しさを増したテンションはクラウドサーフを巻き起こし、ソールドアウトのフルキャパシティとなったこの日の渋谷CLUB QUATTROを激しく揺らした。

「心ゆくままに、五感をフルに、心震えるままに」

ライブの模様(撮影=中山優瞳)

 新曲の披露、激しいアクションにサウンド、ミステリアスで妖艶な空気感にストレートな魂の叫びと、ステージングでの圧倒感に加え、稲村の何とも言えない魅力溢れるトークでもオーディエンスの心を掴んでいた。

 稲村が「心ゆくままに、五感をフルに、心震えるままに楽しんでくださいまして本当にどうもありがとうございます」と伝えると、会場からは大歓声が上がる。そう、稲村の“心ゆくままに――”という言葉通りのスピリットに溢れるライブは、五感、第六感、それ以上の何かを呼び起こさせてくれるかのような見えないエネルギーを発しているようだった。

 終盤にかけても更にアルカラの情念が膨張するかのようにテンションは高まりをみせた。稲村の鋭い音色のリードプレイに人間味溢れるボーカル、和音でのバッキングという変化球もみせた下上の巧みなプレイ、クラッシュシンバルが割れるかと思うほどのパワフルな疋田のドラミング。タイトな演奏でありながらも心地良く浮遊するようなメロディラインとアンサンブルは、会場の熱気を更に膨張、いや、暴発だろうか、とにかく凄まじいエネルギーで体と精神は高揚させられ、会場一体となったままライブを疾走させた。そして「ドナドナドーナツ」の曲中で「渋谷ありがとう」と稲村はお辞儀をし、会場は大合唱で包まれた。

 そしてラストでも新曲が披露された。サウンドに魂を乗せるように奏で、言葉に心を込めるように歌われた最終曲では<LA LA LA>とシンガロングが響き渡った――。

 アンコールの前に稲村は12月10日にSHIBUYA PLEASURE PLEASUREでアコースティックワンマンライブを開催すること、更に12月31日にZepp DiverCityで年越しライブを開催することをアナウンスした。

 稲村はアンコールではハンドマイクでのパフォーマンス。「年末はZeppに集合だ!」と高らかに叫びながら全力演奏を魅せ、『ア・ル・カ・ラ レコ発直前ワンマンツアー“new new new”』東京・渋谷公演は幕を閉じた。続く大阪・名古屋公演、そして12月に開催される各公演への期待が高まるばかりの一夜となった。

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