理性忘れさせる“熱狂”と“笑い”の渦でファンを虜にさせたエグスプロージョンのツアー初日(撮影・大西基)

 「まちゃあき」と「おばらよしお」による2人組ダンスユニットのエグスプロージョンが12月5日に、東京・Zepp DiverCity(Tokyo)で、東名阪ツアー『エグスプロージョン×ひとりでできるもん「TOUR/E/2016」』の初日公演をおこなった。11月30日にリリースした1stアルバム『CD・E』を引っさげてのツアー。この日は謎の覆面ダンサー「ひとりでできるもん」をパートナーに迎え(3人で活動するときはEDISONとも名乗っている)、2時半強、熱狂と笑いに引き込んでゆくライブを会場に描いた。28日には東京・TBS赤坂ACTシアターでの追加公演も決定している。

「踊るエンターティナー」エグスプロージョン

撮影・大西基

 エグスプロージョンといえば、「本能寺の変」などYouTubeで凄まじい再生回数を誇る『踊る授業シリーズ』で世間の話題をさらっているユニット。史実を巧妙に笑いのネタにしながら紹介するセンスにも現れているように、彼らはダンサーでありつつも優秀なアイデアマンたち。むしろ「踊る構成作家」「踊るエンターティナー」と言うべきか。その成果を存分に発揮する場所が、エグスプロージョンにとってはライブになる。

 まるで軟体動物のような軽快で柔軟なダンスパフォーマンスからの幕開け。「どんなときも踊れ!!」。激しいトランスビートが炸裂。ライブは身体を一気に躍動させた「BOUNCE BOUNCE BOUNCE」からスタート。「ハッハッハッ」の掛け声と共にテンションがグングン上がってゆく。「そんなときは踊れ!!」、まさにアッパーな気分だ。

 感情を、身体を嬉しく揺らす攻めなやダンスナンバーの「V[volt]」。<本能のままに♪>と歌う歌詞のように、彼らは満員の観客たちを本能へ従うまま熱狂の空間へ連れてゆく。理性という洋服を脱ぎ捨てて騒いでたい。それこそが、ここでは一番正解な楽しみ方だ。

 「人生闘っていこうぜー!!」と『踊る授業シリーズ』の「関ヶ原の戦い」が流れ、途端に場内から沸き上がった歓声。続く「千利休」では、まちゃあきのラップが炸裂。身体を激しく揺さぶるビートに乗せ、3人は観客たちをガンガン煽ってゆく。超高速ビートに気持ちが熱く熱く揺さぶられていく。これぞまさに“熱狂のわびさび”だ。

 「バーテンダー」では、バーテンダー姿の3人がジャジーなビートに乗せて物語をスタート。バーカウンターで3人は観客が頼んだ注文に応えてゆくが、誰一人として頼まれたカクテルではなく異なるお酒を提供してゆく。平然とクールに間違える様や、カクテルを作るためにシェイクしてゆくときの妙味なダンスパフォーマンスには、クスッとしながらもズッと視線が釘付けになった。

 電車内の長椅子に座った3人。真ん中に座ったおばらよしおは、酔っぱらって眠る2人が次々もたれかかってくるのに必死に抵抗。すべての動きが演奏や効果音とシンクロ。しかも、かなりのオーバーアクションで見せるように、3人は電車内で見かける光景を爆笑混じりに見せた。

 「まちゃあきソロ」では、舞台の暗転を巧みに利用し、台から離れた別の台へ瞬間移動する芸を披露。前半最後を飾った「できえもん」では、できえもん、のび太、ジャイアンの3人が、歌やダンスが上手くなる「ラッキー池田のじょうろ」などのアイテムを手に、いつしか某タモリさんが司会をおこなう音楽番組に登壇し、話題を集めるまでのサクセスストーリーを、壮大な!?ドラマ仕立てでコミカルに見せた。

