空っぽなことは良いこと、植田真梨恵 砂漠に咲く小さな花と音楽
INTERVIEW

空っぽなことは良いこと、植田真梨恵 砂漠に咲く小さな花と音楽


記者:榑林史章

撮影:

掲載:17年08月09日

読了時間:約10分

20歳の頃に作った遊び心満載の楽曲「REVOLVER」をリリースした植田真梨恵

 シンガーソングライターの植田真梨恵が9日に、7枚目のシングル「REVOLVER」をリリース。15歳から大阪でひとり暮らしをしながら音楽活動をおこない、インディーズを経て2014年にシングル「彼に守ってほしい10のこと」でメジャーデビュー。耳に残るキャッチーなメロディと刺激的な歌詞が生み出す、独自の世界観は音楽シーンでも異彩を放っている。今作表題曲の「REVOLVER」は、「もし自分がロックバンドに楽曲提供するとしたら、という設定で20歳の頃に作った」と言う、遊び心が満載された楽曲。自身を客観視しながらの楽曲制作や、歌詞に込めた人生観など話を聞いた。

人間としての根源的な気持ち=恋する気持ち

通常盤

——「REVOLVER」は、ロック色の強いバンドサウンドで、メロディもキャッチーですね。

 この曲を書いたのは、私が20歳くらいの時です。今回、大阪のテレビ番組ABC朝日放送『ビーバップ!ハイヒール』で使っていただくことが決まり、せっかくなのでより多くのみなさんに聴いて欲しいと思って、シングルとしてリリースすることになりました。

——当時は、どういうイメージで書いたのですか?

 その当時は、何かに取り憑かれたように黙々と曲作りをしていた時期で、「もし自分が男の子のロックバンドに楽曲提供するとしたら、どういう曲になるだろう?」という、設定で作った曲です。『ビーバップ!ハイヒール』で流れるバージョンと、このCDのバージョンでは歌詞が少し異なるので、「番組で聴いたからもう良いや」と言わず、ぜひCDのほうも聴いてほしいです。

——サビのメロディがすごくキャッチーで、耳に残る楽曲ですね。

 実は、いろいろな曲をオマージュしていて。それが独特なキャッチーさを生んでいるのだと思います。たとえばBメロで、ラップ風に韻を踏んでいるところは、スパイス・ガールズの「ワナビー」やORANGE RANGEの「上海ハニー」のイメージです。そんな元気でイケイケなところに、アバの「ギミー!ギミー!ギミー!」のようなフレーズが、ドッキングされていて。タイトルの「REVOLVER」も、男性ロックバンドの代表はビートルズだと思ったので、ビートルズのアルバムタイトルを付けました。あと、これは今思えばですが、バスドラのドッドッドッドッという音は、ホワイト・ストライプス(米・ロックバンド)っぽくも聴こえますね。

——音楽的な遊び心が施されているわけですね。Bメロの裏では、主メロとコーラスの声が重なって、すごく混沌とした感じになって面白いですね。

 まさしく“混沌”も、この曲のテーマの一つです。そもそもこの歌詞は、とても素敵な女の子に心を撃ち抜かれた男の人の気持ちを描いています。形のない幻影みたいなものを追いかける様子と言いますか…。でも根本にあるのは、人間としての根源的な気持ち=恋する気持ちです。どうしようもなく人を好きになると、自分を見失ったり、訳が分からなくなったりしますよね? それを混沌で表現しています。

——20歳の頃に作った曲をほぼ当時のままの形で出すことには、照れくささみたいなものはありませんか?

 「REVOLVER」は、自由帳に好きな絵を自由に描く感覚で出来た曲なので、その時の私が想像した景色を、今の私がそのままの形で表現することが、この曲にとっての昇華だと思っています。それに、そもそもが架空のロックバンドに提供するという設定なので、どこか客観的に捉えているところがあるのかもしれません。

——客観的な目が、一度入っているわけですね。

 シンガーソングライターには、多かれ少なかれそういうところがあるんじゃないかと思います。魂の叫びを歌いながら、一方で自分自身をプロデュースしているわけですから。特に20歳の頃の私は、そういう目線がピークで、「植田真梨恵にこういう曲を歌っていてほしい」と、考えて作ることが多かったです。いかんともしがたい、自分の想いをただ歌うような感覚で作れるようになったのは、「夢のパレード」とか「スペクタクル」とか、わりと最近のような気がします。

