中村 中、多彩な音色・透き通る歌声で四季折々の情景映し出す
透き通る歌声で四季折々の情景映し出した中村 中
【ライブレポート】シンガーソングライターの中村 中(なかむら・あたる)が2月13日・14日の2日間、東京・日本橋三井ホールで、単独公演『LIVE2016 生まれ変わろう、そして』を開催した。中村 中にとって久しぶりのバンドを伴った公演。ミュージックヴォイスではこのうち、初日の模様を以下にレポートする。
生々しい質感と透き通った歌声
開演前、会場の日本橋三井ホールは既に満席。座りながら中村の登場を待つ観客のドキドキ感は空気に触れて伝わってくる。脈を激しく打つ鼓動からステージへの期待値がかなり高いことがうかがえた。そして会場が暗転すると、SEとともにバンドメンバーと中村が少し神妙な空気感を漂わせながらに登場した。
幕開けは「晦日」。彼女の第一声は息を吸い込むノイズを伴った生々しい質感で、透き通った歌声が日本橋三井ホールを包む。黒いケープをまとった中村は静かに動き、そして歌っていく。中村の歌唱により神秘的な雰囲気が形成されてから、サビでバンドが合流。段々と盛り上がっていくアレンジ。
間髪入れずに「風立ちぬ」のピアノイントロが始まる。ここでも低めのトーンで聴かす艶めかしい中村の声。マイナー濃度の高いこの曲によくブレンドする。バンドの音に合わせて体を揺らしはじめる中村。オーディエンスは完全に聴き入ってしまっている。
アウトロは中村の張り上げるフェイクに寄り添うようにテンションを上げたバンド陣。最後は意表を突くようにメジャーの明るい和音に着地して終わった。大きな歓声が沸く。
季節の旅へ
バンドメンバーは、キーボード・北名ロビン弘一、ギター・渡辺淳、ベース・石田純、ドラムス・平里修一、そして中村。オーソドックスな楽器編成ながら多種多様なサウンドを聴かせてくれる。中村曰く「おまえらが生まれ変われよバンド」だそうな。
MCでは「上から読んでも下から読んでも中村中です。どうぞ宜しくお願いします」と挨拶。今回のライヴは去年ドロップした7thアルバム『去年も、今年も、来年も、』の収録曲を中心にセットリストを組んだ模様。このアルバムは「四季折々の、上手くいかない恋愛歌集」をコンセプトに制作されている。それを受けてか、この夜はオーディエンスを季節の旅へと誘うガイドが中村という設定。
「最後までごゆっくりおくつろぎ下さいませ」という可愛い言葉で締めくくると、季節の旅が春から始まる。
春の訪れ
出会いの季節だから明るい曲調や桜の歌などか、という記者を予想は外れ、マイナー歌謡曲調の楽曲がスタートした。シャッフルのリズムによる4ビートで演奏される。曲中にまとっていた黒いケープを放り投げた中村は中に着た赤いノースリーブのワンピースに。そんなサプライズを紫の昭明が引き立てていた。
そのままオルガンの音が印象的な「ここは、風の街」へ。観客席からはクラップも自然発生的に起こる。パワフルに歌い上げる中村。最後のサビで転調してさらに畳み掛けていく。息を合わせて2発のアクセントで演奏が終わる。