EX THEATER ROPPONGIで『新山詩織PREMIUM弾き語りライブ「しおりだけ〜ひとり唄〜」』を開催した新山詩織

 シンガーソングライターの新山詩織が2日に、東京・EX THEATER ROPPONGIで『新山詩織PREMIUM弾き語りライブ「しおりだけ〜ひとり唄〜」』を開催した。この日はフジテレビ系月9ドラマ『ラヴソング』の劇中歌「恋の中」を始め、ピアノの弾き語りやカバー曲を披露した他、6日にリリースしたニューシングル「さよなら私の恋心」などを披露。「さよなら私の恋心」のミュージックビデオを監督した岩井俊二氏もゲストに駆けつけ、同曲のセッションを披露するなど、一夜限りのスペシャルな内容になった。

岩井俊二氏がスペシャルゲストとして登場

新山詩織

「しおりだけ」というタイトルの通り、ステージ上には彼女一人。間接照明を使ったシンプルなステージセットは、まるで静かな夜の浜辺で開かれているような雰囲気だ。1stアルバム『しおり』に収録の「たんぽぽ」で幕を開け、昨年リリースした3rdアルバム『ファインダーの向こう』に収録の「糸」や、デビューシングル曲「ゆれるユレル」など、全17曲をアコギの弾き語りで披露した彼女。ウィスパーな歌声と会場の雰囲気があいまって、どこか人恋しくなるような切なさが胸に込み上げて来るライブだった。

 中盤にはアコギ以外の楽器にもチャレンジした。赤いギブソンのセミアコ335を手に歌った「午後3時」は、高校時代に作った曲。タイトル名を考える時に、ふと見た時計が午後3時を指していてこのタイトルにしたとのこと。ギブソンのギターも、高校の軽音部時代にひと目ぼれをしてずっと憧れていたもので、「貯金をはたいて買った」と、エピソードを語るはにかんだ笑顔に、見ているこちらもほっこりとさせられた。また「Hello」は、初めてのエレクトリックピアノの弾き語りで聴かせた。演奏の前には「やはりギターとは別もの」と改めてピアノの難しさを話す場面もあり、緊張した面持ち。途中で間違えて「もう一度やって良いですか?」と弾き直したのもご愛嬌だった。

 後半には、ハルカトミユキの「マゼンタ」と、フラワーカンパニーズの「深夜高速」のカバーを披露して、「15〜16歳の時に初めて聴いて、気持ちがぐつぐつと煮え立つような感覚になった」と、当時の気持ちも振り返る。自身のルーツを垣間見せる演奏とエモーショナルな歌声に、観客は大きな拍手を贈った。

 アンコールでは、最新シングル曲「さよなら私の恋心」のMVを監督した岩井俊二氏が、スペシャルゲストとして登壇した。「デモを聴いて素直に良い曲だなと思って。それで引き受けさせていただいて…」と、経緯を語った岩井氏。その岩井氏に、新山は「ワンカット撮影は、最初から決めていたのですか?」「小道具のギターは、岩井さんの私物ですよね?」など、インタビュアーになって矢継ぎ早に質問を繰り出す。その様子から、彼女の興奮ぶりがうかがえた。そんな彼女に対して「タイトルのフレーズとその1行を、映像でどう表現するか考えてこういうスタイルになりました」など、優しく答える岩井氏の様子も印象的だった。

 そうして披露された「さよなら私の恋心」は、新山の弾き語りに合わせて岩井氏がガットギターを重ねた、スペシャルなバージョンだった。楽曲の根底にある、少女から大人の女性へと成長していく過程における独特のモラトリアム感やイノセンスが、優しい歌声とガットギターの音色で見事に表現されていた。演奏を終え、「(緊張し過ぎて)呼吸をするのを忘れていた」と感想をもらした岩井氏。この日一番の大きな温かい拍手が会場を包み込み、新山もキラキラとした笑顔を見せてくれた。

気持ちを素直に伝えて行きたい

新山詩織と岩井俊二氏

 ライブが始まった頃は少し緊張した面持ちだった彼女だが、観客の温かい拍手や手拍子に誘われるようにして、徐々に気持ちがほぐれていった様子。MCでも、自身の中の変化や今の正直な気持ちを語った。

「今年は1人でイベントに出演することが多く、自分が少し変わったと思う瞬間もありました。その曲を作った時の自分はここにいなくて、遠くの誰かとか、10代の頃の自分とか、みなさんに向けて歌っている感じがあって、そこは前とは変わったな、と。人に、曲に、変わらされているのだと感じます。当たり前のことだけど。苦しいことや辛いことも、優しく包み込める自分でありたいです。変わるもの、変わっていく自分を受け入れることは簡単ではないけど、だからこそ最後まで気持ちを素直に伝えて行きたいです」

 静かに訥々と話すMCは、彼女の奏でる優しいタッチのアコギや歌の雰囲気ともぴったり。しかしその根底には、どこかエモさみたいなものが通じているように感じた。気持ちを伝えたいという熱い想い。それが歌声の端々からこぼれ落ち、しっかりと観客の心に届いていた。

(取材=榑林史章)

セットリスト

01. たんぽぽ
02. シャボン玉みたいに
03. 糸
04. 恋の中
05. 午後3時
06. 分かってるよ
07. Hello
08. 名前のない手紙
09. マゼンタ
10. 深夜高速
11. 四丁目の交差点
12. 絶対
13. だからさ
14. ゆれるユレル

<アンコール>

15. さよなら私の恋心
16. らくがきちょう
17. きらきら

■新山詩織 ライブツアー2018

2018年2月3日 愛知・THE BOTTOM LINE
2018年2月9日 大阪・umeda TRAD
2018年2月12日 東京・赤坂BLITZ

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