曲もライブも常に“疑問符”、パノラマパナマタウン・岩渕想太からの問いかけとは
INTERVIEW

曲もライブも常に“疑問符”、パノラマパナマタウン・岩渕想太からの問いかけとは


記者:村上順一

撮影:

掲載:18年06月17日

読了時間:約10分

どこか疑問を持ってもらえるようなものを

――バンドマンですけど、その時のリアルな感情を歌にすることが多いシンガーソングライターに近い感覚ですよね。その中で「自分はバンドマンなのか…」という疑問的な発言がSNSでありましたけど、岩渕さんはバンドマンですよね?

 そうなんですけど(笑)。なんかその響きや字面を見てなんか違和感があって…。全然偉そうな話ではなくて「自分って一体なんだろう?」という素朴な疑問なんです。ミュージシャンとかアーティストとか呼ばれたいわけでもなくて…。結局何なのかわからないんですけど。

――改めて疑問に感じてしまったと。常に考えている岩渕さんらしいですよね。さて、今作「$UJI」はローマ字表記ですけど、漢字で「数字」ではイメージが違った?

 タイトルはもう出てきた時からこれでした。「S」を「$」にしたのは数字の歌でもあるけど、同時にお金についての歌でもあるなと思いまして。お金のことを気にしたくはないけど、気にしないと生きていけないし、それも密接に関係しているなと。

――こういった字面もかなり気にするタイプ?

 気にしますね。素通りされないものにしたいなと思っています。パノラマパナマタウンというバンド名もそうなんですけど、どこか疑問を持ってもらえるようなものではないと意味がないと思っています。

――今回の歌詞はどこを切り取ってもパンチが強いと感じました。敢えて岩渕さんが一番言いたいポイントを選ぶとしたらどこになります?

 <数合わせの命なんて たった一つも存在しねえ!>です。大人になっていく中で数字に対する諦めはすると思っています。5段階評価で成績をつけられて、出席番号をつけられて、大人になったらノルマを与えられ業績で判断されてとどんどん数字に没入していくなかで、それに慣れてしまう、諦めてきてしまうと思うんです。自分の代わりなんていくらでもいると言われたら本当にそうなんじゃないかと信じてしまったり。

 点数が低いから劣っているという劣等感を抱かせようと教育されていると言いますか、自分の芯を折らなければいけない瞬間がくるんだろうなと。でも、そんな些細な数字で自分の人生や持っている才能を狭められているとしたら虚しいと思いました。命は決して“1”ではなくて、ごちゃごちゃした喜怒哀楽があって、誰にでも計り知れない才能があるかもしれないなと。僕もそう感じているのでこの歌詞の箇所が一番強いです。

――可能性はみんなありますからね。先ほども話題に出たお金ですが、岩渕さんは音楽で成功して「お金持ちになりたい」とかそういった欲はありますか。

 お金持ちになりたいというのはないです。僕の場合、音楽での成功はお金ではなく、「自分たちが思うカッコいいと思うものが、みんなにとってもカッコいいと思ってもらいたい」、そして、「僕らが疑問に思ったことがみんなにも疑問を持ってもらいたい」ということです。曲もライブも常に“疑問符”だと思っていて、熱狂してわけがわからなくなるようなライブをやって、例えば「自分は一体なんだろう?」とか疑問に感じてもらえただけでも僕の中では成功なんです。

――考えるきっかけになってもらえたらと。

 そうなんです。歌詞には載せていないんですけど、<ここからはアドリブ あとは任せた>と最後に歌っているんですけど、どう考えるかは自分次第で、各々に正解があると思うので。

――曲やライブは岩渕さんの問いかけなんですよね。

 本当にそうです。考えないと死ぬまでその数字というものに追われてしまう可能性もありますから。何も考えなくても生きていくことは可能だとは思うんですけど、そこで一回悩むことが人間にとって絶対必要なことだと思います。

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