音楽があるから倒れずにいられた、笹川美和 15年を経て見えた芯
INTERVIEW

音楽があるから倒れずにいられた、笹川美和 15年を経て見えた芯


記者:小池直也

撮影:

掲載:18年02月22日

読了時間:約14分

諦めを覚える事は悪い事ではない

――5月には東京と大阪で『笹川美和 Concert 2018 〜新しい世界〜』が予定されていますね。それまでに新作の曲を実演する機会はありますか?

 何かやりたいですよね。表現したいという想いは変わらないので、たくさん新しい出会いのある場に出向いて、私の曲を聴いてもらって広がっていけばいいなと思っています。

 とにかく今回の新作は2、3回繰り返し聴いて頂けたら、スルメみたいに味が出てくるんじゃないかなと。便利で色々な音楽に触れやすくなったのは凄く良いんですけど、CDの良さというのはアート周りも含めて全て作品なので。手に取って貰えたら嬉しいですね。

――形として残ると言うのは作品にとって大きなことですよね。ところで、笹川さんはデビューから15年を迎えた今、何か思うところはありますか。

 早かったですね。ただただ15年という感じです。思い起こすと色々な事があったんですけど、過ぎ去ってみればあっという間。一度メジャーからインディーに戻った時代(2007年から2012年まで)は大事でしたね。またインディーズからメジャーに戻ってきた(2012年以降)のも1つのターニングポイントです。

 その時に出会ったディレクターが安藤さんというんですけど、彼との出会いは凄く大きかったと思います。私は人で人生の流れが大きく変わるんですよ。最近はその安藤さんが辞めるにあたって、少し前から事務所について、エイベックスのチームも新しくなりました。それも私にとっては重要な事だなと。それがちょうど15周年と被ったのが、良い感じだなと感じています。

 やっと音楽をやりたい様にやれるようになったというか、ようやくスタートラインというのはそういう意味なんです。

――インディーズに戻った時代は笹川さんにとって、どういう時期だったんですか?

 その時にメジャーだった頃よりも、音楽に対する自覚が芽生えたんですよ。ただ、インディーだと広める術が少なくなってしまう。自覚が芽生えると「もっと聴いてもらいたい」という気持ちになったんですよね。それで悩んだ時にもう1度エイベックスさんからお話を頂いて「そういう時なのかなと」と。

 メジャーから離れた時は「作らなきゃいけない」という重圧が耐えられなかったんです。今思えば、仕事だから当たり前なんですけどね。今なら「舐めてんじゃないよ!」という話で(笑)。でもその時は一杯一杯でこなせなかった。

――20歳でのデビュー時から、笹川さんの中で変化した事はありますか。

 基本的には何も変わらずに15年経った気がするんですよ。ただ、物事に対する見方で感情的になることが少なくなりましたね。「しょうがないよね」とか「そういう事もあるわねえ」とか。あと、母性は強くなった気がしています。それは友人だったり、家族だったり、全てをひっくるめた人に対して、ちょっと大きく接したいなと思ってきたりして。

 デビューの時から「笑え」って言っていましたけどね、命令形で(笑)。丸くなったんじゃないかなと自分では思います。角がどんどん取れて、昔なら「絶対嫌だ」みたいな事も「全然やります」みたいな感じになってきました。それは、自分の中に動かない物があるからこそ出来るんです。

 メジャーから出たばかりの時は、なんとか自分を守ろうとしていた。何からなのかはわかりませんけど。見えない何かと戦っていたんでしょうね。自分で自分を追い込んでいる部分があったり、何にもわからないのに色々な事が目まぐるしく変わっていく事についていけなかったんですね。

――ちなみに、女性として年を重ねる事については。

 私は20歳の頃に戻りたいかと問われたら、戻りたくないです。もちろん、体の衰えや肌にシミなどは出ますけど(笑)。そんなものは若い時のほうが良いですが、今の自分のほうが楽ですね。色々な事に対して、諦めを覚える事は決して悪い事ではないと思います。

 40歳とか45歳になったら、今の私も必死に見えてしまうのかもしれませんが、年を取るのは穏やかになって良いです。やっぱり知っている事が増えたほうが怖い物は減ると思いますし。

――確かに今の社会は「必死」という言葉が良く似合うと思います。

 私、本当にメカ系が駄目なんですよ。パソコンとか。何年か前はLINEもやっていなくて、LINEをするためにスマートフォンを買ったくらいです。パソコンもMacなんですけど、あんまり使いきれていないですね。なので、そういうデジタルな物から早々に離脱しましたね。Twitterとブログで精一杯ですよ。

 「笹川さんはインスタグラムやらないんですか?」と言って頂くのは嬉しいんですけど、写真を撮ろうという気がまあない女なので。インスタグラムなんてやったら、写真に追われて死んでしまうかもしれません(笑)。

 私にとっては普通の日常が凄く大事なので、プライベートが削られる様な事はしたくないんです。日常を丁寧に過ごすというか。新潟も最近「出ても良いかな」と思う時はあるんですけど、にしても洗濯物をするとか、お掃除をするという事が大事なんですよ。好きなんでしょうね、きっと家事をしている時間が。

――そこはシンガーソングライターらしいなという感じもします。

 集団行動が苦手だという事に3、4年前に気付いたんですよ。大学卒業してこの仕事をしていてアルバイトもしてませんし。そしたら弟2人に「普通の仕事できると思ってるの? 社会人舐めるなよ」と言われて(笑)。しっかりした姉だと思っていたので、ショックでした。余計に音楽をちゃんとやらないとなと。

――では最後に読者へ向けてメッセージをお願いします。

 初めて楽曲提供をして頂いた、4年ぶりの作品です。初めて私の作品を聴く方も、既に聴いた事がある方もちょっと軽い気持ちで触れてみてもらえたら嬉しいです。

(おわり)

この記事の写真

記事タグ 

コメントを書く(ユーザー登録不要)

関連する記事