——MVは、手作り感満載の人形劇で、動画サイトで早くから話題になっていましたね。

 せっかく作るのなら、可愛らしくて面白くて、クスッと笑えて。それも、手作り感のあるB級映画のようなMVを作りたいなと。この歌詞自体イメージ的な表現が多いので、MVを観ていただいたほうが、想像を広げてもらいやすいだろうと思います。ダンボールを切ったり色を塗ったり、何日も事務所に籠もって作りました。

——動かすのは、スタッフ総出で。

 私は、インディーズ時代から現在まで、同じスタッフと一緒に歩んで来ているので、ずっと私のことを支えてくれているスタッフみんなの“手”が、いっぱい出てくる作品になったら面白いと思って。マネージャーを始めデザイナーなど、私に関わってくれているいろんな方に、人形を動かすのを手伝っていただきました。初回生産完全限定盤に付属のDVDには、MVのメイキングを収録しているので、これもぜひ見て欲しいですね。

——「REVOLVER」のMV制作で、いちばん大変だったのは、どんなところですか?

 教会のシーンで、神様の像を最初は発砲スチロールで切り出そうとしたらすごく大変で。結局、石膏粘土で作りました。像を造るのは初めてで、勝手が分からず大変でした。後は、とにかくダンボールを真っ直ぐに切ったりとか、何かを切る作業が多くて、手が筋肉痛になって大変でした。

——もともと、そういう物作りが好きなのですね。

 工作とか絵を描くとか、創作が好きで。小学生の頃から、歌と工作だけは褒められていたので、その感覚のまま今もやっている感じです。

——じゃあ道がちょっと違ったら、『できるかな』のノッポさんみたいになっていたかも?

 本当にそうですね。私の世代は『つくってあそぼ』のワクワクさんなので、ノッポさんも知っていますが、小さい頃にいつもテレビにかじりついて見ていたのは、ワクワクさんでした。今からでも、ワクワクさんになれるならなりたいです(笑)。

人生は砂漠

植田真梨恵 ライブの模様

——カップリングの「砂漠の果てに咲く花」は、アコギの弾き語りで始まるので、しっとりした曲と思いきや、全体には疾走感のあるロックサウンドですね。

 これは、今26歳の私が見た人生を、砂漠に例えて歌った新曲です。見渡す限りの砂漠をひたすら歩いて来て、引き返すことも出来ず、ゴールもまったく見えない。運良くゴールへ辿り着いても、そこに花が咲いているのかも分からないし、無ければ無いで、自分で咲かさなければならない、という気持ちです。

——人生は砂漠なんですね。

 それに、私の仕事はアイデアを生み出すことで…アイデアが浮かぶ時は、ジワッと滲むように、染み出してくる感覚があります。なので、アイデアが出て来ない=乾いている=カラカラだと、そういう部分もあるかもしれません。

——アイデアが枯渇する恐怖を感じている?

 毎日感じています。だから、少しでも呼び水になればと思って、いろいろなものを見たり聴いたりするようにしています。

——ちなみに、「砂漠の果てに咲く花」は、どんな花ですか?

 その時パッと浮かんだのは、白い花びらが6枚くらいある、背丈10センチくらいの小さい花。それがポツンとあるイメージです。

——それを砂漠で探すのは、至難の業ですね。

 そうです。だからこそ人生は、厳しいし困難なのだろうなと思います。きっと自分が人生を終える時まで、その花を見つけることは出来ないのだと思います。曲を作り続けることや歌い続けることも同じで、だからこそ、いついかなる時でも、一生懸命音楽と向き合っていたいと思います。

空っぽはすごく良い状態

——もう1曲の「最果てへ -demo- 」は、シンセと歌だけの独特な空気感を持った曲ですね。

 何度かライブでやって来たのですが、いつか完全なる形でCDに収録したいと思っていて。「demo」と付いているのは、まだ完全ではなくバージョン0.5みたいな気持ちです。今回のシングルのイメージとぴったりだったので、他の2曲と一緒に聴いて欲しくて収録しました。

——歌詞の部分で、「REVOLVER」と「砂漠の果てに咲く花」を上手く真ん中で繋いでいる感じですね。

 そうですね。この「最果てへ」が出来たのは、23歳くらいの時で、生きて行く中で、自分の考え方が変わったタイミングでした。特に10代は、ひとり暮らしで寂しかったり上手く行かなかったり、世の中のみんな敵だと思うくらい、気持ちがトゲトゲしていて。そんな中で生まれる痛みを歌にしていました。

