シンガーソングライターの新山詩織が1月31日に、初のベストアルバム『しおりごと-BEST-』をリリース。2013年にシングル「ゆれるユレル」でメジャーデビュー。これまでに、映画『古都』エンディング曲で中島みゆきのカバー「糸」、本人も出演したフジテレビ系ドラマ『ラヴソング』挿入歌で福山雅治がプロデュースした「恋の中」、Charaプロデュースによる「さよなら私の恋心」など音楽界の大物とも絡み、常に注目されてきた。『しおりごと-BEST-』には、シングル表題曲を中心にBONUS TRACK含む14曲を収録。「人との出会いで新しい自分に気づき、歌が変わっていった。そんな5年が詰まったアルバムです」と話す。デビューから5年を振り返り、彼女は何を思うのか? そして彼女がこれから目指すものとは。【取材=榑林史章】
人と出会い声を届けてきた5年
――初のベスト盤が出ますが、タイトルは収録曲の「ひとりごと」と掛けて?
それもいいのですが、今まで出してきたシングルすべてに、新山詩織が“まるごと”詰まっているので、それで『しおりごと』にしました。
――デビューから5年のシングルが詰まったベスト盤ですが、リリースする気持ちとしては率直にどうですか?
声を通して、声を届けてきた5年。それがあったから出せたベスト盤です。いろんな出会いがあり、その時どきでいろんな私が生まれ、そして今の私があります。
ベスト盤は、決して一人ではリリースすることができませんでした。この5年で本当にたくさんの方からお力添えをいただき、そのおかげで出すことができるので、感謝の気持ちでいっぱいです。
例えば、今作のボーナストラックに収録の「だからさ 〜acoustic version〜」は、0thシングルとして、デビュー前にメルマガに登録してくださった方へのプレゼントとして、CDをお送りした楽曲です。1枚1枚にメッセージを書いて、登録してくださった方へ送ったことを思い出しますね。
――自分の声など、5年で変化を感じますか?
すごく感じます。初期は、良くも悪くも荒々しさがあります。声もギターを弾いている感じも、その時にしかない私が歌っているなと、とても感じました。リリース順に収録しているので、みなさんにも変化を感じていただけると思います。
また、曲ごとに、プロデューサーさんごとに、いろいろなものを引き出していただきました。それによって、この時はこんな歌い方だったと改めて気づいたり、この時はこういう気持ちだったのかなとか、私のベスト盤ではあるけど、私自身も客観的に聴くことができました。
ファンの方にとっても、あの曲が出た時はああだったとか、この曲の時にはこんなことがあったとか、それぞれの思い出を振り返りながら聴いてもらえるものだったらいいなと思います。
――自分自身と向き合いながら人との距離感を歌っている楽曲が、多い気がしました。
たしかにそうですね。「ゆれるユレル」に<変わりたいよ 変われない>という歌詞が出てくるのですが、人間関係で思うことがあって出てきた言葉です。人と人、そのなかで自分と向き合うことは、当時も今も大事に思っていることです。
――他者との摩擦や比較で自己が形作られていく。他者と関わることは大事だけど、同時に怖さもあって。それが、新山さんの曲には表れていますね。
おっしゃる通りで、一人では気づけないことがあります。人との出会いによって、こんな私もいたんだと発見したこともあったし、歌も変わっていきました。誰かといるから生まれる感情もあって、そのなかで弱くなったり強くなったりすることもありました。
――「もう一人でいいや」と引きこもってしまうこともできるけど、そうせずに関わっていこうとしていく姿勢があるのが新山さんの歌で、勇気がいることだし、それが聴く人にも伝わっているのでしょうね。
はい。人と関わりたいから歌を始めたと言ってもいいと思います。歌うことでいろいろな人と出会い、ファンの方とも出会って。いろんな人に出会ったからこそ、自分の嫌いだった部分も、「これはこれで私なのだ」と思えたり、より前向きな気持ちにさせてもらえたと思います。
私は人と話すことは苦手だけど、決して嫌いというわけではありません。人と話すことは好きだし、楽しいと感じている自分がいることにも気づけました。