シンガーソングライターの笹川美和が6月29日、東京・自由学園 明日館 講堂にて単独公演『笹川美和 Concert 2019 ~薄暑に鳴る笹の葉音~』をおこなった。笹川にとって約半年ぶりとなるワンマンライブ。国の重要文化財が会場。厳かな雰囲気のなか、ギターとピアノと歌が温かく響き、代表曲の「笑」などアンコール含め15曲を披露したライブの模様を以下にレポートする。【取材=小池直也】

笹川美和(撮影=shiori nakamura)

 1927年(昭和2年)に建築された国の重要文化財、自由学園 明日館の講堂。昭和、平成、令和と時代をまたいだ会場は厳かな空気に満ちていた。そのなかで笹川自身による影アナが開演前に場を和ませる。。定刻になると客電とBGMが消え、ピアノ・山本隆二とギター・設楽博臣が登場。続いてワンピース姿の笹川がステージに現れた。

 開演は「星の船」から。木造の建物だからだろうか、音の響き方があたたかく、みずみずしい声が場内に伝わる。笹川は歌い終わると、小さくおじぎしてからMC。

 「約半年ぶりのライブになります。令和初のコンサートがソールドアウト。皆さまのおかげです。気持ちよく歌わさせていただきます。七夕をイメージして聴いていただければ」

 そう述べてから、3拍子のうえで奏でられるアルペジオと歩調を合わせるように「晴れてくるだろう」を歌唱。ブルージーなギターがアクセントとなって響いた。「緑の絨毯」はシルキーな裏声にうっとり。ギターとピアノというバンド編成で音数をそぎ落としたこともあって歌の存在感が引き立っていた。後半部でグルーヴが強くなる展開を見せた「高鳴り」。最後はしっとり歌って締めると、大きな拍手がおきた。

 MCを挟んでから「紫陽花」へ。ピアノがリズムを刻み、ギターのアルペジオが音の色彩を豊かにしていく。笹川も寄りそうように歌う。続く「蓮華の花」ではリズムをギターが刻む。「流れ星」では歌が演奏陣をリードした。マイクをつかんでいない左手で空気をなぞりながら歌う。メロディの最高点に向かって跳躍する。そのサビの迫力に息をのんだ。

笹川美和(撮影=shiori nakamura)

 そして「亡者」の無調で不穏なピアノの音から「咎」へと流れる。笹川と設楽が演奏する合間から、浮遊感のシンセサイザーが“顔”を出すアレンジだった。そして、段々とギターがパーカッシブになり、ハーモニクスが切なく鳴って終わりを迎える。次の「向日葵」は笹川がピアノを弾き語る。グランドピアノの低音の響きをかみしめているようでもあった

 「笑」を静かに歌い始める。サビのメロディの最後に入る節が心地よく、声の中低音が琴線に触れる。2コーラス目からは抑え気味な展開からのブレイク、熱量の高い演奏へ流れ込むアレンジだ。3人ながらドラマティックに展開し、最後は独唱。この日のハイライトだった。

 「16年目になっても悩みは尽きません。みなさんの想いに私は応えられているだろうかと考えていたら、マイケル・ジャクソンの『Man in the Mirror』がプレイリストで流れてきて。それを聴いて『みなさんの心が前向きになる体験を、一瞬でも与えるくらいだったらできるかもしれない』と。そう思いながら曲を書きたいし、いい気持ちになってほしいと思ってライブをさせていただきました」

 まごころが伝わるMCから、本編最後の曲は漂うようなエレキギターの音が効いていた「真実の雫」。最後だから無理して盛り上げようとはせず、丁寧に歌い上げ、笹川の裏声は輝きを放ったまま美しく本編は終了した。

笹川美和(撮影=shiori nakamura)

 アンコールではまず笹川がひとり、ピアノを弾き語りでハナレグミのカバー「家族の風景」を披露。小さなときの記憶がよみがえるような、望郷の念が湧いた<7時には帰っておいでとフライパンマザー>と歌った頃、ちょうど現実も同じくらいの時間で妙なリアリティがあった。

 最後は「サンクチュアリ」で締め。小鳥のような笹川のハミングで、この日の演奏が終了した。彼女は、大きな拍手に何度もおじぎをしながらステージをあとにした。

セットリスト

01.星の船
02.晴れてくるだろう
03.緑の絨毯
04.高鳴り
05.紫陽花
06.蓮華の花
07.流れ星
08.亡者
09.咎
10.向日葵
11.笑
12.蝉時雨
13.真実の雫

ENCORE

EN1.家族の風景
EN2.サンクチュアリ

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