恵比寿★マスカッツvs仮面女子「喧嘩上等ライブ」戦いの結末は
アイドルとしてのプライドを賭けた、恵比寿★マスカッツと仮面女子による闘いの行方は…=撮影・佐賀章広 (C)EBISU MUSCATS PROJECT
女性アイドルグループの恵比寿★マスカッツと、地下アイドルグループの仮面女子との対決ライブイベント『恵比寿★マスカッツ喧嘩上等ライブ~VS仮面女子 8100円を払うのはどっちだ!? このバカタレが! in Zeppダイバーシティ東京』が16日におこなわれた。8月のある日、おのおののダンスレッスン場がひょんなことでバッティングしてしまい、両グループが小競り合いを起こしてしまったことがきっかけで、ライブステージでの直接対決へと発展してしまったというこのイベント。全く特徴の違う二つのグループの対バンが見られるということも非常に興味深いところではあるが…彼女らの確執の元凶となったスタジオ代8100円の負担、そしてアイドルとしてのプライドを賭けたこの戦い。果たして、その結果やいかに?
対決開始。両者とも譲らない緊迫したスタート
ステージスタート直前、会場にはクィーンの「We Will Rock You」のコーラスが、この日会場に詰めかけた観衆の気持ちを鼓舞するべく鳴り響き続けていた。ちょうどブライアン・メイのギターのフィードバック音がフェード・インし始めるタイミングで会場は暗転、幕開きと共にステージには巨大な白い球体が一つ。やがてBGMは映画『2001年宇宙の旅』の厳かなテーマソングへと切り替わっていた。
会場のスクリーンには、この日イベントをおこなうこととなった当時の争いの模様、そして対決を行う際の調印式の一部始終が映し出された。緊張が高まる中で白い球体は割れ、この対決の見届け人として指名された格闘家・小川直也選手の姿。小川はおなじみの「ハッスル! ハッスル!」で会場を盛り上げる。そしてこの日の対決が、それぞれに組まれた対戦カードに対して、観衆の歓声を測定しそのdb(デシベル)数の大きさで勝敗を決めるというルールが発表された。続いてこの日の主賓となる恵比寿★マスカッツ、仮面女子の面々がステージに登場。両者は顔を合わせるとともに火花を散らし合い、ステージ上にはただならぬ殺気で満たされていた。
いよいよ戦いの火ぶたは切って落とされた。最初の対決はグループ戦。おのおののグループが普段のステージで見せる、グループ全員でのステージでの対決。先攻・恵比寿★マスカッツは、自身のセクシーなダンスと、「TOKYOセクシーナイト」「ビビる-Bodyで-Boo」「Sexy Beach Honeymoon」といったファンキーでポップな楽曲で、早くも観衆の気持ちをがっちり掴み興奮を煽る。対して上々の出だしを見せた相手に虚勢を張りながらも、少し緊張した様子の仮面女子だったが、まるでこの日の展開を予想させるような「大!逆!転!」で会場の空気を支配すると、あとは彼女らの独壇場とばかりに「元気種☆」「大冒険☆」とアクティブなステージングで圧倒。一回戦は恵比寿★マスカッツが91db、仮面女子が90dbとかなり拮抗した対決に。一方では仮面女子のパフォーマンスを見た恵比寿★マスカッツの副キャプテン・川上奈々美から一言「でも、ちょっとカッコよかったよ…」と、それまでの緊迫した雰囲気とは違う思いを口にする。しかしなおも白熱の対決は続いた。
意表を突いた展開、対決相手すら感動する熱狂のパフォーマンス
第二回戦は、ソロ対決。おのおののグループを代表するメンバーによる、ソロステージでの対決だ。先行は仮面女子に交代、一人目の対戦者として登場したのは「仮面女子が世界に誇る才能」との触れ込みで登場した神谷えりなによる、恵比寿★マスカッツの楽曲「バナナ・マンゴー・ハイスクール」の独唱。対する恵比寿★マスカッツは普段、人との接触を避けたがる性格ながら、グループに入ることで変貌を遂げたという辻本杏が大塚愛の「さくらんぼ」の替え歌を熱唱。いずれもそのアバンギャルドな歌には甲乙をつけるのが難しいところではあるが、何故か観衆がそのパフォーマンスに引き続けられ、熱狂的な声を上げる。普通に上手な歌を披露しなかったことすら、この対決では「策略だったのでは?」という雰囲気すら感じさせていた。