「ペリー来航」「小野野妹子」と『踊る授業シリーズ』曲を立て続けにブースト

撮影・大西基

 後半のライブは、3人がオモチャに扮して軽妙に踊る「おもちゃ」でスタート。観る者の視線を逸らさせない、ひとりでできるもんのダンスパフォーマンス「往年のできるもん(ひとりでできるもんソロ)」。とある待ち合わせ場所で遭遇したマスク姿の3人。3人それぞれが咳をするたびに動きもシンクロしてゆく、「風邪」でみせた咳に合わせた卓越したセッション風ダンスに、ネット上を通じて待ち合わせた結果が生んだ見事な落ちネタ。「おばらよしおロ」パフォーマンスを挟み、ヤンキーに扮した3人がじゃんけんで決着をつける「ヤンキー じゃんけん」では、永遠と続く「あいこ」のやり取りを、躍動的なダンスも交えながらコミカルに描写していた。

 「CHAMELEON」を合図に観客たちも総立ち状態へ。<CLAP YOUR HANDS!!!>、エグスプロージョンの煽りに合わせ、一気に感情の熱を上げてゆく観客たち。アッパーな気分で騒がなきゃ身体の疼きが止められない。疾走するダンスビートに合わせ、身体が早鐘を打ち出した。「ピンホンダッシュ」が連れ出した、一緒にピンホンダッシュしたいドキドキな気分。満員の観客たちとの熱いコールアンドレスポンス。気持ちが「SPARK」していく。ヒップホップなリズムの上で、誰もが気持ちをガンガンに放熱してゆく。まさに、スパークしっぱなしな気分だ。

 熱狂へだめ押ししようと、エグスプロージョンは「ペリー来航」と「小野野妹子」と『踊る授業シリーズ』曲を立て続けにブースト。場内に生まれた興奮と熱気は天井知らずで上がり続けてゆく。止まない熱狂の手拍子、最後は、激しく躍動したスケールあふれる「A[ampere]」だ。上がった感情はそのまま上げ続ければいい。今だけはすべての感情を解き放ち、ただただ上がり続けていればいい。それこそが、心地好いエクスタシーというものだ。

家に帰って5秒で寝るくらいに最高のライブに

撮影・大西基

 アンコールは、『踊る授業シリーズ』のなかでもとくに人気の高い「本能寺の変」でスタート。会場中の人たちがメンバーの動きに合わせて一緒に踊り続けてゆく。むしろ、お馴染みの動きを見ながら熱狂した黄色い声援を送っていたと言ったほうが正解か。サビでは、会場中の人たちが3人の動きに合わせ同じポーズをしてゆく。その一体化した感覚が最高じゃない。ライブならでの楽曲アレンジにしているところも、YouTubeでは味わえない嬉しいポイントだ。

 <一気一気ズバッと一気>。「島原の乱」を通して起こした<一気>コール。誰もがメンバーの一気コールに合わせ手を振り上げ、興奮した想いを舞台上へぶつけていた。爆裂した感情を一気に吐き出さずにいれるかという気分だ。こちらも、音源とは異なるロングバージョンで楽しめたのも嬉しかったこと。

 「みんながここで体力を使い切って、家に帰って5秒で寝るくらいに最高のライブに最後までしていきたいと思います」とまちゃあきの言葉を受け、最後の最後に「POP CORN」を披露。満員の観客たちのテンションを、3人はこれでもかと上げ続けていた。メンバーの煽りに合わせ、誰もがタオルを片手にハイジャンプを繰り返してゆく。この熱狂、忘れようにも忘れられないよ。

 緻密に構築したコミカルなネタと卓越したダンスパフォーマンス、頭を真っ白に熱狂へ導く歌をミックスしたエグスプロージョンのライブ。まさにこれぞ最高のエンターテイメントショーだ。理性を忘れ、2時間半強、「楽しい」という世界で浸りっぱなしで無邪気に騒ぎ続けていれる。こんなパーティはなかなかない。動画でエグスプロージョンを楽しむのも良いが、やはり生で、ライブで一緒に楽しんでこそ。最後は頭をからっぽにずっと跳ね続けていたくらいだもの、本当楽しかったよ。(取材・長澤智典/撮影・大西基)

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