曲もライブも常に“疑問符”、パノラマパナマタウン・岩渕想太からの問いかけとは
INTERVIEW

曲もライブも常に“疑問符”、パノラマパナマタウン・岩渕想太からの問いかけとは


記者:村上順一

撮影:

掲載:18年06月17日

読了時間:約10分

 神戸で結成されたオルタナティヴロックバンド・パノラマパナマタウンが6月10日に、配信限定で「$UJI」(読み:スウジ)をリリース。この楽曲は、2月から4月にかけておこなわれてきた、全国対バンツアー『HEAT ADDICTION TOUR』の東名阪ファイナルシリーズで初披露されたナンバーで、メジャーデビューアルバム収録曲「フカンショウ」で得た感覚をもとにブラッシュアップした。テーマは人間が生活していく上で切っても切り離せない数字。これに岩渕想太(Vo、Gt)が日頃感じている、SNSのフォロワーや店舗などの点数など数字で良し悪しが計られている現社会への疑問をぶつけた。

「計らせてたまるか」という気持ち

岩渕想太

――みなさんは神戸から東京に拠点を移してもう1年近く経っていると思いますが、SNSで東京が好きになってきたとの発言をされていて。大きな変化が訪れたのかなと思ったのですが。

 そうなんです。東京の人の多さが僕には凄すぎてちょっと参っていた部分がありました。一人ひとりとやりとりしていたら、どうにかなっちゃいそうな…。その異常さというのは地方から来た人ならわかるのかなと思うんですけど。

――そこから好きになってきた要因は?

 逆にこれだけ暮らしがあるのも面白いなと思えてきました。それもあって休みの日とかに普段は降りたことがない駅に降りてみたりして、東京を肌で感じてみたり。喜怒哀楽、心情が人の数だけあってゴチャゴチャしているけど、それが面白いなと思えるようになりました。

――その中で北千住に降りて探索していたみたいで。

 そうなんです。そこで面白いバーを見つけまして、寺山修司(歌人)や岡本太郎(芸術家)、アレハンドロ・ホドロフスキー(映画監督)などの色んなポスターが貼ってあるアーティスティックなお店でした。かなりこだわりのあるお店みたいで、僕がいる間にも2件もテレビの取材が来てました。でも、今お客さんがいるからと全部断ってましたけど。

――お客さん第一のお店なんですね。さて、今回私たちの生活にも密接に関係している数字がテーマの楽曲「$UJI」が完成したわけですが、これはメジャーデビューして感じたことが歌詞に表れた?

 はい。数字のことばかり気にしてしまう自分がいることが嫌で出てきました。自分に近しい家族とかにデビューアルバム『PANORAMADDICTION』を説明する時、まず「何枚売れてさあ」という数字の話から入ってしまう。「そういった数字に囚われるのが嫌でバンドやっているのに」と思ったり。

 生まれてから違和感を抱いていることがあって、マイナンバーとかもそうなんですけど、自分とは全く関係ない数字で自分を表されていることなんです。歌詞にも出席番号と出てくるんですけど、それも僕は当時変な感じがして…。最初にも出てきましたけど、人間って色んな感情がゴチャゴチャしている矛盾した生き物で、でもその感情が“1”という数字だけで表されてしまうこともあったり、それが未だにピンときてなくて。

――メンバーにこの違和感については話しました?

 それがしたことはないんです。たぶんこの違和感をわかってもらえるとは思ってなくて。自分の名前、ニックネームとかにはしっかりと意味があってつけられているのに、その与えられた数字にはストーリーがないのが気になって…。メンバーには、歌詞に対して「いいね」とは言ってもらえたんですけど、数字に対する違和感はそれほどなかったみたいで。

――ここまで考えるのは特殊かもしれないですね。ちなみにニックネームを付けられることに関しては許せる?

 ニックネームは意味がある名称ではありますけど、僕はニックネームがなぜか嫌いなんですよ(笑)。「岩渕」とか「想太」とかで呼ばれる方が好きで、よく「ブッチー」とか言われるんですけど、それはあまり好きではないかも(笑)。

――色々こだわりがあるわけですね(笑)。話は戻りますけど、数字に関していえば生活をしていく中では避けては通れないですよね?

 避けては通れないです。なので数字をテーマに歌っている人もたくさんいます。テーマとしては新しいものではないし、数字について歌うために自分が数字に対して思っていることを全部書き出しました。その中で一番強いのはなぜ数字に置き換えられなければいけないのか、「計らせてたまるか」という気持ちでした。とは言っても半分くらい数字を気にしてしまう、逃げれない自分もいるし…。

――音楽も数字に支配されていますよね。CDの売り上げ枚数や動画サイトの再生回数などもその一つで。その数字の大きさで良い音楽なんだなと判断されてしまったり。

 SNSのフォロワーとかもそうですよね。それが誰でも見れるところに出ちゃうわけじゃないですか? 飲食店の点数もそうで、本来数字で計れなかったものが全部計られてしまっている時代だから、人知れず死んでいくものとかきっとあるんじゃないかなと感じています。

――なるほど、本当は良いものなのに点数が低いというだけでなくなっていくものがあると。そこまで考えていたことならスムーズに歌詞は書けたのでは?

 1回目は割とスムーズに書けたんですけど、結果3回ぐらい書き直しました。それもあって自分の奥底にあるものは吐き出せたと思っています。

――歌詞の内容はストレートですけど、深読みするような裏テーマもあったり?

 裏テーマとかはないです。というのも『PANORAMADDICTION』に収録されている「フカンショウ」が一番みんなに届いたと感じていて、良い反応がありました。その時に「なぜみんなに届いたのかな?」と考えたんですけど、自分がコントロールしきれないくらいの思いを全部歌にしていたからなんじゃないかなと。<ほっといてくれ!>という思いが全部歌詞に出ていたから、そういうのが心に刺さると思いました。自分が奥底から思っていることしか届かないんだなと。

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