<記者コラム:オトゴト> 
 映画、舞台、ドラマで演技をおこなうということは、人間にまつわる様々な特性を表現することでもあり、例えば楽器を演奏する、あるいは歌うということも含まれており、その意味ではどうしても芸能という興味の対象では、役者の方が大きくクローズアップされているということも、至極当然のようにも見える。

 そういう意味で、なかなか音楽というものがビジネス的に厳しい時期を迎えている昨今で、何故か音楽と映画、ドラマ、舞台などといった表現が比較され、メディアでの取り上げられかたからしても、音楽というジャンルが下手に見られる傾向もあるのではないだろうか。

 今回こんな話を敢えて提起したのは、実はこの当たり前の話が、人々の間で認識されていないのではないか、という認識があったからである。ビジネス面で売れた、売れないという結果だけで、良し悪しが判断される傾向も、時に感じられる。

 しかし、そもそも例えば音楽と演技、映画、ドラマなどジャンルの違うものを比較し優劣をつけること自体、実はあまり意味はない。例え二つのものにメディアの取り上げられかたとして差がついても、それが必ずしも優劣のつくものではない。

 昨年、俳優としてブレイクした星野源や、浜野健太、藤原さくらなどのミュージシャン。今年頭にはflumpoolの山村隆太や、RADWIMPSの野田洋次郎などの出演も続く。反面、特に俳優の桐谷健太がCMで披露した「海の声」が異例のヒット、同じく俳優の菅田将暉が、自身がミュージシャンとしての活動を開始するなど、まさに「クロスオーバー」な時代が到来しているのでは?という印象を抱いた。

 もちろんこれまでも俳優陣が音楽活動、逆にミュージシャンが俳優をするという例は様々ある。ただボーダーレスという視点からは、近年はますます俳優やミュージシャンという肩書きが、それぞれ薄れているような雰囲気もある。先程述べた「クロスオーバー」という言葉は、映画・ドラマと音楽・ミュージシャンというものに優劣がつかない、平等なものという前提でもある。そのことを改めて考え、引き続き音楽という世界を眺めていきたいと思う今日この頃だった。【桂 伸也】

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