東京・日本青年館ホールで初のホールツアー「LIVE TOUR UTAUTAU vol.3」を開催

 シンガーソングライターの植田真梨恵が10日に、東京・日本青年館ホールで初のホールツアー「LIVE TOUR UTAUTAU vol.3」のファイナル公演をおこなった。「初めてのホールツアーで、やっと歌手になった気分です」と、嬉しそうに感想を漏らした植田。先月リリースした「REVOLVER」などアンコール含め全24曲を届けた。

歌のパワーを受け取ってくれたらうれしい

植田真梨恵

 ライブタイトルの「UTAUTAU(=歌唄う)」は、シンガーソングライターであればごく当たり前のことに思うが、それは我々が考えるよりはるかに難しく、どんなに歌いたくてもその場さえ与えられないアーティストも多くいる。それをツアーという形で、よりキャパの大きなホール会場で行えるのは、アーティストにとってとても幸せな環境なのだ。この日の植田は、まるでここに何かを残そうとするかのように全身全霊で、のどがちぎれんばかりに歌った。その植田の姿からは、歌に対する執念のようなものさえ感じた。

 植田はこのライブについて「最果てに、花は果たして咲くのか咲かないのか、それを確かめに行こうという旅(ライブ)です」と話し、この日はアンコールを含めて全24曲を披露した。最新の「REVOLVER」を筆頭に「夢のパレード」や「スペクタクル」などのシングルナンバーを始め、インディーズ時代の楽曲も多数披露。最初から最後まで変わらぬ声量で情感をたっぷり込めた歌声を聴かせ、集まったファンのハートを終始撃ち抜いた。

 ダンボールで作ったサボテンが並ぶステージセット、植田は民族衣装っぽい柄のワンピースでステージに立ち、乾いた草こそ転がっていないものの、どこか西部劇でも始まりそうな雰囲気だ。音楽シーンという荒野で自分の歌一つを武器に、早撃ちガンマンのごとく観客のハートを撃ち抜いて花を咲かせて行くのだという、植田の心意気をひしひしと感じさせた。

 「お越し頂いたみなさん。端から端まで本当にありがとうございます。あっと言う間に夏が過ぎ、ついにこの日がやって来ました。歌のパワーの強い曲ばかり持って来ました。昔の曲から新しい曲まで、歌のパワーを受け取ってくれたらうれしいです」と、植田。

 「REVOLVER」は、身振り手振りを織り交ぜながら、ちょっと踊るような感じで歌い、指で銃の形を作って客席を狙うようなポーズも見せた。観客は一気にスタンディングとなり、手拍子をして歓声を送った。「メリーゴーランド」では、ハンドマイクを手に歌う、客席に手を振ったりしながらステージを所狭しと動き回る植田に対して、サビでは観客も手を挙げて揺らして盛り上がった。

 中盤には「いつもとはちょっと違う雰囲気でお届けします」と、アコースティック編成で「ふれたら消えてしまう」などを披露した。鍵盤ハーモニカやタンバリンの音がノスタルジックさを演出し、乾いた空気が徐々に潤うような安堵感を感じさせた。続けてバラードの「ダイニング」は、エレクトリックピアノとギター、そして歌だけの編成で聴かせた。前半のパワー全開の展開から一転してちょっと落ち着いたムードの会場で、観客はジッと静かに聴き耳を立てて彼女の歌に心酔した。

どんな時でもみなさんに寄り添える歌を

植田真梨恵

 歌えば歌うほどパワフルさを増し、飛距離を増していくような歌声。切れ味鋭いナイフのような鋭利な声と言葉が、観客の耳には突き刺さるようにして届いていく。インディーズ時代の楽曲である「壊して」では、ちょっとけだるいムードをまといながら、植田は時折頭をくしゃくしゃにかきむしったり、しゃがみ込んだりして歌い、熱く情熱的な声は、最後には叫びとなって飛んでいった。

 「夢のパレード」では、「ライブが終わっちゃって、明日仕事の時、私が側にいない時、私はそこにいないけど、歌になってあなたの側にあるの。歌は形がないからあなたの声になって歌になるの。よかったら一緒に歌ってください」と言って歌った。植田が歌うのに続いて観客は、<ア〜ア〜ア〜>と声を出す。植田が歌えば観客が歌い、観客が歌えばそれ以上の声で植田が歌い、歌は雪だるま式にどんどん大きくなっていった。時には「もっともっと」と、さらなる歌声を促した植田。歌はやがて大きな一つの塊になって、会場全部を飲み込んだ。

 「変わり続ける日々の中で、変わらず歌い続けたいと思っています。この先もいろいろあると思うから、どんな時でもみなさんに寄り添える歌をやっていきたいです」と話した植田。アンコールの最後に歌ったデビュー曲「彼に守ってほしい10のこと」では、歌の最後のロングトーンを、まるで何か願掛けでもするかのごとく、息が続く限り長くどこまでも伸ばし続けた。

(取材=榑林史章)

セットリスト

01. REVOLVER
02. メリーゴーランド
03. FRIDAY
04. カーテンの刺繍
05. シンクロ
06. 世界の終わり
07. 灯
08. 悪い夢
09. 愛と熱、溶解
10. 最果てへ
11. ふれたら消えてしまう
12. ダイニング
13. 砂漠の果てに咲く花
14. 壊して
15. ルーキー
16. わかんないのはいやだ
17. サファイア!
18. 夢のパレード
19. スペクタクル
20. 飛び込め
21. 変革の気、蜂蜜の夕陽
<アンコール>
22. 虹はかかるから
23. サイハロー
24. 彼に守ってほしい10のこと

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