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銚子の風景や映画のモチーフに思いを込めた「灯」
――主題歌「灯」についてですが、これはどのタイミングで書かれたのでしょうか?
撮影が終わってからですね。大阪に戻って書きました。
――作曲のインプットとしては「灯」というキーワードのみで書かれたのでしょうか?
そうですね。もともと監督さんの方から、私の「ペースト」という曲が主題歌のイメージに近いとリクエストされていました。この曲は電車のことを歌った曲だったので、合うなとおっしゃっていただいたんですけど、「ペースト」って、都会の中で疲れた人たちが、電車に揺られて「ペースト」状になった気持ちみたいなイメージで書いた曲だったので。
――あまり前向きではない感じにも見えますね。
確かに。だから真逆で、温かさや感情の起伏とか、思いが届くとか、そんなところに焦点を合わせて曲を作りたいと思ったんです。ただ曲調自体は「ペースト」に近いようなイメージで、とおっしゃっていたので、何となく意識しながら「電車が淡々と進む感じ、暑くもなく寒くもなく、早くも遅くもない」みたいなイメージで作らせていただきました。
――実際にはキーワードだけで自由な発想で作られた感じですね。
そうですね。でも監督の持っているイメージが明確に伝わってきたので、その中でやっぱり銚子で見た景色や、届けるということとか、灯台などの映画に出てくるモチーフも絡めて、思いを込めて作りました。
――劇中で歌われるシーンで披露されている挿入歌「まわりくるもの」というのは、もともと植田さんの持ち曲の一つとうかがいましたが、これはどんなきっかけで映画に入れようということに?
これは先程も言いましたが、初めて監督さんが私のライブに足を運んでくださった時に、1曲だけこの曲を弾き語りで歌ったのを監督が聴かれたのがきっかけだったんです。
――もともとこの曲は弾き語りだったのでしょうか?
そうです。もう全部アコギ1本で歌えてしまう曲なんですけど、それを聴いていただいて「あの曲、ストーリーにすごく合っているね、映画の内容にも歌詞がぴったりだ」とおっしゃってくださって。「まわりくるもの」は、私が初めて、私の故郷の、地元である福岡県久留米市のことを思って作った曲だったんですけど、そういう風に新たにイメージが合ってくる場所もあるというか、温かみのある場所、ぬくもりのある場所という意味では近いな、という感じはあります。
――こういった静かなバラードは、どちらかというと植田さんの楽曲の中では少ない方かなというイメージもあってレアな感じもしました。でも逆にその分劇中では印象的な感じがしましたね。朗々という感じもありましてすごくいいなと思いました。
そうですね、大好きなんですけど、なかなか実際に収録する曲は、どちらかというと激しかったり、バラードでも暗かったりすることが多いので…(笑)。だから、素直な感じが出たというか。
――一方でミュージシャンとしての活動についておうかがいできればと思うのですが、昨年末にリリースしたアルバムのツアーも終了して、現在はどのような活動状況でしょうか?
今は、新しい作品を作っているところで、これまでもアートワークとか一つ一つ手作りで作っていることが多いんですけど、今年はよりそこに照準を合わせて、みんなの手で作っていくことを目指しています。
――それは音も、ということですね。
そうですね。わりと曲も、事務所の中でインディーズの頃から変わらない人たちと一緒にずっと作っていて、曲によってはリハスタでバンドメンバーと重ねて、みたいな作り方もしていますね。なので、よりアットホームな感じで、手作りしていきたいと思っています。
――その作品を出して、ライブをしてと。
そうですね、私の本分は歌手ですので、歌を作って届けていきたいと思っています。
――それでは最後に、作品のアピールを一言いただければと思います。
今回初めて映画に出演させていただいて、私自身もとても温かい現場に行って、温かい人たちの言葉とか心に触れながらの撮影だったので、本当にありがたかったです。そういう純度の高い作品なので、是非忘れかけていたものを取り戻すような思いで、劇場に足を運んでいただき、映画を観ていただければと思います。
(取材・撮影=桂 伸也)
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