 それがだんだん、もうちょっと人を信じられるようになったと言うか、少しは希望を見い出しても良いのではないか、と思うようになって。でも痛みを感じることが減ったことで、何を歌って良いのか分からなくなってしまって。しばらく曲を書いていなかったのですが、ある日突然「そろそろ書けるかも」と思って、出来た最初の曲が、この「最果てへ」とメジャー1stシングル「彼に守ってほしい10のこと」のカップリング曲「ダラダラ -demo-」でした。

——歌詞に〈空っぽの宇宙〉という表現が出てきますが。

 私の中で「空っぽ」は、すごく良い状態のことだと思っていて。

——でも、例えば貯金箱が空っぽだったら、悲しくないですか?

 それは、確かに悲しいです(笑)。でも、その貯金箱にゴミひとつ入っていない、本当にまっさらで綺麗な状態だったとしたらどうですか? きっと、プラスの良いイメージを持つんじゃないかと思います。つまり空っぽは、空虚ということではなく、邪念やわがままな気持ちのない、無心状態のことではないかと。

——ライブで最高の演奏が出来たときは、邪念がなく真っ白な状態になっているとミュージシャンの方からよく聞きます。

 それに近いと思います。私も毎回それを目指してステージに立ちますが、そこばかりに気が向いていると、余計に緊張してブルブルしてしまって。舞台袖で「頑張ります!」と、自分に声をかけて出るようにしています。

——今作の収録曲は、曲調も出来たタイミングもバラバラですが、歌詞の部分で絶妙な具合で繋がっている、一体感のある1枚ですね。そして9月には、大阪と東京の2会場で、初のホールツアー『植田真梨恵 LIVE TOUR UTAUTAU vol.3』を開催しますね。

 私は、ライブをいくつかの異なる形態でやっています。弾き語りもするし、ピアニストの方と私の2人編成による『LAZWARD PIANO』は、アコギとピアノと歌だけで、余計なものはそぎ落として、バンドアレンジの曲も気迫と根性で勢いそのままに演奏するというステージです。バンド編成でのワンマンライブも、いろいろとコンセプトを考えていて。『PALPABLE! BUBBLE! LIVE!』では、箱の中から登場してみたり、シャボン玉が飛んだり、いろいろ凝った演出を楽しみました。

 そして今回の『UTAUTAU』は、『PALPABLE! BUBBLE! LIVE!』の対極にあるようなライブで、凝ったセットや演出を取り払って、ごくシンプルなバンド編成で、とにかく私が全身全霊で、裸一貫みたいな気持ちで歌います。

——ライブのスタイルによって、セットリストもだいぶ違うのですか?

 そうですね。『PALPABLE! BUBBLE! LIVE!』の時は、怪しげな曲も多いですが、『UTAUTAU』の時は、インディーズ時代の曲を含めて、“歌ヂカラ”の強い、歌が前に出た曲を基本に選曲しています。その時ばかりは、私は歌というものに骨と肉が付いただけのような人間になって、ただマイクを持って、どシンプル、どストレートに歌います!

(取材=榑林史章)

◆植田真梨恵とは 福岡県出身、15歳から大阪でひとり暮らしをしながら音楽活動をおこない、2008年にインディーズデビュー。約7年を経て、2014年にシングル「彼に守ってほしい10のこと」でメジャーデビュー。これまでに7枚のシングル、2枚のアルバムなどをリリース。多方面で活躍し、映画『トモシビ 銚子電鉄 6.4km の軌跡』にキミエ役で出演し、同主題歌「灯」を配信リリースしている。

作品情報

植田真梨恵

7th Single「REVOLVER」
8月9日発売

■初回生産完全限定盤(絵本+CD+DVD)2222円(税抜)GZCA-4150
■通常盤(CD ONLY)1200円(税抜)GZCA-4151

▽CD収録内容

1.REVOLVER
2.砂漠の果てに咲く花
3.最果てへ -demo-
4.REVOLVER -off vo.-
5.砂漠の果てに咲く花 -off vo.-

▽初回生産限定盤DVD内容
・making of MV「REVOLVER」

ライブ情報

▽植田真梨恵LIVE TOUR UTAUTAU vol.3
9月6日 大阪・サンケイホールブリーゼ
9月10日 東京・日本青年館ホール

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