東儀秀樹「ブレてなかった」変わらぬ信念とさらなる挑戦が詰まった新譜
INTERVIEW

東儀秀樹「ブレてなかった」変わらぬ信念とさらなる挑戦が詰まった新譜


記者:村上順一

撮影:

掲載:19年08月10日

読了時間:約14分

 雅楽、篳篥(ひちりき)奏者の東儀秀樹が8月7日、アルバム『ヒチリキ・ラプソディ』をリリース。前作『ヒチリキ・シネマ』から約1年振りの新作は、自身の令和初となるアルバムという事もあり、“東儀秀樹そのもの”を幅広く感じさせる作品にしたいと考え、QUEENから伝統的な古典雅楽、最新のオリジナル曲などジャンルレスに選曲された12曲を収録。インタビューでは、自宅レコーディングでこだわり抜いた各曲の制作背景に迫るとともに、東儀が考える子育て方法や99歳まで楽しく生きることについて話を聞いた。【取材=村上順一/撮影=木村陽仁】

フレディ・マーキュリーの生き方や純粋さに共感

東儀秀樹

――今年で還暦を迎える東儀さんですが、お若いのでびっくりします。しかも、健康にもそれほど気を使っていないとお聞きしたのですが…。

 特に運動もしていないですし、確かにあまり気は使っていないですね。医者の話なんですけど、脳を使う人は代謝を良くするみたいで、僕はそっちのタイプで極端な例なんだろうと。でも、頑張って頭を使おうとも思ったこともないですから。

――東儀さんは多趣味なので、それで自然と頭を使っているのかも知れませんね。最近は新しい趣味が増えたりはしましたか。

 息子が中学生になって、ロックが好きで僕と話が合うんです。その息子もバンドを始めたんですけど、一緒に楽器屋に行ったりしてます。

――そういえば、QUEENのギタリストであるブライアン・メイのレッドスペシャルというギターを購入したとのことで。

 映画の影響でブライアン・メイギターズのレッドスペシャルは入荷してもすぐに売り切れてしまうほどで、なかなか店頭に現れない。その時はたまたまグレコのモデルも出ていて比べることが出来たんです。QUEENのファンは圧倒的にブライアン・メイギターズのモデルを買うと思うんだけど、よく見るとグレコの方が良いじゃないかと僕はその場で気づいて。そしたら息子もグレコの方が欲しいというのでそちらを選びました。お、こいつツウだなって(笑)嬉しくなりました。しかも最近は自分でギターを作りたいという話までなってきてね(笑)。ブライアン・メイも14歳頃に自分でギターを考えて、父親と一緒に作ったというエピソードがあって、僕もそれに触発されて今ギター製作の真っ只中、それがすごく楽しいんですよ。

――また新しい趣味が増えてしまいましたね。今作にはそのQUEENの「Bohemian Rhapsody ~ I Was Born To Love You」も収録されていますが、きっかけはやはり息子さんのちっち君からの影響ですか。

 今回はそれもあるけど、僕が中学生の時にQUEENがデビューして、その時にすごく好きになりました。もちろん昨年の映画『ボヘミアン・ラプソディ』も観て、フレディ・マーキュリーの生き方や純粋さにさらに共感しました。この曲は当初は録音して発表するとか全く考えていなくて、ただ篳篥で吹いてみたり、息子にピアノで伴奏を弾いてもらって楽しんでいただけでした。でも、篳篥で吹くフレディのメロディがすごく気持ちよくて、せっかくQUEENがブームだし、みんなに楽しんでもらおうと思いました。あと、QUEENの曲をみんながあまり聴いたことのない楽器で演奏するというのも、篳篥を知ってもらう良い機会になってるとも思います。

――篳篥以外の楽器も東儀さんが弾かれているんですよね。

 好きが故にピアノ、ギター、ベース、ドラムなど全ての楽器を自分で弾きました。録音の過程も全て楽しめました。

――この曲で篳篥の新たな可能性や魅力の発見はありましたか。

 新しい発見というより、篳篥や音源に対する僕の想いというのは変わっていないんだということを確認出来ました。特にデビューの時に録った「夕なぎ」を再録した時にそう思えたんです。自分でいうのも何なんだけど、ブレてなかったんだなと思えて。ただデビュー当時からの違いとしては、歳をとっているのに、よりチャレンジャーになっていって、より自分を許さない緻密さを求めているところがあって、それはすごく良いことだなと思ったし、これからまだまだ楽しくいられそうだなと。でも、チャレンジしようと思っているわけではなくて、やっている事がチャレンジになっている、ということなんだと思います。

――ちなみに「Bohemian Rhapsody ~ I Was Born To Love You」のオペラパートは今回敢えて外したとのことですが、チャレンジはされてみたのでしょうか。

 篳篥でも再現出来ないことはないと思うんだけど、あの独特な壮大さは篳篥で無理してやることではないと思いました。篳篥らしさが生かされなければ意味がないというのが僕の信念なんです。でも、イントロの静かなコーラス部分は再現するのが面白いと思って取り組みました。篳篥だけでは音域をカバーできないので、大篳篥を使って、膨らみを出すために龍笛を重ねたり、雅楽のニュアンスも入れようと笙も演奏しています。

――色んな楽器が混ざっているんですね。

 昔から散々聴いてきたQUEENなんだけど、今回改めて緻密に聴くようになって、コーラスの移り変わりとか、分析をするのがめちゃくちゃ楽しかったんです。でも、ギターに関してはブライアンの真似をしても仕方がないから、モノマネにならないように僕なりに弾いてます。

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