スタンスはロック、東儀秀樹 革新性を求めながら伝統を守る
INTERVIEW

スタンスはロック、東儀秀樹 革新性を求めながら伝統を守る


記者:村上順一

撮影:

掲載:17年08月09日

読了時間:約10分

雅楽には保守的な感覚がとても大事

東儀秀樹

――保守的だと廃れていってしまうという話をよく聞くんです。発展させていかないと残るものも残らないという。

 普通のものはそうですね。でも雅楽に関しては、その保守的な感覚がとても大事で、僕はこう色々やるわけですけど、古典もとても大事にしているんです。雅楽は1400年前と今と全く変わっていないと堂々と言えるのは、保守的にやってきているからです。というのは国が守っているからなんです。

 江戸時代の三味線や琴や尺八の音楽というのは、どんどん変化していて、歌舞伎だって内容に現代のものを風刺していかないと誰も受け入れてくれないから、どんどん演目が変わっています。だけど雅楽というのは神や仏に捧げる儀式につかわれるから、人間の俗世間の感情を交えてはいけないという、それが奈良時代、平安時代のままを守る力になっていたから、その保守性はこれからも続いて欲しいなと思います。

 雅楽は儀式で使われている以上、廃れることはありません。国が保護しますから。ただ、やっぱり同じ音楽なんだから、日本の文化を日本人がもっと知った方がいいと思っていて、それには色々と柔らかい音楽を作ったり、聴きやすいものも並行していった方がいいと僕は思っています。

――雅楽は他のものとは境遇が違うんですね。

 僕がデビューをする前は、雑誌に“日本の伝統音楽特集”という風にされる場合に、歌舞伎や狂言や能は絶対に出るのに、雅楽なんて出たためしがないんですよ。でも、僕がデビューをして雅楽の楽器でポップなことをやってからは、そこに雅楽というジャンルが加わるようになったと聞きます。

 ある意味、「雅楽があったんだ、そういえば」という起爆剤、気づきにはなっていたと思います。たぶん、古典だけをやっていたらいまだに「雅楽って何? ああ、神社のあれね」という感じで終わっちゃうところだったはずだと思います。

――私も東儀さんが出てくるまでは、雅楽とはそういうものだと思っていました。今作もそういった起爆剤のファクターになりうる作品ですよね。

 そうですね。たまたまですけど、今年アメリカでジャズがレコーディングされて100年ですよね。そういうこともあって、「Autumn Leaves」や「My Funny Valentine」などのジャズのスタンダードナンバーも収録しました。かなりモダン・ジャズ風にやっているし、篳篥でもちゃんとジャズのアドリブができる楽器なんだということをわかってもらえると思います。

――「Autumn Leaves」は途中でリズムに変化があったりしますが、東儀さんがドラムをプレイしているわけですよね。

 そうです。ピアノも全部。イメージがあるから、自分でできる範囲だったら自分でやった方が「これなんだ」という風にできるんです。だけどそれも善し悪しで、こう思っているんだけど、この人にやってもらったら凄いものが出てきたという、自分では絶対に考えつかないアイディアを人はやってくれるから、それを使い分けるのが面白さでもあります。

――今回cobaさんとやられている曲「Flying High」だったり?

 そうですね。あと、オリジナル曲「Go! Go! Go!」という曲は、ライブ感があって生身の人が「せーの」でやる空気が欲しいなと思ってそのようにやりました。本来の僕のロックな部分が顔を出している感じです。

この記事の写真

写真はありません

記事タグ 

コメントを書く(ユーザー登録不要)

関連する記事