二人目の対戦者として登場したのは、仮面女子の月野もあ、そして恵比寿★マスカッツの神咲詩織。月野はエレキベースで恵比寿★マスカッツの「Sexy Beach Honeymoon」をプレー。出だしはシンプルなルートの8分弾きを見せていたが、テクニカルな面も徐々に見せつけ、ついにはスラップからタッピング、細かいフレージングまでも披露、見せる部分にも手ぬかりない圧倒的なパフォーマンスでまくし立てる。対する神咲は、ピアノの独奏による仮面女子の「元気種☆」超高速咲き乱れバージョン。流れるようなピアノの中で仮面女子のステージに負けずとも劣らない感情豊かな音色を披露、仮面女子の森カノンも思わず「すごく良かったし、感動した! 涙が出たよ!」と大きく心を動かされた様子だった。
いよいよ対決も大詰めに近づいてきた。均衡した得点状況の中、ステージは最終ブロックとなるフリーパフォーマンスの部へと移行した。先行は再び恵比寿★マスカッツ側。キャプテン・明日花キララをフィーチャーした「Neva Enuff」を替え歌としたラップでダンサブルに攻めながら、一転して続いたのはメンバー全員の合唱によるKiroroの「未来へ」。そのギャップからは仮面女子の森が再び涙を見せるほどに、見る側に対して深い感動を引き出す。しかし仮面女子も負けじと持ち歌である「全開☆ヒーロー」「超アドベンチャー」へ。切り込み隊長的に前に飛び出してくる川村虹花、桜雪のラップから、次々と変わっていくボーカル、そしてサビへ突入と、常套手段ともいえる仮面女子の必勝パターンの応酬に、会場の熱気はさらに増していく。
勝ち負けの消失、そして新たな友情の兆し
そして訪れた、最後の一曲。仮面女子はクライマックス御用達のナンバー「夏だね☆」を披露。仮面女子のホームである「仮面女子カフェ」でのステージでもすっかりおなじみとなったゴムボートも登場し、センターの立花あんなを乗せて、この日もフロアの間を悠々と闊歩、ステージの枠をはみ出した強力なパフォーマンスで圧倒した。しかし恵比寿★マスカッツも負けてはいられない。「初代が良かった」とされ、現第二世代のメンバーは悩んでいるという現状もあり、その気持ちを打破すべく打ち出したという新曲「バッキャロー」を、彼女らはここで披露。観衆の前では初披露となったこのステージで、全員が歌の出だしに履いていたハイヒールを脱ぎ裸足に。両足を力強く踏ん張り、スカートがめくれてしまうことすら気にせずに、時に宙に向かって大きな一蹴りを見せる。そして「なりふり構っていられるか!」と言わんばかりに気迫をむき出しにし、自身の気持ちをすべて詰め込むような「バッキャロー!」という言葉を叫び、まるで襟元が正されるような緊張感すら醸し出しながら、仮面女子に抵抗の一手を投じた。
かくして対決は終了、結果は恵比寿★マスカッツが450db、仮面女子が449dbと、わずか1ポイントの差で恵比寿★マスカッツが勝利。しかし両者はともにお互いの健闘を称え合い、友情の兆しさえ見せ始めた。この争いの元凶となったスタジオ代の支払いも小川が請け負うことで解消、ラストはバブルガムブラザーズの「WON’T BE LONG」を全メンバーで合唱、さらに続くアンコールに応え登場した彼女らは、恵比寿★マスカッツのメンバーを主体としたかくし芸を披露、大盛り上がりを見せたところで、最後に仮面女子が普段カバーしているイルカの「なごり雪」を、全メンバーで再びセッション、盛大な会を締めた。こんな対決なら、また見てみたいものだ。合わせて、今後の彼女らの活躍にも期待したい。そう思わせられるような清々しい幕引きだった。(取材・桂 伸也)
セットリスト
『恵比寿★マスカッツ喧嘩上等ライブ~VS仮面女子 8100円を払うのはどっちだ!?このバカタレが! in Zeppダイバーシティ東京』 2016/12/16 @Diver City Tokyo 01. TOKYOセクシーナイト(恵比寿★マスカッツ) |