ハテナマークだらけにしたい
――ここで今作の皆さんのオススメポイントやこだわりなどをお聞きしたいなと思うのですが。
淳士 sebastian は「とりあえず生」で推しフレーズがあるんです。Aメロでノリが良くなって来たところで入ってくる単音弾きがあって、そこのフレーズをずっと追求していましたね。ライブ前もライブハウスの物置みたいなところでsebastianがそのフレーズを練習しているのを栄二郎が聴いたみたいで(笑)。
栄二郎 暗闇からあのフレーズが聴こえて来たときは本当に怖かった(笑)。
sebastian あのスピードで弾くの難しいんだよ! あのフレーズは裏ノリしてないとカッコ悪いし。
――楽屋ではダメなんですか。
sebastian 周りがガヤガヤしていると集中できなくて…。僕の潔癖の部分はそういうところです(笑)。
――「とりあえず生」は確実にこれからの定番曲になっていきますね。
IKUO この曲は演奏が本当に大変なんですよ。歌いながら弾かなければいけないので。
――どの曲も大変そうですけど…。栄二郎さんの今作でのこだわりはありますか。
栄二郎 こだわりというか、切ない曲でも明るい曲でもどこかでハッピー感が出るようにという歌い方をしています。演奏隊は難しいフレーズが沢山あるので、そこでかしこまって歌ってもそれは自分ではないし、そこにいる意味自体がないと思います。なのでステージ上ではみんなを笑顔にさせる努力はしています。
――この音圧の中で歌うのも相当エネルギーを消費しますよね。この10年でエネルギーの使い方は変わってきました?
栄二郎 ほとんど変わってないです(笑)。
淳士 でも、イヤーモニターになったのでそこは相当良くなったんじゃない? 10年前の僕らは街のスタジオで練習していたんですけど、パワーヒッターの僕のドラムの音が自分でも聴こえないくらいでしたから。もちろん栄二郎の歌も聴こえてこないんですけど、顔はめっちゃ叫んでいて(笑)。
栄二郎 もう本当に1回のリハで喉がガラガラでしたから。
――誰も音量を下げようとは思わなかったんですね…。
淳士 そういうムードでした(笑)。おそらく自分以外には僕の音は聴こえていたと思うんです。それでドラムの音が大きいからとIKUO君が音を上げて、今度はsebastianも上げてと負の連鎖が起きたのかなと(笑)。
栄二郎 その中で僕はカオスですよ。あれはただ身体を壊すだけのリハでした(笑)。なのでライブでもモニタースピーカーの前から動けなくて…。そこはイヤモニになってだいぶ解消されました。
――その時の栄二郎さんはハッピーでもなんでもなかったと(笑)。
淳士 ハッピーカオスロックです(笑)。
栄二郎 それオレだけじゃん(笑)。
――続いて淳士さんの今作でのプレーの聴きどころは?
淳士 僕はIKUO君のアレンジが大好きなんです。そのアレンジを僕らの中でIKUOフィルターと呼んでいるんですけど、ドラムのパターンをすごく細かく考えてきてくれていて。いつも新しいところに連れて行ってくれるので、そのフレーズを叩くのが楽しくてしょうがなくて。デモをもらったときは「これは無理だな」と思うんですけど、いきなり本番レコーディングに入って練習をしながら取らなきゃいけない状況で叩いてみると、意外とできなくはないということも多くて。なので、どの曲がというよりは全曲がドラマー冥利に尽きます。
sebastian 正統派のラウドロックの方達とは全然違うフレーズ叩きますから。
淳士 それを楽しそうに最後まで叩き切るというところに美学があります。
――IKUOさんにはこだわりも含めて今作の総括をお聞きしたいなと。
IKUO 今作は2013年からの音が収録されています。僕らのテーマとしてヘヴィとポップ、とにかく手数が多いドラムとベース、そして重いサウンドのギター、そこに絶叫のヴォーカルを全曲の中に入れるということなのですが、それでもこれだけバラエティに富んだ作品に仕上がったところです。そこにBULL ZEICHEN 88らしさがあって、今作はEDMの要素などその時の旬なものをちょっとずつ加えることで、僕らのカタログのようなアルバムになったなと思います。
――約5年分の音が詰まってますからね。
IKUO 改めて僕らは本格派ではないと感じています。色んなジャンルの美味しいところを取ってますし、ライブもハッピーにしたいだけで、ヴィジュアル系なんだかラウド系なのかもよく分からない。ハテナマークだらけにしたい、それが僕らの個性に繋がっていくと思います。
ベースプレイもそうなんですけど、一番いい褒め言葉は「僕らは僕らでしかない」ということです。それを好きになるか嫌いになるかは皆さんの自由なんです。もちろん好きになってくれる人が増えてくれるのは嬉しいですけど、そこに媚を売ることは全然なくて、それだからこそ10年続けてこれたのかなと思います。自分たちにしか出来ないものをずっとやってきたので。
――次回作にも期待が高まります。
IKUO そうですね。みんなが面白がってくれれば色々やりたいです。“とりあえず”シリーズとか…。
淳士 THE 虎舞竜の「ロード」みたいに「とりあえず生〜第2章〜」とか(笑)。
IKUO まあ、何が起こるかわからないバンドがBULL ZEICHEN88ですから。
――最後にこれからの展望もお聞かせください。
淳士 今は『アルバム2』を引っさげたツアーを回って来たわけですが、次は『ブルゼッケンハチ番勝負!!!!!!!!』と名付けて7月から、今までやったことがないバンドと対バン形式でやります。小さいライブハウスでカオスにしていきたいと思っています。
栄二郎 あえてチケットが取りづらいような環境でやるのも面白いかなと思いまして。
sebastian でかい箱も良いんですけど、「チケット取れなかった」という悔しい思いもさせたくて。これでチケットが余っちゃったら困るんですけど(笑)。
IKUO 年末あたりに大きなところで締めくくりが出来たらなと。それが今回の流れの終着点なのかなと思います。
(おわり)